新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

澤田瞳子『満つる月の如し 仏師・定朝』と 24年NHK大河「光る君へ」

2022年05月29日 | 本・新聞小説
友達から回ってきた本で、ベッドで仰向けになって読むには重量的にアウト。2013年新田次郎文学賞受賞。中身もずしりと密度が濃いので座位でメモをとりながら読まないと混乱します。

定朝は平安期を代表する仏師、平等院鳳凰堂の国宝阿弥陀如来像は彼の手になるもの・・・ぐらいの知識しか持ちませんでした。定朝が製作したほとんどは火災や戦乱で失われたと言うのに、この本の分厚さにストーリーがどう進んでいくのか想像がつきませんでした。

定朝と貴族の交流、貴族たちの勢力争い、それも皇室にどう食いこんでいくかの人物相関図の複雑さ、仏像の文学的表現、弘徽殿の彰子と女房たちの華麗な交友関係、平安の館や乗り物の具体的描写、下層民の暮らし・・・と資料の読み込みが半端でないところに著者の意気込みを感じます。
メインの登場人物が全部実在の人物です。架空の人物を登場させてストーリーを面白く展開させる…という常套手段でなく、実在です。
登場人物の多さと複雑さから、メモや相関図を作りながらでないと話の筋が頭に入ってきません。

折から、24年NHK大河ドラマ「光る君へ」の発表がありました。紫式部が主人公なら道長や彰子を中心とした貴族の世、この本と同じ背景になります。
果たしてこの絵巻のような平安貴族の話に、男性の視聴者を得ることが出きるのだろうか・・・、とふと思ってしまいました。

当時の貴族層において『恋愛を謳歌し、その感情を歌や物語に托して憚らない時世だけに、後宮の風紀の乱れはことに著しかった』のはかなり想定外でした。
ここを抑えておけばかなり面白く見られるはずと、殴り書きのメモを見やすく書き直しておきました。

それにしても道長の手腕が凄い。4人の娘を中宮や夫人に。娘の生んだ孫が3代にわたって天皇になると外祖父として権勢をふるいます。しかし満月はいつかは欠けるものです。
この本のタイトル「満つるが如し」が道長の野望が満月に達したことかと思っていたら違っていました。まぁ、そのことも暗に含んでいるのかもしれませんが。

阿弥陀如来像を見た養子・覚助が『吸い込まれそうなほど深い慈しみを湛えた眼差し、微風に翻るかと見まごう軽やかな衲衣・・・まるで、満つる月が如き尊容でございますな』とつぶやいた言葉からとったもののようです。
定朝が望んだ仏像も『地の底から静かに湧き出る泉にも似た静謐さ、身の内に充満した穏やかな生命の息吹の如く、やさしく繊細な丸み・・・・満月のごとく作らねばならぬ』ものでした。

澤田瞳子さんの本は『若冲』に続き、これが2冊目でした。

🐟️ 🐟️ 🐟️ 🐟️ 🐟️ 🐟️ 🐟️
お昼ごはんはしらす丼。ご飯が100gだと、丼はあっと言う間に終わってしまいます。
「まだ入るよ。何かデザートないの?」
「梅ヶ枝餅ならあるけど」
「おぉ、ベストだな」
薄皮の太宰府の梅ヶ枝餅はいつ食べても嫌みがありません。

コロナでさっぱりの太宰府は梅ヶ枝餅が売れずに、冷凍品として市中に出回るようになりました。
お陰でと言うと語弊がありますが、太宰府まで行かなくても、いつでも食べられるようになりました。



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