ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

2013年12月15日 | 文学

 過ちて改めざる、是を過ちと謂う。

 「論語」にある言葉です。
 全くそのとおり、としか言いようがありません。

論語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)
谷口 広樹
角川書店

 このような易しい教えに満ちた「論語」こそ、道徳の教科化にあたって、その柱にすべき、大中華帝国の偉大な教えであろうと思います。

 ついでに、現在のレッド・チャイナの人々も再び学びなおすべきでしょう。

 人は自己の過ちを認めたがらないもの。

 世に尊敬を集める人でも、ちょっとした過ちを隠そうとして、にっちもさっちもいかないものです。

 現代社会では、過ちを犯した場合、それを素直に認め、改善策を講じれば、それほど責められることはないものです。
 しかしえてして、過ちを糊塗しようとしてさらに嘘をつき、その嘘をさらに強化しようとしてまた嘘をつく、地獄のような循環に巻き込まれた時、組織であれ個人であれ、真なる破滅を迎えるものと思います。

 夢野久作という、今では忘れ去られてしまったかのような感がある戦前の作家が、「少女地獄」と言う佳品を残しています。

 誰からも好かれたいと願う若い看護婦が自殺するところから物語が始まり、残された手記から、彼女が誰からも好かれるために、嘘の上塗りを重ねていたという物語です。

少女地獄 (角川文庫)
夢野 久作
角川書店(角川グループパブリッシング)

 

少女地獄 (まんがで読破 MD107)
夢野久作
イースト・プレス

 夢野久作といえば、「ドグラ・マグラ」という大作が知られていますが、「少女地獄」のような小品もまた、楽しいものです。

 「ドグラ・マグラ」は、発表当時、読めば気が狂うというキャッチ・コピーで人気を集めた、精神病とも何とも言えない主人公の物語で、長い物語の末、結末が始まりにつながるという、永久機械のような作りになっており、高校生の頃熱狂的に読みふけったものです。

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)
夢野 久作
角川書店



ドグラ・マグラ (下) (角川文庫)
夢野 久作
角川書店



ドグラ・マグラ (まんがで読破)
夢野 久作,バラエティ・アートワークス
イースト・プレス


 自殺した桂枝雀が主演して映画化もされましたね。

ドグラ・マグラ [DVD]
桂枝雀,室田日出男,松田洋治
エスピーオー

 この物語を演じたことが自殺の一因だとすれば、真に怖ろしい小説ですねぇ。

 映画も複雑なストーリーをよく咀嚼して、興味深いものでした。


 まぁ、それはともかく。

 私にも、小さな嘘をつきとおすために嘘の上塗りを重ねたことがあります。
 そのような時、脳内麻薬でも出ているのか、「論語」の教えなど何のその、平気で嘘を突き通して何とも思わないのですから、因果な性分に生まれついたものです。


 誰にでもそういう経験があるのではないでしょうか?

 ただ、私の場合、嘘があんまりうまく出来ていると、その嘘にうっとりし、やがては何が嘘で何が真か分からなくなるという奇癖があり、我ながら悩ましいことです。

 しかし、この世に存在する物、何が真で何が嘘なのか、何が単なる思い込みなのか、分からないように出来ているように思います。

 だから私は、真実は物語にしか存在しえず、それは物語が嘘八百であるという前提のもとに存在しているからこそなのだと思っています。

 それは逆に言えば、確からしく思える現実の世界は、いかにも曖昧で、私たちの存在自体の確からしさを疑わせる、朧な世界だということを示しているのに違いありません。

 それなら私は、生きながらこの世の者ではないかのごとく、朧に生きていく他ないのだろうと予感しています。

 私こそ、「論語」の教えを学びなおさなければいけない、狂気をはらんだ愚か者なのかもしれません。

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日本プロレスの父、力道山

2013年12月15日 | その他

 今日は戦後の英雄、力道山の50回目の命日だそうです。



 当然、私がこの世に生を受ける何年も前に亡くなった人ゆえ、リアルタイムではその人気を知りません。
 しかし、米国に敗れて意気消沈していた日本人たちは、リング上で米国人レスラーを倒す力道山に熱狂したと伝えられます。

 まぁ、王道プロレスは概ね八百長が当たり前のショーですから、日本のリングで力道山が勝つのは当たり前ですが。

 でも子どもの頃、私はジャイアント馬場・ジャンボ鶴田らの全日本プロレス、アントニオ猪木・藤波辰巳らの新日本プロレス、ラッシャー木村・アニマル浜口・阿修羅原らの国際プロレスを、熱心にテレビ観戦して、それらは真剣勝負なのだと思っていました。

 しかしその後、前田日明や高田延彦が真剣勝負の団体を起こし、その試合を観てはじめて、あぁ、王道プロレスとは筋書があるショーだったのだなと、気付きました。

 何しろ真剣勝負では、なかなか技が決まらず、一度決まれば一瞬にして勝負がついてしまうという呆気ないもので、王道プロレスは互いに多彩な技を掛け合いながらなかなか勝負が決まらないという、全く違うものでしたから。

 考えてみれば相撲にしてもボクシングにしても柔道にしても、互いが本気で戦う場合、見栄えなんて気にしないものです。

 逆に、王道プロレスはドラマを楽しむようなもので、ある意味大人のファンタジーとも呼べる、高度なショーだと、感心させられました。

 王道プロレスはさらに進化を遂げ、かつてガチンコ対決に拘った高田延彦は、なぜかファイティング・オペラと銘打った、これは真剣勝負ではありません、というエンターテイメント色豊かなハッスルで、リングには上がらないものの、悪のレスラー陣の親玉として登場し、派手なマイクパフォーマンスを繰り広げるにいたりました。

 か弱いインリンボノちゃん(元横綱・曙)をM字開脚なる卑猥な技で倒したり、じつはボノちゃんインリンが卵で産んだ実の子だったりと、なかなか素敵なエンターテイメントでした。



 王道プロレスが当然たどり着くであろう、ファイティング・ショーの極北とでも言うべきものです。

ハッスル・ツアー2008 DVD 1
プロレス
エンターブレイン



ハッスル・ツアー2008 DVD 2
プロレス
エンターブレイン




ハッスル・ツアー2008 DVD 3
プロレス
エンターブレイン



 力道山が開いたプロレスというショーは、ハッスルなどのエンターテイメントと、総合格闘技などのガチンコ勝負とに大きく分かれました。

 しかし、ガチンコからエンターテイメントに移る者も多く、両者とも、力道山のDNAによって成り立っているように思えます。

 力道山は柔道出身の木村政彦との試合では、ガチンコ対決を行い、リングが木村の血で染まり、客席は静まり返ったと伝えられます。
 最もこの試合、一方的に八百長の筋書を破り、力道山が猛然と殴りかかった、とする説もあるようです。


 日本プロレスの父、力道山、今頃地獄で大暴れしているでしょうか?

力道山 デラックス・コレクターズ・エディション [DVD]
ソン・へソン
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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