ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

ヴィム・ヴェンダース

2009年10月30日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 今宵、晩酌をやっていると、どこからともなく、天使の詩が聞こえてきました。

 私が最も敬愛する映像作家、ドイツのヴィム・ヴェンダース監督が1987年に撮った、「ベルリン天使の詩」です。
 この映画を、私は何度うっとりと観たことでしょう。
 モノクロの映像で、人間の歴史を共に歩んできた二人の天使が、重厚な音楽のもと、陰鬱に深いセリフを交わします。天使といっても、暗いコートをはおい、無精ひげをはやした初老の姿です。ときにそれは退屈なほど、延々と続きます。それもそのはず、天使にとって、生きることはただ人間を見ることだけであり、退屈なのは当然です。
 しかし一人の天使が、人間に恋します。かつてなかった感情を覚えます。そして天使は、人間になって、彼女とともに生きたい、ともう一人の天使に相談します。
 永遠に退屈を生きる天使から、一瞬のきらめきに生きる人間へ。
 そしてついに、人間になります。
 モノクロだった画面は突如カラーとなり、まばゆいような生の賛歌に溢れます。

 この映画はバイブルのように一部からあがめられ、今も伝説となっています。私もまた、信者の一人です。もう観てください、としか言いようがありません。

 その三年前に、同監督は「パリ、テキサス」でカンヌのパルムドールを受けています。男が、テキサスの砂漠の中にあるパリという町を求めて放浪するロードムービーです。私は中学生の頃この作品を見て、数日、寝込みました。映画がこれほど人の心をえぐるのか、と切なくなりました。

 そのほかにも内面に沈み込む人々を描いた「夢の果てまでも」や、小津安二郎へのオマージュ「東京画」、ロードムービー「リスボン物語」など、名作が多数あります。

 今宵、一杯の酒が、なぜ、私に古い映画の記憶を呼び覚ましたのか、不思議です。プルーストが紅茶の香りを聞いて、「失われた時を求めて」を書き始めたようなものでしょうか。

ベルリン・天使の詩 デジタルニューマスター版 [DVD]
ブルーノ・ガンツ,ソルヴェイグ・ドマルタン
東北新社
パリ、テキサス デジタルニューマスター版 [DVD]
ハリー・ディーン・スタントン,ヴィム・ヴェンダース
東北新社




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40歳の童貞男

2009年10月30日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 DVDで「40歳の童貞男」を観ました。
 タイトルのとおり、40歳の童貞男が主人公のコメディです。
 主役はフィギアやゲームが好きなオタクの家電量販店店員です。ですが、この男、ハンサムだし、体も鍛えてるし、女性が苦手といっても会話ができないことはないし、男の友人にも恵まれているし、高齢童貞男には見えません。
 「電車男」のような、いかにもはがゆい感じではありません。
 真に女性が怖くて会話もできないような40男が、参考にしようとして観ても無駄でしょう。
 べつにそこまでセックス経験があるかないかにこだわらなくても、と思いますが、確かに、私も40歳ですが、今でも女性経験がなかったら引け目に感じるだろうな、とは思います。
 男女が人間同士として付き合うには、異性がどんな生き物なのか、多少は知らないと難しいでしょう。恋愛をしたり、異性の友人を持ったりすることで、男も女も、正しく異性と向き合い、異性を異性としてではなく、一個の人間として見ることができるようになるでしょう。

 私の経験からいって、男というのは、十代後半ともなると、異性に強い性欲と好奇心を持ち始めます。その頃の私は、女性を、人間というよりも、性の対象としてもっぱら見ていました。筒井康隆が言った「性器に目鼻」というのは、少年の性欲をよくあらわしています。
 二十代半ばになって性欲は落ち着き、三十過ぎると急速に衰えます。結婚適齢期というのは、そういう意味で、正しいのではないかと思います。

 40歳童貞男という言葉自体が、生物学的に盛りを過ぎてなお、生殖行為の経験がない、ということの滑稽さや悲しみを表しているのでしょうね。

40歳の童貞男 無修正完全版 【ベスト・ライブラリー 1500円:コメディ映画特集】 [DVD]
スティーヴ・カレル,ポール・ラッド,キャサリン・キーナー
ジェネオン・ユニバーサル

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自殺サークル

2009年10月29日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 DVDで「自殺サークル」を観ました。
 54人の女子高生が一斉に電車に飛び込んで集団自殺する冒頭から、謎の自殺が相次ぎます。インターネットのサイトに関連があるようですが、謎は謎のまま、最後まで不明のままです。
 ただ、多くの人が、笑顔で死んでいきます。不愉快な映画です。
 変に哲学的に描いて、人を煙に巻いているところも、気に入りません。
 「あなたと、あなたの関係性はどうですか?」というセリフが頻繁に用いられますが、これも思わせぶりなだけです。この監督は、詩人で、芸術性が評価されている、とのことですが、腐った頭が生み出した、愚かな駄作としかいえません。
 狂気を描くのなら、それなりの作法というものがあるはずです。

自殺サークル [DVD]
石橋凌,永瀬正敏,さとう珠緒,宝生舞,嘉門洋子
大映

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平安

2009年10月29日 | 精神障害

 最近、心の平安が得られません。

 起きている間中、ひどく不安なような、緊張しているような、焦っているような気分です。頓服の抗不安薬も効きません。私はむやみに動き回って、気持ちをそらせようとし、ことごとく、失敗するのです。
 
 お釈迦様は、苦しみはどこから来るか、と問われて、「執着を縁として生起する」と答えています。
 そしてその解決を説いています。
「上と下と横と中央とにおいて、そなたが気付いてよく知っているものはなんであろうと、それらに対する喜びと偏執と識別とを除き去って、変化する生存状態のうちにとどまるな。このようにして、よく気をつけ、怠りなく行う修行者は、わがものとみなして固執したものを捨て、生や老衰や憂いや悲しみをも捨てて、この世で智者となって、苦しみを捨てるであろう」 

 私は何に執着しているのでしょう。変化する生存状態のうちにとどまるな、とは、いかにも酷なことです。
 それとも私は、単に脳が破壊されただけなのでしょうか。それならもっとぐちゃぐちゃに、わけがわからないくらい破壊されたいものです。

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)
中村 元
岩波書店

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悪夢と早朝覚醒

2009年10月29日 | 精神障害

 悪夢にうなされて、午前3時に目が覚めてしまいました。もう、悪夢が怖くて眠れません。
 私は、うじや、ミミズなどの気持ちの悪い虫のプールに放り込まれるのです。私は虫が大嫌いなので、大声で叫びながら、必死でもがき、助けを呼びます。しかし、助けなどこないのです。やがて私の体は硬直し、全く動かなくなります。しかしそれとともに、どういうわけか、虫は消えているのです。
 ほっとしたのもつかの間、私は蒲団のなかで、金縛りになっています。蒲団が石のように重く、体にのしかかります。私は叫びながら、体をうごかそうとします。
 まずは小指から。小指が少しでも動いたら、次は薬指。そうやって、少しずつ、金縛りから解放されようと、努力します。
 全身が動いた瞬間、汗をびっしょりかいて、私は目覚めます。あまりの恐怖に、目覚めてなお、震えています。

 私の頭もいよいよイカレタようです。


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弟切草

2009年10月28日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 昨夜、DVDで「弟切草」を観ました。

 ゲーム会社でバイトをしている奈美(奥菜 恵)は、突然現れた弁護士から、本当の父親が別にいて、その父が亡くなり遺産を受け取ることになることを告げられる。奈美は自分のルーツを知るため、元恋人のゲーム会社社長の公平(斉藤陽一郎)と共に亡父の屋敷へと向かう。
 そこは、深い山中うっそうと茂った弟切草に覆われた洋館。屋敷の中には、奈美の亡父で世界的に有名な前衛画家・階沢蒼一の未発表作が残されていた。屋敷を探索する奈美と公平が発見したのは、奈美の双子の妹・直美の存在・・・。
 やがて亡父・蒼一が犯してきたタブーの数々が明らかになると同時に、二人は何者かがしかけた罠、襲撃によって逃げ道のない恐怖の世界へと引きずり込まれていく。

 ホラーの形はとっていますが、狂気の芸術に取りつかれた親子二代の物語とみるのが正しいでしょう。
 ゲームが広く売れているようです。

弟切草 特別編 インタラクティブエディション [DVD]
小倉和彦,長坂秀佳,中島吾郎,仙頭武則
パイオニアLDC


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色と欲

2009年10月28日 | その他

 あるドラマで、大滝秀治演じる老刑事が、「そりゃ、色と欲だわなあ」と言っていたのが、印象に残っています。
 犯罪の動機は、究極のところ、色と欲に尽きる、というわけです。最近世間を賑わせている酒井法子の事件は、覚せい剤で気持ちよくなりたい、という欲。殺人の疑いもある34歳の女の結婚詐欺は色を利用しておのれの欲を満たそうとするもの。
 真面目に働くことだって、給料をもらいたい、という欲でしょう。
 人間の行動原理には色と欲以外ないかのごとくです。
 しかし人間はそういうもの、と決めてしまえば、わかりやすいですね。
 政治的信念だか宗教的信念だかを持ち出されると、困ったことになります。
 色と欲で生きる人間は御しやすいといえます。


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焦燥

2009年10月27日 | 精神障害

 今日の診察で、焦燥感があり、辛いことを話しました。ワイパックスが処方されました。

 発病前には、私には親しみのない感情だったものが、今ではすっかり、仲良しになってしまいました。例えば焦燥感・あるいは悲哀感。腹の底に真っ黒い塊が沈んでいるかのような、憂鬱。目を開けていられないほどの目の疲れ。そして、ハラスメント加害者に対する、殺意にも似た憎しみ。さらには、幻覚を見ます。幽霊の。

 これら私の精神の変化は、実際に生活しているうえで、指摘されることはほとんどありません。隠しているからです。
 これが隠せなくなったとき、いよいよ誰から観ても明らかな狂人になるのでしょうね。


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殺人ネット

2009年10月27日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 昨夜、DVDで「殺人ネット」を観ました。
 女子高生仲良し五人組が、ふとしたことでいがみあい、愛憎劇を繰り広げるどこか同性愛の匂いがする、青春映画でした。
 タイトルは過激で、現に自殺や殺人も起こるのですが、あくまでメインは女子高生たちの関係性の変化にあると思います。いわゆるサスペンスや学園ホラーとは一線を画す、上品な映画でもあります。
 私は充分、楽しめました。

殺人ネット [DVD]
井村空美,神崎詩織
GPミュージアムソフト




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霧の中

2009年10月26日 | 文学

 激しい雨が降っていますね。こんな秋の日には、怖ろしい事件が起きそうな予感がします。

 もう三十年も前になりますか、パリで日本人留学生がオランダ人の女子大生を殺害のうえ肉を食らう、という「羊たちの沈黙」のような事件がありました。犯人の佐川一政はフランスの裁判で心神喪失が認められ、無罪となって日本に帰ってきました。
 そして書き上げたのが、「霧の中」です。事件のことを、グロテスクなまでに、細々と描写しています。

 なぜこんな文章が書ける人が心神喪失なんだ、と中学生ながら不思議に思った記憶があります。そのうえ、カニバリズムの大家を自称して、様々な評論活動を行っています。判決は確定していますから、無罪である以上、法律的に何の問題もないのですが、遺族の感情を考えると、いやな気持ちになります。
 いやな気持ちになりたいときには、お勧めの一冊です。

霧の中
佐川 一政
彩流社

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水上バス

2009年10月24日 | 散歩・旅行

 今日は浜離宮を散策しました。元は将軍家の鷹狩り場だったとのことですが、明治以降、園遊会や迎賓館として用いられたとのことで、たいそう立派な庭園でした。
 その後、水上バスにのり、東京湾から隅田川を上って両国で下り、両国から錦糸町までぶらぶら歩いて、錦糸町から電車で帰りました。16,000歩、歩きました。


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2009年10月23日 | 精神障害

 昨夜、奇妙な夢を見ました。
 図書館の書庫に私はいるのですが、突如、小柄で、意地の悪そうな老人が、辞典類のコーナーに現れるのです。老人はたいそう汚い身なりをしており、ホームレスと見まがうばかりです。
 入庫を認められた者が着けるべき名札を着けていなかったので、私が老人に注意しますと、老人は呆けたような目で、私をにらみます。
 気味の悪いやつだと思っていると、老人はしだいに影が薄くなり、やがて物の怪の正体を現し、その恐ろしい姿で、私めがけて突進してくるのです。
 声を挙げる間もなく、老人は幽体となって、私のなかに憑依してしまいました。

 私は悲鳴を上げると、目を覚ましました。いやな汗を、びっしょりかいていました。あの老人はいったい何者だったのでしょう。
 どうも老人は、今も私のなかにいるような気がしてなりません。


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リアル鬼ごっこ

2009年10月22日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 昨夜、DVDで「リアル鬼ごっこ」を観ました。
 以前原作を読んだのですが、文章がプロとは思えないほど稚拙で、内容も混乱していて、つまらなかったのを思い出します。
 著者インタビューでは、元々読書が嫌いで、小説を読んだことがほとんどなかったのに、書いてしまい、自費出版したら売れてしまった、と語っていました。

 映画では、原作とはかなり違うストーリー展開になっており、しっかりと作っておりました。
 パラレルワールドで、佐藤という名の王が支配する世界に飛んだ佐藤翼という少年が、ある理由で佐藤姓の者を皆殺しにしようとする王が考えたリアル鬼ごっこというゲームから逃れ、このゲームが行われるにいたった本当の理由と陰謀を暴きだす、というストーリーです。

 原作では、単に王様が自分と同じ姓を名乗る者が多いことに腹を立てただけ、ということになっています。

 いわばハードジュブナイルとでもいうべき作品で、中高生向けと思われますが、大人が観ても楽しめる、C級 娯楽大作に仕上がっています。

 柄本明がなかなかの怪演を見せて、効果的です。

リアル鬼ごっこ スタンダード・エディション [DVD]
石田卓也,谷村美月,大東俊介,松本莉緒,吹越満
ジェネオン エンタテインメント

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死との対面

2009年10月21日 | 文学

 安岡章太郎のエッセイ「死との対面」を読みました。
 この人の小説は、中学生の頃、熱心に読みました。洒脱な作品が多いな、と感じました。
 現在、90歳ちかくですが、まだ現役ですね。たいしたものです。
 「死との対面」では、老作家の徒然の物思いが、語られています。私の倍以上生きている人の言葉には、重みがあります。
 様々な病気を克服し、長生きするにつけても、旧友が次々亡くなっていく、いよいよ次は自分の番だ、という覚悟のようなものが感じられます。
 猫だって長生きすれば猫又になるとか。それなら作者はもはや仙人の域でしょう。

死との対面―瞬間を生きる
安岡 章太郎
光文社

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ハラスメント二次被害

2009年10月21日 | 精神障害

 ある所で行われたハラスメントに関する研修会の資料を手に入れました。
 そこに書かれた様々な事例を前にして、不覚にも、涙を禁じえませんでした。

 一次被害として、私は支社長からパワーハラスメントを受けました。これは泥棒や殺人とちがい、それだけで犯罪を構成する要件を満たしているわけではありません。受け取り方によっては、なんとも感じない者もいるでしょう。しかし私は、これに激しい屈辱を感じ、ついには精神疾患に陥りました。

 二次被害は、もっと甚大でした。
 労務担当課長及び部長に被害を訴えたのに、もみ消されました。挙句の果てには、部長から口外しないように説得されました。
 やむを得ず、私は弁護士を立てて話し合い、百万円の損害賠償と謝罪文を受け取りました。しかし謝罪文というのは、私が作成したものです。支社長はそれに判をついただけで、心からなる直接の謝罪は、ついにありませんでした。あろうことか、支社長は、叱咤激励の意図であり、ハラスメントではない、とか、自分はそのような人間ではない、などと、醜い言い訳を繰り返しました。
 また、支社長を取り巻く幹部は、支社長よりも、まるで私が悪いかのような態度を、言外ににおわすのでした。

 これらの対応が二次被害となって、今も私の心を乱します。
 加害者はすぐに忘れても、被害者は一生涯、忘れることなどできないのです。

 様々な事例から考えて、支社長には停職六ヶ月程度の処分が下されるべきですが、ついに、お咎めはありませんでした。支社長のみならず、本社の対応もまた、私を傷つけました。

 今となって私ができるのは、支社長及び本社を呪詛し続けることだけです。

 できることなら、六条御息所のように、自覚のないまま生霊となって、加害者に祟りをなしてみたいものです。

パワーハラスメントの本


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