ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

突然の退職

2018年02月28日 | 精神障害

 私のことではありません。

 4つ年上の先輩が、突如、本日付けで退職となりました。
 とはいっても、ここ3か月ばかり、病気休職していて、本人から連絡があったものです。

 この先輩、20代の頃から、半年くらい出勤しては1年ほど病気休暇を取る、その繰り返しでした。
 普通に考えれば、心身の故障により職務に耐えられない場合、にあたり、解雇されてもおかしくない状況が続いていた人です。

 よく20年以上、うつ病に耐えながら完全復帰を目指し続けたものだと思います。
 その根性は見上げたものです。
 そしてまた、職場も完全復帰する日が来ることを信じて、根気よく雇い続けたものだと思います。

 私の職場の規則では、3年間まで、病気休職できます。
 復帰後一か月出勤すれば、振り出しにもどり、また3年間休めます。

 しかしその規則が厳格に適用されることはなく、大体は休み始めて1年も過ぎれば退職していきます。

 それにしても、いやぁな気分です。

 私も過去、8か月に及ぶ病気休暇を取ったことがあります。
 幸いにして復帰してからそろそろ丸8年、出勤を続けていますが、なんだか他人事とは思えません。

 多分管理職に引導を渡されたんじゃないかと想像します。

 その先輩、今、どういう心境でいるんでしょうね。
 晴れ晴れしているのか、鬱々としているのか。

 生きていくための方途が見つかったんなら良いですが。

 先輩の将来が明るいものであることを祈ります。

 
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スタープレイヤー

2018年02月27日 | 文学

 昨夜は恒川光太郎の長編、「スタープレイヤー」を一気に読みました。

スタープレイヤー (角川文庫)
恒川 光太郎
KADOKAWA

 これまでの作品とは、印象がずいぶん違います。

 これまではこの作者が描き出す世界は、詩的で幻想的な小品、というイメージでしたが、今作は痛快娯楽ファンタジーといった感じです。

 エンターテイメントで勝負するぞ、という作者の意気込みが伝わってきます。

 ふとしたことから、異世界に飛ばされた34歳、無職の女性、夕月。
 異世界では、10の願いを叶えることができます。
 願いをかなえる能力を持った者を、スタープレイヤーと呼びます。

 夕月が飛ばされたところは、誰もいない草原のようなところ。
 彼女は願いを使って皇居よりも広い庭を持った家を建て、のんびり暮らします。

 ある時、マキオと名乗るスタープレイヤーがやってきます。
 彼は夕月の家から馬で二日かかる場所に、ちょっとした町を作って住んでいます。

 夕月はマキオから、異世界にはごくわずかのスタープレイヤーと、スタープレイヤーが願いを使って地球から呼び寄せた多くの人々(外来民)、さらにはもっと多くの原住民が住んでいることを知らされます。

 マキオの町を訪れる夕月。

 スタープレイヤーは原住民や外来民から神のように恐れられています。

 原住民同士の戦争に巻き込まれたり、他のスタープレイヤーが築き上げた奇妙な世界を覗き見たり、冒険が始まります。

 そして、9つの願いをかなえたところで、夕月は願いを封印します。

 これまでのこの作者の作品に流れる切なくて美的な感じはあまり感じられず、その代わり物語としての面白さは抜群です。

 すでに続編を購入してあります。
 この作者の新境地を読むのが楽しみです。


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IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

2018年02月26日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 昨夜はDVDを鑑賞しました。

 「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」です。

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組/イラスト・カード付) [Blu-ray]
ビル・スカルスガルド,ジェイデン・リーバハー,ソフィア・リリス,ジェレミー・レイ・テイラー,フィン・ウォルフハード
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント



 スティーブン・キングの有名な作品ですが、原作は読んでいません。

 ホラーとして平凡な映画でした。

 ただし、少年少女の友情や淡い恋愛感情、冒険などが瑞々しく描かれており、キング作品を映画化した名作「スタンド・バイ・ミー」を彷彿とさせます。

スタンド・バイ・ミー コレクターズエディション [SPE BEST] [DVD]
ウィル・ウィートン,リバー・フェニックス,コリー・フェルドマン,ジェリー・オコネル
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

 怖くはありませんでしたが、中年のおじさんを、しばし、ノスタルジーの世界に引き込む力はあったように思います。


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南の子供が夜いくところ

2018年02月25日 | 文学

 今日はひどく寒いです。
 スーパーに買い物に行った他は、暖房の効いた自宅で静かに過ごしています。

 小説を読みました。
 恒川光太郎の連作短編集「南の子供が夜いくところ」です。

南の子供が夜いくところ (角川ホラー文庫)
恒川 光太郎
角川書店(角川グループパブリッシング)

 一家心中寸前まで行った親子が、20代にしか見えない、しかし120歳だと自称するユナという不思議な女に導かれ、タカシという少年と両親、それぞれが別の島で暮らし始めます。

 タカシが暮らすことになったのは、トロンバス島という南の島。

 トイトイ様という木の精や、ヤニューという魔物、フルーツ頭と呼ばれる頭部が様々な果物で出来た人々が住むフルーツ・タウンなど、不思議で魅力的な夢物語が繰り広げられ、惹きこまれました。

 最近この作者の作品ばかり読んでいますが、もっと読みたい、という感じです。


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デッド・フレンド・リクエスト

2018年02月24日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

   お昼を食べてから昼寝を楽しみ、性懲りもなくまたホラーを鑑賞しました。
 これはなかなかの快作でした。

 「デッド・フレンド・リクエスト」です。

デッド・フレンド・リクエスト [DVD]
アリシア・デブナム=ケアリー,ウィリアム・モーズリー,コナー・パオロ,リーゼル・アーラース
ポニーキャニオン


 


 フェイスブックらしきSNS上の友達が800人以上で恋人もいる大学生のローラのもとに、友達が0人の同級生マリーナから友達リクエストが届きます。
 ローラが承認すると、マリーナはしつこく付きまとうようになり、閉口したローラが友達リストから削除すると、マリーナは自ら命を断ち、しかもその様子の動画をSNSにアップします。

 それ以来ローラは、悪夢に悩まされるようになった上に、友達が次々と亡くなる悲劇に見舞われ、というお話。

 テンポが早く、小気味いいのが快感です。
 また、パソコンやスマホを落とした状態の黒い画面を、魔術などで使われる黒鏡に見立てているのも初めて見る演出で、興味深く見ることができましたね。
 テレビ画面から貞子が抜け出てくる「リング」ほどの強烈さと目新しさは無いですが。

 ローラが死の連鎖を止めるため、マリーナの素性を調べ、その恐るべき過去に戦慄しながらも、はるか田舎町に出かけていく、というストーリーは、Jホラーの金字塔、「リング」を彷彿とさせます。

リング [DVD]
鈴木光司,原正人,高橋洋
ポニーキャニオン

 残酷シーンは抑え目で、心理的な恐怖をかきたてていきます。

 ラストはローラが友達をすべて失い、マリーナそっくりの状態になって、SNSで友達を求める、という、ループのような感じになっています。

 久しぶりに夢中になって観ることができました。


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フェブラリィ ~消えた少女の行方~

2018年02月24日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 朝っぱらからホラーをDVDで鑑賞しました。

 「フェブラリィ 消えた少女の行方」です。

フェブラリィ -消えた少女の行方- [DVD]
エマ・ロバーツ,キーナン・シプカ,ルーシー・ボーイントン,ローレン・ホリー
Happinet

 


 寒々しい2月の全寮制の高校。
 休暇に両親が迎えに来ず、寮に残った上級生のローズと下級生のキャサリン。
 そして、精神病院を抜け出した謎の女性、ジョアンナ。

 この3人の女を軸に、物語は薄暗く、雪深い学校を舞台に静かに進みます。

 やがて、ローズとジョアンナの物語と、ジョアンナの物語は時間軸がずれていることが分かります。

 ジョアンナの物語は、女子高生二人の物語の9年後。

 真冬の寮で狂っていくキャサリン。
 サイコ・スリラーなのかと思っていたら、オカルトっぽくなったり、また説明っぽい描写が無くてただ映像を提示する手法なので、分かりにくいことこの上ありません。
 そのうえ、テンポが遅く、中ダレします。

 まぁ、美女が3人登場することと、思わせぶりな雰囲気を楽しむだけの作品です。

 なかなかホラーの名作に当たりませんなぁ。 


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さみしい、よろしい

2018年02月23日 | 文学

 その昔、テレビCMで、「亭主元気で留守がいい」というコピーが流行ったことがあります。
 また、私の同僚や先輩でも、妻が留守の休日は最高だ、と公言して憚らない人がいます。

 そういうの、気持ちは分かりますが、あくまでも、一時的に一人の時間を楽しめるということであって、ずうっと一人でいるわけではない、ということが条件になっています。

 ずうっと一人だと、退屈するような気がします。

 孤独を感じさせる文学者はたくさんいますが、まず、頭に浮かぶのは、自由律の俳人、種田山頭火と尾崎放哉でしょうねぇ。

 山頭火に以下のような句があります。

 やっぱり一人はさみしい枯草

 やっぱり一人がよろしい雑草

 山頭火にとって、一人はよろしくてさみしいものだったようです。

山頭火句集 (ちくま文庫)
村上 護
筑摩書房

 山頭火という人、一度は妻子を持ちながら、中年に至って妻子を捨て、無一文の乞食となって、行乞の旅を続けながら句作を続けた人です。
 同じ自由律の俳人で、ほぼ同時代に生きた尾崎放哉は、一度は保険会社の重役にまでなりながら、世を捨て、田舎の寺の庵などで静かに暮らしました。

 動の山頭火、静の放哉、などと言われます。

 共通しているのは、自由律の俳人だったというだけでなく、大酒のみであったことと、孤独な生活を送ったことです。

尾崎放哉全句集 (ちくま文庫)
村上 護
筑摩書房

 二人は同時代人で、面識こそありませんでしたが、雑誌などで互いの存在を意識しており、放哉が、

 咳をしても一人

 
と詠めば、山頭火は、

 鴉鳴いてわたしも一人

 
と応えるような仲でした。


 私は若い頃、都会での隠遁的生活、ということに漠然と憧れを抱いていました。
 完全な隠遁は不可能ですから、生きるために最低限必要な給料をもらえる職を得て、都会の片隅で一人ひっそりと生きる、という。

 今の時代、隠遁には都会が相応しいと思います。
 隣近所の付き合いもないし、人に紛れていれば、目立つこともありません。
 それに、山中の庵では不便で仕方ありません。

 それは現代社会で出来る、山頭火や放哉のような隠遁的生活の方法であろうと思ったのです。

 一般的に気楽だと言われる木端役人になって、千葉市という衛星都市で一人暮らしを始めた時は、理想の暮らしなのかな、と思いましたが、あにはからんや。
 もらい事故のような仕儀で入籍してしまい、また、気楽であったはずの仕事も、小泉改革により地獄を見せられて、精神障害を発症してしまいました。

 うまくいかないものですね。

 今さら離婚するのも面倒くさいし、一人暮らしも寂しいし、仕事は配属される部署によって天国だったり地獄だったりで、あなた任せにせざるを得ないし。

 山頭火や放哉にしたって、おそらく当時、ごく一部の自由律俳句の愛好者以外から見れば、ただの乞食、人生の落伍者に見えたでしょう。

 現代を生きる私で言えば、仕事を辞めて離婚して、6畳一間のアパートに移り住んでアルバイト生活を送る、みたいな覚悟が必要だったのではないでしょうか。

 今の私に、そんな覚悟はありません。

 ただ漠然とした憧れは、今も熾火のように私の胸中深くに潜んでいます。
 
 さみしい、よろしい生活への憧れは、生涯持ち続けるのでしょうね。


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うつ病患者の言葉使い

2018年02月22日 | 精神障害

  お昼休み、インターネットを見ていたら、興味深い記事を見つけました。

 うつ病患者には特有の言語的特徴がる、というのです。

 一つは、一人称の多用。
 うつ病に罹患すると、俺が俺が、じゃないですが、自分の世界に閉じこもり、他者に興味を示さなくなるのではないか、という説と、元々自分中心に物事を考えがちな人がうつ病に罹患しやすいのだ、とする説があるそうです。

 原因と結果がどういう関係にあるか分からない、ということでしょうか。

 もう一つは、絶対に、とか、必ず、とかいった言葉を多用する傾向にあるということ。
 白黒をはっきりさせたがる、ということのようです。
 こちらも原因と結果の関係は不明とのこと。

 自分のうつ状態の頃を振り返ってみても、自覚的にはそういった言葉を多用していたという自覚はありません。

 ただ、自分の性格を分析してみると、確かに自己中心的で、白黒をはっきりさせたがる、という傾向は、子供の頃から強かったように思います。
 また、今、寛解している状態ですが、やっぱり自己中心的で白黒をはっきりさせたがる、という傾向に変わりはありません。

 そうなると、うつ病に罹患すると上のような言葉を多用するようになる、と言うよりは、元々そういう言葉をよく口にする人がうつ病になりやすい、と解釈するほうが、私にはしっくりきます。

 これは子育て掲示板・学生の掲示板といった、うつ病と関係の無い人の掲示板と、不安とうつの掲示板・自殺願望掲示板をコンピューターで解析した結果得られた結論だそうです。

 コンピューターというのは怖ろしいものですねぇ。
 コンピューターによる言語解析は他の様々な精神疾患でも行われているそうです。

 そのうち精神科医はお払い箱になって、人工知能による治療が行われるようになるかもしれませんね。


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倒れる

2018年02月21日 | 精神障害

  私と同じ部署で働くパートの女性が、精神的な理由で病気休職に追い込まれました。

 今はどこもそうだと思いますが、私の職場も給料の高い正規雇用をどんどん減らし、その代わり、パートなどの非正規雇用が増えています。
 人数では、非正規雇用のほうがはるかに多い状態で、それらの人々によって職場は支えられていると言っても過言ではありません。
 で、その多くは女性で、実家住まいか主婦で、一人暮らしというのはほとんどいません。

 当たり前です。
 一人暮らしするには給料が安すぎるのです。

 そして、女性が多い職場というのは、なぜか人間関係に問題が発生しがちです。
 偏見かもしれませんが、女性ばかりで、しかも非正規ばかりとなると、仲が良いとか悪いとか、どこそこのグループだとか、誰とお昼を食べるだとか、そんなどうでも良いことが問題になるようです。

 このたび病に倒れたのは、私と同世代で、別れた夫との間に生まれた大学生の息子と、新たに付き合い始めた内縁関係の男と暮らす女性です。
 華やかで、世代のせいかどこかバブルっぽい人です。
 私は同世代ということで、何度かグループで仕事帰りに飲みに行ったり、カラオケに行ったりした仲です。

 それだけに、ショックです。

 華やかで明るい印象でしたが、じつは人間関係に深く傷ついていたようです。
 倒れる前、何度か愚痴を聞いたり相談に乗ったりしましたが、そこまで追い詰められていたとは思いませんでした。

 同じような病で苦しんだ私としては、彼女の悩みを軽く考えていたことが、悔やまれてなりません。

 内縁関係の男性は正規雇用で働いているということなので、いっそ辞めてしまう、というのもありだと思います。

 パートの職にしがみついても、5年で任期満了になって、辞めざるを得なくなるし、今度の4月で5年目に入ることから、復職しても任期は残り1年ほど。

 健康を第一に考えれば、元の人間関係が難しい職場に復帰するよりは、心機一転、新しい職を探すほうが良いような気がします。
 
   今のところ、メールを打っても返事が来ません。

 仲の良かった他のパートがメールを出しても返事が来ないそうです。

 今はひたすら落ち込んでいるのだろうなと、自分のことのように苦しく感じます。

 同病相憐れむと言うとおり、精神的な理由で休む人がでると、私の気持ちまで沈んでしまいます。


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金色の獣、彼方に向かう

2018年02月21日 | 文学

 昨夜は恒川光太郎の短編集、「金色の獣、彼方に向かう」を読みました。

金色の獣、彼方に向かう (双葉文庫)
恒川 光太郎
双葉社

 「異神千夜」・「風天孔参り」・「森の神、夢に還る」・「金色の獣、彼方に向かう」の4作品が掲載されています。

 それぞれ独立した短編ですが、唯一、イタチに似た妖しい獣が登場するところに共通点があります。

 「異界千夜」は元寇の前後を描いた時代作品。
 南宋、対馬、博多あたりを舞台にした壮大な作品で、内容的には長編時代ファンタジーのような読後感です。
 この作者の作品は、切なく美しい幻想文学がほとんどなのですが、この作品は、元の蛮行を恨む女の怨念や、彼らと行動をともにしながら、ついには裏切らざるを得ない男の苦悩などが怖ろしく、ゾッとさせられました。
 
 「風天孔参り」は、ある山の登山口近くでレストランを営む50代の男が遭遇する不思議な物語。
 ある時女子大生が客としてやってきて、従業員として居つき、彼女の口から風天孔参りの話を聞きます。
 山中に突如小さな竜巻が起き、そこに飛び込んだ人間は天に消えてしまうとかで、限りなく自殺に近い、風天孔参りをする集団がある、と。
 そして女子大生は風天孔参りに参加してしまい、それを追った50代の男の運命やいかに、というお話。

 「森の神、夢に還る」は、あらゆる生き物に憑くことができる森に住む「私」が、森の近くの駅でナツコという女性に憑き、上京して様々な経験をする物語。
 ナツコと「私」の関係性が哀れを誘います。

 「金色の獣、彼方に向かう」は、川っぺりの家で暮らす少年がイタチに似た奇妙な生き物を見つけ、それを飼い始めるところから物語は始まります。
 イタチに興味津々の川向うに住む少女との交流が描かれますが、恋心とかそういうものとは無縁です。
 少女はイタチを使って、暴力をふるう義父を亡き者にしようと企んでいるのです。
 また、川原のあちこちに墓を掘る、猫の墓堀人と呼ばれる老人、イタチを操る鼬行者など、興味深い存在について語られます。

 これで7冊連続で恒川光太郎作品を読んでいます。
 今刊行されている恒川作品で未読なのは3冊のみ。
 すでに購入してあります。
 あと3冊読んだら新刊を待つしかないというのは寂しい感じがします。

 この作者の作品にはハズレがなく、どれも楽しい読書体験であるとともに、どの作品にも、この世の存在、異界の存在、ありとあらゆる存在そのものが根源的に持つ切なさみたいなものが感じられ、それは一種の痛みでもあるわけですが、心地よい痛みとでも呼ぶべきものです。

 私は心地よい痛みを感じたくて、この作者の幻想的な作品群を読み続けているのかもしれません。


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築19年

2018年02月20日 | その他

 新築で購入した、今私が住むマンションですが、築19年ということで、最近さかんにリフォームを勧めるチラシが入るようになりました。
 特に風呂場や給湯器などは、いつ壊れてもおかしくないほどの年数なんだそうです。
 しかし、普通に使えているものを大枚はたいてリフォームする気が起きません。

 リフォームというほどではないですが、数年前、キッチンの換気扇をまわすと異音がするようになったため、最新式の物に取り換えました。
 たかが換気扇で、13万円もかかりました。
 風呂場のリフォームなんて、いくらかかるのでしょうね。



 我が家は19年前に入居した時から、ずうっと二人暮らしですが、お隣には子供が二人いて、元気な声で挨拶してくれる幼稚園児がランドセルしょった小学生になり、制服を着た中学生になり、高校にあがり、いつの間にか二人とも見かけなくなりました。

 大学生だか社会人だかになって親元を離れた 19年という時間の長さを感じます。

 私と同居人、ずうっと二人で暮らしているためか、あんまり時間が経った感じがしません。
 独身で一人暮らしだったら、もっとかもしれませんね。

 私が精神障害を発症したり、実家の父が亡くなったり、様々な部署に異動したり、色々あったことは確かなのですが、子供の成長ほど劇的に時の流れを感じさせるものはありますまい。

 実家に帰れば、甥は大学生と中学生、姪は高校生です。
 甥や姪と会う時だけは、年月が経ったなと、実感させられます。
  
 生涯独身で一人気ままに生きていこうと、20代前半くらいまでは漠然と考えていました。
 結婚なんて面倒くさい、と。

 なぜ付き合っていた同居人と28歳で入籍に至ったかと言えば、両家の親からのプレッシャーに耐えられなくなった、としか言いようがありません。

 しかし入籍して、式や披露宴もしてみて、紙きれ1枚でこれほど社会的に祝福されるだけでなく、様々な特典があるのかと、驚かされました。

 マンション購入の前、新婚の頃1年ちょっと済んだ3DKの官舎、おそろしく家賃が安かったのですが、これ、独身だと借りられません。
 狭い独身寮にさせられてしまいます。

 我が家は共働きですが、専業主婦だったら、扶養手当というのが結構な額もらえます。

 入籍すると様々な特典があるのですね。

 それだけではありません。
 二人で暮らすことに抵抗感を持っていた私ですが、一人暮らしにはない楽しさがあります。

 ヤマアラシのジレンマ、というのをご存知でしょうか。

 ヤマアラシは皮膚に針があるため、近づきたくても一定の距離になると刺さってしまって近づけない、ということです。
 社会性と個ということを端的に表したものかと思います。


 人間はどこまでいっても社会的な生き物。
 他者との関係性の中でしか生きていけません。
 例え隠遁したとしても、完全に一人で暮らすことはできますまい。
 食料や電気などのインフラで、必ずだれかとつながっているはずです。

 マンションに入居してもうすぐ19年、入籍して6月で20年。
 成長しない私と同居人です。

 せめて、人との繋がりは大切にしつつ、無駄な付き合いは断って、生きていきたいと思います。


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竜が最後に帰る場所

2018年02月18日 | 文学

 今日は快晴ながら、北風が強く、ひどく寒い一日でした。
 スーパーに買い物に行った以外は、家で大人しく読書などして過ごしました。

 恒川光太郎の短編集を読みました。

 「竜が最後に帰る場所」です。

竜が最後に帰る場所 (講談社文庫)
恒川 光太郎
講談社

 5つの短編が掲載されています。

 どれもこの作者らしい、不思議で切ない物語でした。

 わけても最後の「ゴロンド」という作品には深い感銘を受けました。

 ゴロンド(考える者)という名前の竜の一生を、詩的に描いた作品で、長い年月の流れを感じさせます。

 最近、この作者の小説ばかり読んでいます。

 ド嵌まりに嵌まった感じです。

 50歳近くなって、新たな出会いがあったことを、とても嬉しく思っています。


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祝 フィギアスケート 金銀獲得

2018年02月17日 | その他

  今朝は久しぶりに早朝覚醒してしまいました。
 躁状態の頃は毎日でしたが、じつに久しぶりに4時に目覚め、もう眠れませんでした。

 まだ暗い街を1時間ほども歩き回り、朝湯につかって飯を食ったら、また眠くなり、6時から7時くらいまで眠りました。

 ぼんやりテレビなど観て過ごしました。

 そして、今日のお祝い事をライブで見つめたのです。

 ユズユズとショーマ。

 圧巻の滑りで、見事金と銀のメダルを獲得。

 ここに到るまで、二人にはどれほどの試練があったのでしょうね。

 二人が日の丸を掲げてリンクをまわる姿に、深い感動を覚えました。

 おめでとう、ユズユズ、ショーマ。


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金色機械

2018年02月16日 | 文学

  昨夜、またもや恒川光太郎の小説を読みました。

 今までは、短編か、せいぜい中編程度の分量の作品ばかりで、長い物は書かないのかなと思っていましたが、文庫本で470頁を超える長編、「金色機械」です。

金色機械 (文春文庫)
恒川 光太郎
文藝春秋

 江戸時代、極楽園とも鬼御殿とも呼ばれる山中の賊のお屋敷で育ち、門番の小僧から大遊郭を任されるまでになった熊悟朗。
 彼は人の殺意を見抜く能力を持っています。
 そして人に素手で触れるだけで安楽死させる能力を持つ女、遥香。
 さらには謎の存在、金色様。
 金色様は金属でできたロボットのような存在ですが、心を持ち、しかも無敵といってよいほど強力です。

 章ごとに時代や主人公が異なり、少々戸惑いますが、やがてそれらは繋がり、一つの物語として完結します。

 石川淳の「至福千年」を思わせるような、江戸伝奇ロマンといった趣で、読ませます。
 抜群に面白い小説で、終わりが近づくと、読むのが惜しいような気分になります。

至福千年 (岩波文庫 緑 94-2)
石川 淳
岩波書店

 これは熊悟朗や遥香の成長の物語であるとともに、善も悪も併せ持つ人間というものの業を描き出した作品です。

 金色様というのは月から来た、という設定になっていますが、もしかしたら未来から来たのかもしれません。

 金色様を狂言回しに、200年近い物語が語られ、神話的でさえあります。

 短編や中編に見られた詩的な感じはなく、豊穣な物語に仕上がっています。

 ちょうど、村上龍が「限りなく透明に近いブルー」「海の向こうで戦争が始まる」のような、詩編に似た小説から出発して、「コインロッカーベイビーズ」「愛と幻想のファシズム」のような、物語性豊かな長編を書くようになったのと似ています。

新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)
村上 龍
講談社

 

海の向こうで戦争が始まる (1980年) (講談社文庫)
村上 竜
講談社

 

コインロッカー・ベイビーズ 上下巻セット (講談社文庫)
クリエーター情報なし
メーカー情報なし

 

愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)
村上 龍
講談社

 

愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)
村上 龍
講談社

 熊悟朗が成長とともに身につけるニヒリズム、安楽死させる能力を持つが故に善とも悪ともつかぬ殺人を犯してしまう遥香の苦悩、そして、自分が何者なのか分からぬまま、かつて仕えた一族の末裔である賊とともに暮らし、賊が滅ぼされると遥香と行動をともにする金色様。

 誰もが悪くないようでいて、しかし全員が悪人のようにも思えます。

 そして、涙なしには読むことが出来ないラスト。

 私はこれまで、この作者の詩的な短編や中編を偏愛してきましたが、長編伝奇ロマンもなかなかのものです。

 是非、ご一読ください。


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凡人の生

2018年02月15日 | その他

   昨日、今日と、あまり仕事がありませんでした。
 急ぎではない仕事はありますが、そういうのはやる気が起きません。
 なんとなく、過去の資料など眺めて時間をつぶしました。

 こういう日が、時折あります。

 まぁ、事務職ですから、時季により、忙しいこともあれば暇なこともあります。

 今年度が終わると、就職から丸26年が過ぎたことになります。

 新人の頃から、辞めたい辞めたいと、ずうっと思い続けていますが、今更転職など思いもよらず、ダラダラと仕事を続けています。
 木っ端役人ですから、当然給料は安いですが、同居人と共働きのうえ、子供がいないので、裕福ではありませんが、さりとて生活に困るということはありません。
 生活の安定、ということだけを考えて選んだ職ですから、生活に困るようならすぐにでも辞めたのでしょうが、なんとなく人並みに生きられるため、辞める勇気がないままここまで来てしまいました。

 もう転職を考えることも、かつてのようにプロの小説家を目指してせっせと執筆することもありません。

 このまま惰性で定年まで勤め上げて、わずかに老後を楽しみ、後は死を待つばかり。
 それが今思い描いてる私の将来です。
 客観的に言って、面白くもおかしくも無い人生ですが、主観的にはこれまでずいぶん色々あったし、これからも色々あるのだろうと思っています。

 人間革命を起こし、何か新しい運動を始める可能性は0ではありませんが、おそらくはないでしょう。

 今は堂々たる凡人としての生を全うし、凡人の王として生涯を終えたいと思っています。

 


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