新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

第33回「青天を衝け」 蚕卵紙買い入れ焼却の補足

2021年11月02日 | テレビ番組
「青天を衝け」が城山三郎『雄気堂々』と同じような内容で進むので、また読み直しています。ドラマのキャストを当てはめて読むと面白さが倍増しました。この本から少し補足しておきます。

幕末以来、優良な蚕卵紙は日本の重要な輸出品でした。その蚕卵紙が過剰生産に陥り横浜の混乱ぶりは大変なものでした。蚕卵紙は150万枚運び込まれているのに、外国の商人は値崩れを待って買い控えているのです。
頭を悩ませた政府は「こういうことは渋沢にたのむ他ない」と、退官していた栄一に出馬を要請してきました。

栄一が提示した解決案には詳しい計算の裏づけがありました。政府が蚕卵紙の原紙を蚕種農家に払い下げた時の収入が85000円で、それを使う。養蚕農家から吸い上げた金を、今回にかぎり彼らに戻してやるという考え方です。
当時の国家の財政規模は5000万円。栄一は政府の金だから敢えて枠を作り上限を越えないように考えたのです。
運び込まれた蚕卵紙のうち40~50万枚買い上げて、85000円をそれで割ると1枚あたり17~21銭。今は5銭で買い叩かれているので荷主には文句ない値段である。買い取った蚕卵紙は需給バランスをとるために焼却するという荒療治。
それを、自由貿易を口にする外商は、政府が口出しするとかえって袋叩きにかかるので、横浜の商人の発意と資金でやると見せかけることでした。
積み上げた蚕卵紙の山に火をつけると巨大な火柱になりました。
蚕卵紙を正当な値段に戻すために余剰分を焼く・・・、これまでの日本が経験しなかったことで、時代を区切る新しいことが始まったのでした。
毎日焼却が続き20日も経てば買入相場が国益が見えるほどに回復してきましたが、まだ栄一は手綱をゆるめません。

栄一が買い入れ打切りの指令を出したのは42日目のことで、45万枚に及びました。これまで外人に5銭で買い叩かれていたのが、上物で60銭、下等品でも30銭で売れるようになりました。

この余剰蚕卵紙の買入れ焼却は、政府支出金の何倍もの外貨を稼ぐというめざましい国益を得たし、民業にも大きな自信を植えつけることになりました。栄一の細かい計算と、時宜を読む能力の賜物でした。

この日の放送だけで、西郷隆盛、三野村利左衛門、大久保利通が亡くなりました。三人を演じた俳優が、とても存在感のある個性的な人物像を作り出していました。
ドラマには出なかったけど木戸孝允も同じ時期に亡くなり、「維新の三傑」と言われた西郷・大久保・木戸が1年の間に立て続けに亡くなったことになります。



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