昨日はどこに出かけるでもなく、読書をして過ごしました。
読んだのは「イノセント・デイズ」という小説です。
早見和真という作家の本です。
この人の小説を読むのは初めてです。
書店で見て、興味を持ちました。
ミステリー、ということになるんでしょうか。
私には文芸作品のように感じられました。
30歳の確定死刑囚の女が処刑される日から物語は始まります。
その後に死刑囚の生い立ちや性格、生まれ育った環境等が友人や恋人らの視線から語られます。
とりわけ小学生時代の仲良しグループで、秘密基地で遊んだ男の子が長じて弁護士になっており、弁護士は女囚に再審請求を勧めますが、拒否されます。
女囚は死刑を怖れてはいません。
それどころか、早期の執行を望んでさえいます。
女囚は短い生涯のなかで、必要とされること、愛されることに飢えてきました。
そういうことがほとんど無かったのです。
太宰治の「人間失格」ではありませんが、生まれてきてごめんなさい、というセリフまで飛びだします。
そして衝撃的なことに、真犯人は別にいるのではないか、ということを示唆して物語は終わります。
それが本当なら、なぜ女囚は早期の死刑執行を望み、その日、静かに刑を受け入れたのか。
なぜ、取り調べで早々に犯人であることを認めたのか。
それは間接的な自殺ではないのか。
複雑な読後感を残します。
過去に池田小事件の犯人はクソみたいな人生だったが地道にサラリーマンをやるよりよっぽどマシだった、と嘯き、控訴せずに早期の執行を望み、現に他の死刑囚よりも断然早く執行されました。
これを聞いた時、死刑の執行が犯人の心からなる望みであった場合、死刑にどんな意味があるのだろうと疑問に思ったことがあります。
死刑及び死刑囚について思いを致さざるを得ない、重い小説でした。