昨夜は、当代の作家で私が最も偏愛する、恒川光太郎の最新作を一気に読みました。
滅びの園です。
相変わらず平易な文章で美しく切ない世界が繰り広げられますが、今作はSF的要素が大きかったように思います。
突如上空に現れた未知なるもの。
そこには、穏やかで美しい、想念の世界が広がっています。
なぜかそこに住むことになった鈴上という男の目線で、甘美な世界での生活が描かれます。
しかし、未知なるものの影響か、地上にはプーニーと呼ばれる不定形生物が爆発的勢いで増殖していきます。
プーニーに対する耐性が弱い人間は、それに触れただけで死んでしまいます。
プーニーに対する耐性が高い者は、これを退治するために活躍します。
プーニーを根絶させるには、未知なるものの核を破壊するしかないと考えられています。
しかし、核とは何なのか、最後まで明かされません。
想念の世界で生きる鈴上の存在が人類滅亡の危機を救うと考えられ、次元移動装置を使って、何百人もの人が、未知なるものに突入していきますが、生還できた者は一人もいません。
そして、甘美な生活を送る鈴上は、地球から突入してきた英雄たちと対立することになるのです。
ラストはほろ苦いものです。
鈴上の最後のセリフ、誰もが当たり前の美を生きている、という言葉は、胸を打ちます。
鈴上はどうなったのか、人類は滅んでしまうのか、はっきりしないまま、小説は終わります。
夜市や風の古道で見られたような詩的な美しさと、スタープレイヤーやヘブンメイカーで見られたような豊かな物語性が、うまくミックスされているように感じました。
ただし、そのどちらか一方を偏愛する読者には、中途半端に感じたかもしれません。
私にとっては、これまでの恒川作品がそうであったように、とても愛おしい小説です。
あぁ、早くも次回作の刊行が待ち遠しく感じられます。