5年前、日本マクドナルドが定年制を廃止し、当時大きな話題になりました。
すなわち、年金支給年齢が引き上げられたことに対する対応であるとともに、働く意欲のある人を年齢だけで退職させるのは不合理だ、という意見を現実的に行ったものであり、概ね好意的に受け入れられました。
しかし、このたび日本マクドナルドは来年1月から60歳定年制を復活させる、と発表しました。
定年制廃止の時と違ってたいしたニュースにはならず、ひっそりとしたものです。
しかし、これは重要な示唆に富んでいます。
日本マクドナルドは定年制廃止に伴う最大のデメリットとして、年配の社員が若手の育成よりも自身の成果を上げることに力を注ぎ、年配社員が持っている経験やノウハウを若手に伝えることがなくなってしまったことを挙げています。
よく外資系の企業などでは、新人や転職して入社してきた者に対し、前からいる社員が仕事を教えない、という噂を耳にします。
下手に仕事を教えて自分の仕事が無くなり、クビにされたら困る、という心理が働くようです。
元をただせば年功序列を廃し、実力主義で成果を上げようとした定年制廃止。
見事に外れたようです。
わが国は戦後長期に渡って多くの会社や役所が年功序列の人事と賃金体系を採ってきました。
これは、誰でも真面目に働けばそこそこ出世もし、賃金も上がる、という合理的な制度であると同時に、有能なのに若いというだけで出世も賃金アップもしない、という不合理な制度でもあります。
ただ、圧倒的多数の人は凡庸であることを考えれば、凡人に優しく、多数者に優しい制度であるといえます。
年とともに賃金が上がると思えばこそ、結婚もし、金のかかる出産・育児もし、長期ローンを組んで住宅を購入しようという意欲も湧いたわけです。
しかし今、日本の雇用形態は様変わりし、金のかかる正社員を少数に押さえ、安価な労働力を求めて非正規雇用が激増しています。
日本マクドナルドの定年制復活は、この文脈でとらえなければなりません。
つまり日本マクドナルドが主張するデメリットもさることながら、高給の正社員を60歳過ぎてまで雇っていられるか、ということでしょう。
成果主義や実力主義よりも、安価な労働力が欲しいという会社の言い分はよくわかります。
私が経営者でもそうするでしょう。
そして数少ない正社員は荷重なストレスに耐えながら絶対に勝てない賭けとでも言うべき年金の掛け金を払い続け、非正規社員はリストラの恐怖に怯え、将来への展望を開けないというわけで、わが国の若者が将来を悲観したり、団塊の世代を恨んだりするのも故なしとしません。
では私たち現役世代はどうすれば良いんでしょうね。
建前をいえば、職場では真面目に働き、家庭での責任を果たし、地域社会での役割も担い、選挙権を行使することによって政治に参画していく、という以外にありません。
しかし正直なところ、私はいつまでも勝てない賭けを続けるのはうんざりです。
もう6代も前になる小泉劇場がなつかしくすら感じます。
小泉元総理が行った政策の是非はともかく、なんとなく日本社会が明るい方向へ向き始めたような気分を味あわせてくれました。
今の大阪維新の会も閉塞感の打破にこそブームの理由があるのでしょう。
私はもはや、破れかぶれのように狂気じみたナショナリズムや、○○主義運動、過激な宗教活動への渇望を抑えることが困難です。
建前よりも、このモヤモヤを吹き飛ばしてくれる過激なカリスマを待っています。
それが現れたのなら、私はその理屈や教えは抜きにして、その過激さを愛でたいと思っています。
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