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個人が起こすプルの革命 変化のきざし

『「PULL」の哲学』より

前にも触れたように、変化は「個人」「組織」「社会」の三つのレベルで順を追って起きていく。そして、プッシュ型からプル型に変化していく過程で、「軌道」「レバレッジ」「ぺース」という三つの要素が見えてくる。プッシュからプルヘと変わるときは、個人も、組織も、そして社会全体も、この三つの要素に導かれて進んでいくことになる。

まず最初に行うのは、自分の進む先を決めることだ。目標地点が決まっていないと、同じ場所をぐるぐる回ってしまうかもしれないからだ。進む方向を決める、それが「軌道」だ。

軌道が決まっていれば、自分のやるべきこともわかってくる。今のように変化の激しい時代は、とかくリソースを広く浅く分散してしまいがちだが、目的地がはっきりしていれば、いちばん大切な場所にリソースを集中させることができるだろう。変化の時代でいちばん気をつけなければならないのは、身の周りで起こる変化に対応するだけで精一杯になり、自分にとって重要な変化を見分けられなくなってしまうことだ。

進む方向がはっきり決まっていれば、それが周りにも伝わり、同じような方向を目指している人たちを引き寄せることになる。軌道の段階では、つねに自分の情熱がガイドの役割を果たしてくれるだろう。

次の「レバレッジ」の段階では、プルの力を利用して、他の人たちとつながることになる。周りの人から必要な知識を手に入れ、彼らと協力してその知識を活用していく。

レバレッジとは「てこの作用」という意味で、つまりすべてを自分一人の力でやらなくてもかまわないということだ。競争が激化し、それにつれてプレッシャーがどんどん大きくなる今の時代、人間関係のレバレッジを活用すれば、コストをかけずに多くのことを達成できるようになるだろう。

変化が加速する時代、「ペース」があれば自分も迅速に動くことができる。もちろん、ペースにはレバレッジも関係してくる。レバレッジがあれば、新しいことを学ぶのに余計な時間をかけずにすむからだ。

しかし、レバレッジの働きでさらに重要なのは、新しい知識を創造するベースを上げることだ。新しい知識を持っている人は、戦略的にかなり優位に立つことができる。

軌道、レバレッジ、ペースの三つの段階は、この順番で起こるのが自然な流れだが、並行して起こすこともできる。とりあえず、旅の最初に決めるのは軌道になるだろう。自分の方向性がわかれば、どこでレバレッジを手に入れればいいかもわかる。また、軌道が決まっていれば、参加するネットワークを選ぶこともできる。

しかし、旅に出発してからは、軌道、レバレッジ、ペースを並行して行っていくと効果がさらに大きくなる。レバレッジを手に入れようとしているときに新しい発見があれば、それが軌道の修正につながっていくこともあるだろう。ペースを上げようと努力していると、参加したほうがいいネットワークが他にも見つかるかもしれない。三つの要素は、相互関係の中でいろいろと変化していくのである。

この章の残りでは、三つの要素を活用して変化の時代を生きていく方法について説明しよう。三要素をうまく使えれば、自分から変化を起こすことができる。変化の時代を「切り抜ける」のではなく、自分から道を切り拓いていける。自分か主導権を握れば、変化のストレスに苦しむことはなくなり、心が穏やかになるだろう。そして退屈が情熱に変わるはずだ。

もちろん、簡単な旅ではない。さまざまな困難に直面することもあるだろう。自分の快適空間から外に出なくてはならないし、大きなリスクも取らなくてはならない。そしてもちろん、新しいことを始めるのだから、いつか大きな失敗もやらかすだろう。

生まれ変わったあなたを見て、友だちや同僚の中には、離れていってしまう人もいるかもしれない。それに、昔ながらの安定した生活にさよならすることになるので、どこか不安や寂しさを覚える人もいるだろう。

しかし、ほとんどの人はもう気づいている。ここまで来てしまったら、もう後戻りすることはできない。昔の時代に帰ることはできないのだ。

頭ではわかっていても、気持ち的に受け入れられないという人もいるだろう。そういう人が、本能的にソーシャルメディアやデジタル文化を毛嫌いする。「ブログなんてただの時間のむだ遣いで、大切な仕事を先延ばしにしているだけだ」。これは、私たちの友人の、ある学者の言葉だ。
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