今日の夕方、精神科の診察がありました。
職場復帰して2年2ヶ月、とくに精神症状が出ていないため、二週間に一度だった診察が、三週間に一度に変更することになりました。
また、以前、抗うつ薬のジェイゾロフトを少しずつ減らし、一年で完全に切ってからもうずいぶんになるので、さらなる減薬にチャレンジすることになりました。
抗うつ薬のドグマチールを現在朝夕一錠ずつ飲んでいるのですが、朝一錠だけに減らすことになりました。
多分大丈夫なんじゃないかと思っています。
これで薬は、抗躁剤のリーマスが朝夕2錠づつ、抗うつ薬のリフレックスが夜2錠、同じく抗うつ薬のドグマチールが朝1錠、睡眠薬のサイレースが寝る前1錠、抗不安薬のワイパックスが頓服で一日2錠まで、となりました。
症状がきつい時はこれに加えて抗うつ薬のジェイゾロフト、メジャー・トランキライザーのPZC、レボトミン、セロクエルを飲んでいたのですから、ずいぶんすっきりしたと思います。
できればリーマスとワイパックスだけになればいいなと思います。
今まで履いていた散歩用の靴がぼろぼろになったため、散歩用の歩きやすい靴を求めて、千葉駅そばのアシックス直営の歩人館という靴屋を訪れました。
噂には聞いていましたが、ここで靴を買うのは一苦労です。
まずは専用の機械に素足を突っ込み、足の大きさ、形状、歩き方の癖などを調べます。
続いて店員が合った靴を次から次へと持ってきて、それを履いてみて、店内を歩き回ってみます。
少しでも違和感があれば、それを店員に伝え、再度計測し、次の靴を探します。
そんなことを小一時間も繰り返し、ようやっと、合う靴にめぐり合えました。
金額は一万五千円と、そう高くはありません。
でその靴を履いてみると、まるで足袋でもはいているようなフィット感と、履いているんだか分からないような軽さが心地よく、早速靴を新しい物に履き替えて、二時間ばかりも千葉周辺を歩き回りました。
実に久しぶりに、2万歩を超えました。
システムが億劫で手を出さなかった歩人館ですが、こんなことならもっと早くここの靴を買うんでした。
しかも靴底が減ったら、2000円程度で張り替えてくれるそうです。
長く履けそうです。
昨日支給のボーナスで購入しました。
残りは住宅ローンのボーナス払いと、貯金かな。
3月5日に父が亡くなってからもうすぐ4ヶ月。
食事制限も運動もしていないのに11キロも落ちてしまいました。
それは良いでしょう。
内科医に褒められていますから。
しかし亡父の蔵書に接するほど、私の心は千々に乱れます。
マルクス全集があったかと思えば茶の本があり、ウェーバーの著作が揃っていたかと思うと漢詩全集や「日本の詩歌」があったりします。
私は父を、思想的には朝日新聞みたいな人で、しかし坊主だから仏教を始めとする東洋思想に強い人と、決めて掛かっていました。
父の膨大な蔵書の山を前にして、私は父が何者であったのか分からなくなりました。
浅草の高給寿司店からバーへと、差しで6時間も語り合ったとき、亡父は私の話を聞こうとして、多くを語りませんでした。
うつ病で長期休暇を取っているとき、奈良や京都に連れ出してくれましたが、やはり亡父は、多くを語りませんでした。
語りつくせぬまま、逝ってしまいました。
私は今、亡父を叱っています。
なぜもっとおのれをさらけだしてくれなかったのか、なぜもっと自分の思いを語らなかったのか、と。
亡父は私の著作やブログを読んで、私の才を愛でてくれていたようです。
また、亡父の頼みに応じて、あいさつ文などを代筆したこともあります。
しかし最も聞きたかったことは、ついに語らず終いでした。
私が最も聞きたかったこと、それは亡父が人生をどうとらえているのか、それ一点につきます。
しかしそれは、亡父の私に対する最後の教育だったのかもしれません。
そんなことは自分で考えろ、とでも言うように。
亡父は辞世の漢詩を残しました。
返り点も無い、素の漢詩です。
おそらくそれをすらすらと読めるのは、親戚中で、国文科卒の私だけ。
私はそれを読み下し文にして、通り一遍の解釈をほどこして親族に見せました。
しかし私は、今もその漢詩を前にして、何か仕掛けがあるのではないか、何か暗号があるのではないかと、呻吟しています。
亡父の亡霊は、確実に私を悩ませています。
それは意図してのことではないでしょうが、あまりに巨大な人物であっただけに、私はその亡霊と対決しなければならないのです。
私がそれを克服することは、生涯、ありえないでしょう。
私は生涯かけて、亡父の放った謎に挑み続ける他ありません。
出ました。
ボーナス。
しかし、昨年の夏より大幅に減りました。
9%の減額。
期末勤勉率100%、成績率良好の私が、9%の減。
泣けますねぇ。
これは民主党政権が人事院の意向を無視して国家公務員給与の大幅減を断行したことによるものです。
労働三権が認められていない国家公務員の待遇・身分を担保するために人事院は存在しているはず。
そのために人事院は会計検査院と並んで内閣から独立した行政機関とされています。
その人事院の意向を無視するとは、暴挙としか言いようがありません。
民間企業では、ボーナスが出ない年もあると聞き及びます。
一方、業績が良かった年には、どーんと大盤振る舞いする場合もあるとか。
営利を目的としない国や公共団体は、大儲けするはずがありません。
したがってどーんと貰えることはあり得ません。
それでもモチベーションを維持するのは、真面目にこつこつ働いていれば、少しずつ給料が上がっていくと思えばこそ。
木っ端役人にとっては辛い時代を迎えました。
住宅ローンのボーナス払いが重くのしかかります。
うれしいはずのボーナス支給日が、物悲しい日に変ってしまいました。
平成4年に就職した私は、バブルの最後。
バブルがはじけてから数年間は、月給もボーナスも着実に上がっていきました。
雲行きが怪しくなったのは、小泉政権誕生後です。
職員の数が見る見る減って負担が増え、派遣職員が増えました。
派遣職員の多くはちょっとでも仕事がしんどいと辞めてしまいますので、あてにはなりません。
そして、平成16年の、国立大学、国立研究機関の法人化。
私たちは公務員ではなくなったはずなのに、国家公務員の給料が下がるときには一緒に下がります。
公務員を減らしたいがための数字のマジックですね。
国立大学、国立研究機関には10万人以上が働いていますから、それだけ一挙に国家公務員が減った、と見かけは感じるでしょうが、実際は税金で運営され、様々な規則も国と同様に行っています。
変ったのは会計制度くらいですかねぇ。
官庁会計から企業会計に変り、仕事量が増え、心を病む職員が激増しました。
まぁ、愚痴を言っても始まりません。
9%減とはいえ、ボーナスをもらえたことは間違いないのですから。
数日かけて、亡父の蔵書の中の一冊、谷川健一の「魔の系譜」を読みました。
著者は民俗学者ということですが、内容はエッセイ風の読み物でした。
ここ数日の間にアップした「犬神憑き」・「東北」・「隠れキリシタン」は「魔の系譜」を読み進めるうちに触発されて書いたものです。
亡父はこの世ならぬものへの理解がなく、憑きものだとか魔だとかいうものを毛嫌いしている風でしたので、こういう書物が出てきたことに驚いています。
むしろ私がそういう物への傾斜を深める姿を危惧しているように感じていましたから。
「魔の系譜」は、わが国の怨霊や物の怪、古代の信仰や呪術などを多角的な視点から描きだした興味深い書物です。
でも多分、学者の間では評判が悪いんじゃないかなと思いました。
論文ではないし、当然論理構成は破綻しており、著者の思い入ればかりが鼻につきました。
どこかセンチメンタルな感じが、若書き、を思い起こさせました。
でも書かれた当時の年齢をみてみると、40代後半で、けっこうおっさんなのですね。
後に谷川健一は、この系統の論文を多く物すことになります。
私のような民俗学の素人には、気楽に読める興味深い書物でした。
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雨が降り始めました。
明日は一日雨だとか。
梅雨になると、うつ病発症者が激増するそうですね。
日照時間が少ないのと、湿気が高くてだるいのと、低気圧の影響で体にガタが来るようです。
幸い私は、あまり雨によってふさぎ込むということはありません。
しかしそれでも、雨の日はだるいですねぇ。
あぁ、いやだ。
犬神憑き、という言葉を時折耳にします。
他にも狐だとか蛇だとかが憑いている家系があると、主に四国を中心に広く信じられ、現在でもなお差別の対象になっているとか。
犬の魔力で怨む人や家に祟りをなさんとしたした人物が、犬を捕えて首だけを出して土中に埋め、犬が腹を減らしたと見るや生肉などを目の前におき、すると犬の眼は吊りあがって最も魔力を得た瞬間に犬の首を切り落とし、その犬の魔力を自在に操った者に犬神が憑き、代々犬神憑きの血筋となると言います。
現在もなお、犬神憑きと称せられる家ではそうではない家との婚姻が叶わず、葬式にも入れてもらえない、とか。
村八分よりひどい、村十分ですね。
そのため、犬神憑きと称せられる家同士が徒党を組んで行動するため、かえって不気味がられてより差別はひどくなる、というわけです。
でも不思議ですね。
差別するということは犬神の魔力を多少は信じているのでしょうから、差別なんかして、それを怖れたりはしないのでしょうか。
昔、「狗神」という映画がありました。
そこで狗神憑きの者たちが集団自殺するシーンがあって、たいへん怖ろしく感じましたね。
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また、「犬神家の一族」という名画がありました。
あの映画に登場する犬神家はたいそうな金持ちでしたが、実際、犬神憑きと称せられる家には、成金が多いそうです。
つまり、嫉妬ですね。
嫉妬から、あの家は犬神の力で金持ちになった、と噂を流し、それが広まればもはや否定できません。
金持ちのユダヤ人が差別されるようなものでしょうか。
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今もなお、こうした俗信がなくならないのは、人間精神はいくら科学技術が進歩しても、魔力や呪術を求めてしまう暗黒への憧れがあるということでしょうか。
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私の職場の先輩が、うつ病で休み始めました。
そろそろ一か月になります。
この人は十五年以上前に発症し、以来、長期病気休暇を繰り返しています。
奥様と子どもを養うためには辞めるわけにもいかず、あんなに再発を繰り返したらさぞかし辛いだろうと思います。
同病相哀れむというやつですかねぇ。
ここ二年ばかりは元気に通っていたのですが、再発してしまいました。
他人事とは思えません。
そういえば最近、新型うつ病という病名を耳にするようになりました。
普通のうつ病患者は何もできない、何もする気が起きない、気分が沈む、頭が働かない、動作が緩慢になる、すぐに涙をこぼす、希死念慮が強い、といった症状が特徴です。
しかし新型うつ病は、職場や学校などに行くと急激に不安になり、気分が落ち込むが、家では元気で、病気休暇中もうつ病患者とは思えないほど休暇を満喫する、という特徴を持っているそうです。
新型うつ病への偏見はうつ病へのそれに倍するものでしょうね。
詐病に見えてしまう危険性が高いですから。
新型うつ病、2005年くらいから急増しているそうです。
派遣の大幅な自由化が行われた翌年です。
つまり、正社員で入社すれば年功序列で出世し、給料が上がっていく、というモデルが壊れ、その場かぎりの使い捨て、もしくは極端な能力主義がはびこった結果の副産物だというわけです。
どうせ使い捨てなのだと思えば、職場に行く気も失くすでしょうし、会社の建物を見ただけで気持ちが沈むでしょう。
それは容易に想像がつきます。
そういう意味では、新型うつ病患者は日本社会の基本的システムが崩壊したための犠牲者だと言えるでしょう。
すると旧来のうつ病患者への対処法とは自ずと違った治療法が求められます。
服薬と安静を基本とし、体調が良くなってきたら新聞を読んだり散歩をしたりといったことを始め、復職数か月前には障害者職業センターなどで職業訓練を受ける、というのが私がうつ病を克服したプロセスです。
新型うつ病の場合、これに加えて自己変革が求められるでしょう。
それは年功序列の会社に再就職することでも良いし、割り切って使い捨てでも良いから給料さえもらえれば良い、と考えを変えるか。
でも難しいでしょうねぇ。
生身の人間ですからねぇ。
私としては、早く新型うつ病の有効な治療法が確立されることを望むばかりです。
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北朝鮮では多くの民が飢え、場合によっては飢え死にする者も少なくないと聞き及びます。
飽食のわが国からは考えれらないことです。
しかし、過去、わが国にも飢饉が襲い、多くの人々が飢え死にしました。
とくに東北地方において、昔は米の育ちが悪かったせいか、飢饉は頻発しました。
宝暦8年には、八戸藩2万石のうち、18,573石の損害があったと言いますから、ほぼ全滅ですね。
「耳目凶歳録」には、三歳の幼児だも髑髏をもって蹴鞠を学び、とありますから、その惨状は目に余るものであったでしょう。
幼児が髑髏で蹴鞠をするなど、まるでホラー映画です。
「飢歳凌鑑」には、
さる人いわく、大工の曲尺立てみれば上はまがり下直なり。
工に用いるときには高くひくくせまく丸く四角、なにになるにしても自由自在いかさま御上は曲尺を立てたるがごとし。
曲たる中に直あり。
このたびの御吟味直過ならば大分下の迷惑もあるべきに、けんもんのかすみにて眼力も曇り、吟味の先が見分らざるこそ直なり。
これ何事も非理法権転の御政事地獄の沙汰もかね次第、南無阿弥陀仏、助け給え。
という記述が見られます。
これは役人に賄賂をにぎらせてどぶろく造りの罪を逃れる話しですが、上は曲がっていて下は直だけれども、曲のなかにも直がおり、それは民を苦しめるが、賄賂で罪を見逃すくらいの曲がった役人でちょうど良い、という強烈な皮肉です。
他に、百姓を親、武士を子に見立てた文章もあって、親(百姓)が一生懸命米を作って子(武士)を養育してやっているのに、子(武士)は親(百姓)に感謝するどころか、ひどい仕打ちをする親不孝者だというのです。
当時絶対であった身分制度をやすやすと乗り越え、支配階級をあざ笑う東北の民というのは、どれだけひどい目にあったのでしょうね。
そしてこのたびの東日本大震災。
この国の神々は、まるで東北の地を呪詛しているかのごとくです。
しかしだからこそ、我慢強く、高い倫理規範を持った東北人気質が生まれたのかもしれません。
戦中、陸軍は出身地別の部隊をよく編成したそうですが、九州の部隊は威勢は良いが長期戦に弱かったのに比して、東北の部隊は長い消耗戦によく耐えたそうです。
私の父方の先祖は青森の出だとかで、もう青森との関係性はありませんが、東北という荒々しくも神々しいイメージに惹かれて、学生時代、二週間ほど旅したことがあります。
11月の中旬でしたが、もう雪がちらついていて、過酷な気候でしたねぇ。
だからこそ、ねぶた祭りなど東北の夏祭りは激しくはじけるのでしょう。
私が東北に住むことはないでしょうが、なんとなく、憧れますねぇ。
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今日、衆議院で消費税増税法案とそれに関連する法案が賛成多数で成立しました。
これで平成26年4月から消費税は8%に、平成27年10月からは10%に増税することが決まりました。
現在の厳しい財政状況に鑑みて、やむを得ない措置であることは理解できます。
しかし三年前、民主党が高々と掲げたマニフェストには、増税のぞの字もありませんでした。
当時国土交通大臣だった前原氏は強硬に八ツ場ダム建設中止を訴えましたが、今、工事は着々と進んでいます。
仕分けで霞ヶ関埋蔵金が10兆円も出てくるような話でしたが、そんなものは存在していませんでした。
都市伝説だったのですね。
夢と現の区別がつかない友愛総理が外交・国防を滅茶苦茶にし、市民ゲリラ総理が原発事故対応を誤ってエネルギー政策を迷走させました。
そしてどじょうはマニフェストなんて初めから存在しなかったかのように、増税に突き進みました。
この三年間で、国民が得た教訓は、民主党のような基本政策が存在しないか、存在してもバラバラの党に政権を託してはいけない、ということです。
国民はそれを学ぶために、手ひどい仕打ちを受けました。
で、打っ壊し屋の出番というわけです。
小沢元代表とその一派は、なんと57人もの多数が、増税法案に反対票を投じました。
その中には夢と現を往来する友愛の鳩も含まれています。
小沢元代表の行動は、民主党の息の根を止める効果があるでしょう。
民主党は分裂すればよいし、多分するでしょう。
驕れる者は久しからず、とか申します。
それにしても民主党の天下は短かったですねぇ。
でも次に勝つのはどこなんでしょう。
自民党の人気もぱっとしませんし。
そうすると維新の会とか石原新党ということになるのでしょうか。
私としては、自民党を飛び出して新党改革に合流した舛添要一議員に、新党改革ごと自民党に復党してもらい、自民党の顔として自民党再生の切り札になってほしいと思っているのですが、如何でしょう?
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私は外国人宣教師が去った後も密かに信仰を持ち続けた隠れキリシタンに不思議なほど惹かれます。
捕らえられれば拷問の末に死罪となるのが明白なのに、また、指導者たるべき外国人宣教師がいないのに、よく信仰を保持し続けたものだと思います。
外国人宣教師が国外に退去させられ、あるいは殺害された後、隠れキリシタンを指導したのは、バスチャンと呼ばれる日本人であったようです。
ある村でキリシタン狩りが行われ、生きたまま600人ものキリシタンが海に投げ込まれたそうですが、岸に打ち寄せる遺体をせっせと葬ったのがバスチャンだったとか。
そのバスチャンも役人に囚われ、3年半もの監獄生活の間、78回も拷問にあっているとか。
よく生きていたものです。
いよいよ首をはねられると言う時、バスチャンは四つのことを言い残しました。
1、汝らは七代までは、わが子とみなすがそれ以後は救霊が難しくなる。
2、コンエソーロ(聴罪司祭)が大きな黒船に乗ってくる。毎週でもコンビサン(告白)が申される。
3、どこでもキリシタンの教えを広めることができる。
4、途中で異教徒に出会っても、こちらから道譲らぬ前に先から避けるであろう。
バスチャンはキリスト暦に精通しており、その暦が信仰生活にメリハリを与え、四つの遺言が希望を与えたことでしょう。
面白いことに、7代後、220年後に、フランス人神父を得、キリシタンたちは再び救霊の恩恵に浴することができたのです。
バスチャンの死後220年、隠れキリシタンたちはいつか予言が叶い、司祭を得、堂々と布教し、道の真ん中を歩いて行ける時代が来ると信じたのですね。
その間の隠れキリシタンの胸中というものは、想像しにくいものがありますね。
仏教なり神道なりに形だけでも帰依すれば、気楽に生きていけるものを。
それなのにいつも役人の影におびえ、捕えられたなら殺される運命にある、その毎日というものの緊張感たるや、まさに常在戦場とでも言った気分だったのではないでしょうか。
キリスト教の教えを「天地始之事」という書物に著し、聖母マリアをさんた丸やと呼び、キリスト教は日本人だけで密かに信仰をしている間に、土着化が進みました。
土着化が進んだからこそ、キリシタンは生き残ったのでしょうね。
興味深いことに、江戸幕府がキリスト教を固く禁じ、転べば命は助けるという方針を棄て、キリシタンを捕えたなら有無を言わさずただちに処刑する、という苛烈な方針を立てるや、にわかに諸外国のキリスト教徒がわが国を目指し始めたというのです。
それほど殉教への欲望は大きかったのでしょうか。
イエスにしても、聖セバスチャンにしても、マゾヒストにとってはこれ以上ない究極のプレイの果てに亡くなったようなものですし、その上死後は殉教者として讃えられるのだからこんな良いことはありません。
江戸幕府がこのような血ぬられた宗教を受け付けなかったのは当然といえましょう。
信仰の自由がある今も、わが国にキリスト教は根付かず、これからも根付くことはないでしょう。
私は仏教・神道・儒教などの良いとこどりをして成立した日本教とでも言うべき空気のようなものにどっぷりつかっており、それはたいへん心地よいことです。
それだけに、苛烈な道を選んだ隠れキリシタンたちの心性がいかなるものであったのか、興味深く感じます。
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男ばかりの社会では、男同士の強い絆が見られることが多いですね。
軍隊とか、運動部とか、ある種の会社とか。
ここで男同士は絆を強めるために相手のために自己を犠牲にしてもよい、とまで考えます。
例えば、軍歌「同期の桜」。
貴様と俺とは同期の桜 同じ兵学校の庭に咲く 咲いた花なら散るのは覚悟 見事散りましょ国のため
貴様と俺とは同期の桜 同じ兵学校の庭に咲く 血肉分けたる仲ではないが なぜか気が合うて別れられぬ
貴様と俺とは同期の桜 同じ航空隊の庭に咲く 仰いだ夕焼け南の空に 今だ還らぬ一番機
貴様と俺とは同期の桜 同じ航空隊の庭に咲く あれほど誓ったその日も待たず なぜに散ったか死んだのか
貴様と俺とは同期の桜 離れ離れに散ろうとも 花の都の靖国神社 春の梢に咲いて会おう
旧制高校の寮歌、「嗚呼、玉杯に花うけて」。
嗚呼(ああ)玉杯に花うけて 緑酒(りょくしゅ)に月の影宿(やど)し 治安の夢に耽(ふけ)りたる 栄華(えいが)の巷(ちまた)低く見て 向ケ岡(むこうがおか)にそそり立つ 五寮の健児(けんじ)意気高し
どちらも男同士の世界を詠ったもので、そこには同性愛的な香りさえ漂います。
しかし同時に、男同士の絆を維持するための装置として、同性愛嫌悪を挙げなければならないでしょう。
異性愛者である男同士が、同性愛的にさえ見える強い絆で結ばれ、それでいて同性愛者を差別することで、よりいっそう男同士の絆を深める、という複雑な構造が、軍隊や旧制高校ではみられ、さらに現代の自衛隊や警察、武道クラブなどで見られます。
ここでは、女性は男の意のままになる従属物である、という根深い偏見が、今もなお生きているように思います。
そして決まって、強い絆で結ばれた男ばかりの集団に属する者は、女よりも男同士の絆を選ぶのです。
これはいったいどうした事態でしょうね。
古くはチームワークを発揮して狩りをしたこと、後には組織を作って敵と殺し合いをしたこと。
それら生きるか死ぬかの極限状態にあっては、その構成員である男同士が深い絆で結ばれているかどうかは死活的な意味を持ちます。
それが今も続いているということでしょうか。
あるいはまた、男には不可能な、生むという神秘的な行為を成し遂げる女性への畏怖が、男をして男同士で徒党を組ませ、腕力で女を支配する事態を生んだのでしょうか。
男は男同士の絆を強めることで男社会の維持を目論見、しかしそれはもはや不可能なほど、女性の社会進出は進んでいます。
今後さらに社会における男女の役割が対等に近づけば、男同士の絆は男にとってセピア色の思い出になってしまうでしょう。
そしてまた、男同士の絆の中心に性愛を置く同性愛者への差別はどのように克服されるのでしょうね。
私は昔から、体育会系の、いやらしいまでの男同士の絆を称揚する行為に、嫌悪とも敵対心ともいうべき心性を持っていたので、古式ゆかしい男同士の絆が崩壊し、男社会中心から脱皮した新しい秩序が生まれることを、心待ちにしているのです。
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中国の人権活動家、李旺陽氏が不審な死を遂げているのがみつかり、中国政府は自殺と発表しました。
すると次々と人権活動家らが、自分は絶対に自殺しない、と宣言し始めています。
自分が不審な死を遂げたらそれは政府による暗殺だ、というメッセージなんでしょうね。
で、昨日、今度は中国在住のナイジェリア人がタクシーの中国人運転手と喧嘩になって逮捕され、取調べ中に突然死した、と中国警察が発表したからさぁ大変。
中国は近年、アフリカ諸国の天然資源をねらってそれらの国々に札びらを切って友好関係を作り上げ、それがためにアフリカ人の中国在留者が激増していたため、ナイジェリア人の死が不自然だとして、中国在住のアフリカ諸国の人々が広州で大規模なデモを行ったそうです。
在中国ナイジェリア大使館も、死亡したナイジェリア人の検死にナイジェリアの専門家を立ち合わせるよう中国政府に要求しているとか。
さすがの中国政府も、外国人、それも貴重な資源を豊富にかかえたアフリカ人たちのデモとあっては暴力で鎮圧することはできなかったようです。
それにしてもなんだって取調べ中に急死しちゃったんでしょうね。
李旺陽氏の自殺にしてもタイミングが良すぎるというか悪すぎるというか。
なんだか都合がよすぎるように感じます。
現在のところ死因は不明ですが、官憲による暴力を邪推したくなるような装置が調っていますね。
どうか拷問などではなく、心筋梗塞などの突然死であってほしいものだと思います。
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今日は映画館に行きました。
観たのは「スノーホワイト」です。
「白雪姫」を基にしたダーク・ファンタジーなのかと思ったら、ダークな部分はほとんどなく、子供向けの娯楽作品でした。
童話はその残酷さにこそ深い味わいがあると思うのですが、あれではちょっといただけません。
中世ヨーロッパの戦争アクションみたいで、途中、居眠りしてしまいました。
ていうか、観に行った私がバカだっただけで、あれはあれでファンタジー好きな人からは良い映画に見えるんでしょう。
人間の暗部を抉り出すようなダーク・ファンタジーといえば、「ダークナイト」に止めを刺します。
ヒース・レジャー演じるジョーカーが不気味な怪演をみせていて、完全にヒーローのバット・マンを食っていましたね。
しかもヒース・レジャー、その後急死してしまいました。
まるでジョーカーという稀代の悪役に命の精を吸い取られたかのごとくです。
その事実もあいまって、この映画にはカルト的なファンが大勢います。
もちろん、私もその1人です。
名優の死を悼みます。
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今日は千葉公園に大賀蓮を見に行きました。
大賀蓮は昭和26年に千葉市内で発見された2千年前の蓮の種を大賀博士が発芽させたもので、以来、千葉市の花ということになっています。
千葉市のキャラクター、チハナちゃんは大賀蓮をもとにデザインされたものです。
千葉公園内にある大賀蓮の池の周辺は、普段閑散としているのに今日はたいそうな人出でした。
じつは千葉市内に住まいして十数年経ちますが、咲いているのを見るのは初めてです。
古代の花らしく、大きくて素朴な味わいでした。
まさに開こうとしている大賀蓮です。
見事に開いた大賀蓮です。
散った後の大賀蓮です。
大賀蓮の花は開花からわずか4日で散ってしまうとのことで、そのはかなさは桜以上です。
ただ、同じ蓮池の大賀蓮でも、咲く時期にばらつきがあるため、2週間くらいは楽しめるようです。
こうして咲こうとする姿、咲いている姿、散ってしまった後の姿を写真で並べてみると、まるで人の一生のようで感慨深いものがありますね。
興亡や 千万の蓮 くれなゐに
と詠んだのは山口青邨でしたか。
たしかにそんな気分にさせる蓮池の光景でした。
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