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西方に向けられた緊張

『ロシア・中央アジア』より バルト諸国、強固な独立

「愛知万博でリトアニア館に20回ぐらい、行った。興味深い国です」

ベラルーシとは違って、バルト諸国は1991年以前にも独立、いや歴史的な黄金時代さえ経験していた。これらの国々は、先の大戦。旧ソ連軍・ナチスの侵略、それに引き続く抑圧・政治犯の収容という苦々しい記憶を引きずっており、かなり早いうちに独立要求が公然と表明されていた。1988年以降、国歌と国旗が変更され、リトアニア議会が翌89年5月18日に共和国主権を宣言した。同年8月23日にベルリンの壁崩壊以前に、600kmにわたる人間の輪がタリンからリガを経てヴィリニュスに至るまで3つの民族を繋ぎ、ソ連に挑戦した。3つの共和国とも1990年の2月から5月の間に独立を宣言し、4月には共同市場を成立させた。ゴルバチョフは封鎖によってしか対抗することができなかったが、人々はゴルバチョフに、軍隊を使った暴力的な介入やヴィリニュス市民の死者をほとんど許さなかった(翌91年1月11日から13日)。これは、ゴルバチョフの本当の意味での失墜と、連邦の崩壊に大いに貢献した出来事である。これらの国々の独立は結局、現実には1991年8月のクーデター以降に回復されたのだが、バルト諸国は、独立国家共同体(CTS)の加入に全面的に、しかも猛烈に反対した。そして、自分たちは西ヨーロッパに属していることを執拗に示すため、モスクワに背を向け、ヨーロッパ連合への加盟を求めた。そして待った甲斐があって、95年7月12日に、これに加盟したのだった。

このような毅然たる態度は何十年来の不幸とフラストレーションによって説明されうる。しかしそれでも、そのことは自明というわけでもないし、障害がないというわけでもない。そのことは、独立の指導者を崇め奉った後、この3国の有権者たちは、危機的状況にひるんで、独立の指導者からかっての共産党エリートにあっさりと乗り替えてしまったことで証明される。裏切り、恩知らず、不安、保守主義、見知らぬものに対する恐れ、強力な隣国の機嫌を取りその仕返しを避けようという態度、さらには西側諸国は爪先でしか歩みよらないのに対し、通商を続けるためにロシアの好意を得ようという態度、彼らの振舞いには、おそらくこうしたことすべてが含まれている。こうしたことはまた、政府要人が世界の金融体制に興味本位に煽り立てられて、理性的というよりイデオロギー的に、しかも何の用心もなく、直ちに導入しなければならないと信じ込んでいた、野蛮で勇ましいだけの新自由主義による荒廃が同様に示している。あっという間に、大部分の住民は、自分たちはもう少しは「社会的な」ものをもち続けたいのだ、ということに気がついた。この明らかな回帰現象は、独立は自明であるとしても、その形態は権力者にはどうにとでもなるということ、かっての中枢機関の権力は破壊されてはおらず、その権力を強固にする最高の方法は、ブレーキのきかない資本主義の最も過激な形態を押しつけるぞ、と恫喝することであるということがわかる。

また、これら3つの国は、前体制には組み込まれていなかった管理職や政治的指導者を発掘するのに苦労していること、それに加えて、 800万人の人口のうちロシア人が今でも150万人残っていることにも言及しなければならない。かっての特権者リストの登録者は、ロシア人であれバルト人であれ、財政上のハンドルを握っており、春の森の中の空地のように花開いた銀行の大部分や、コルホーズ起源の農業会社や、さらには官僚の主要ポストを握っている。彼らが、自分のなおいっそうの保身のために部分的には経済危機を煽り立てたという可能性は排除し切れない。反対勢力も、とって代われる指導者を輩出するほどには十分構築されておらず、熟していない。戦利品に手が届かなかったのだ、さらに、1945年から49年の集団化によって奪われたすべての土地、家といった資産を、かっての所有者に回復することを主張したために、きわめて困難な状況に置かれることになった。確かに独立のおかげで、政治や行政の領域で熱意ある若者の数は増えたが、しかし彼らも旧体制の人々によって押しのけられ、改悛させられ、さもなければ環境省や観光省といった副次的な省庁のポストに追いやられはじめている。

もちろん公用語、国旗、道路標識、紋章といったなんらかの象徴的な印も必要であった。ロシアの最後の兵士が、1994年8月31日を最後にバルト三国を去った。もっともロシアは、ラトヴィアのスクルンダのレーダーのように、いくつかの機関を保持する権利を手に入れたが、それは、95年5月4日に施設の一部が見事に取り壊されてしまった
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