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日本の対外イメージ

『対立深まる南シナ海 進む日米越比協力』より

中央アジアの対日観

 中央アジアでは、対日感情は概して良好に推移してきた。

 旧ソ連中央アジアのウズペキスタンの首都タシケントでは日本人抑留者たちが国立ナヴォイ劇場の建設に1945年から46年にかけて従事した。この建設に従事したのは、タシケント第4収容所での生活を送りながら、朝8時から午後5時までの労働に従事した永田行夫氏率いる「永田隊」たった。労働を休むことができたのは、日曜日、メーデー、元日、11月7日のソ連の革命記念日の連休だけだった。食事は、穀物は籾つきで、羊肉は骨ばかり、またラクダの肉は硬くて噛みきれないほどで、じゃがいもは半分腐っていたものもあって食事の状態は決してよくなかった。

 このような過酷な環境で労働を強いられたのにも関わらす、永田隊には航空技術関係者が多く、その技術力は確かで、完成した国立ナヴォイ劇場は、1966年の大地震で夕シケント市内の多くの建造物が倒壊したが、ナヴォイ劇場はビクともせす、現地の人から日本人の技術が評価されることになった。

 2001年にナヴォイ劇場を訪問した永田氏は日本のオペうの「夕鶴」を観劇することにな0、「自分らの仕事が、たまたま後生に残るこういうものだったというのは幸運だった。もっともっとひどい仕事で苦しんだ人たちがたくさんいるのに」と語っている。

 中央アジアで最大の面積のあるカザフスタンでも日本人抑留者たちが、ウスベキスタンと同様に、カザフスタンのカラガンダ(カザフスタン北東部にある都市)にオペラ劇場「リェットニー・テアトル(夏の劇場)」を造った。 2004年に取り壊される際に市民が反対し、保存を求めたために、現在は市内の公園に一部が残されている。

 カザフスタンでも日本人抑留者たちの現地での評判はよく、勤勉で実直、礼儀正しく、仕事もできるなどの評価を得ていたようだ。また、日本人元軍医が負傷した少女を手術で救ったり、あるいは日露戦争で日本に抑留されたことがある老人が日本人に親切にされたことを収容所に語りに来たりしたというエピソードもある。

 旧ソ連での日本の先人たちのこのような努力が、この地域での日本に対する評価を高め、経済や文化を含めた日本との交流の礎を築いたという「業績」を忘れないようにしたいものだ。

 カザフスタンでは、2010年に開学したナザルバエフ大学の学長に勝茂夫・元世界銀行副総裁が就任し、理工系を中心とするこの大学は東工大など日本の大学との学術交流を進め、いずれカザフスタンの発展に寄与していくだろう。ウズベキスタン日本人材開発センターはウズベキスタンの対外経済協力センターが日本国際協力機構(JICA)と共同で2000年10月に創設された。このセンターは、日本に関心を持つウズベキスタンの経済発展に貢献する人材を育成するのが目的で、日本のビジネスマネージメントや日本語教育、また聴覚障害者たちへのコンピュータートレーニングなどが行われ、茶道などの日本文化を紹介する教室なども催されている。こうしたソフトパワーによる交流が日本と中央アジアの『絆』を強めていくことは間違いない。

大洋州地域における対日世論の現状と課題

 2014年は日本の大洋州地域外交において記念すべき年となった。安倍首相はア月にニュージーランド(NZ)、オーストラリア及びパプアニューギニア(PNG)を訪問した。日本の首相としては、オーストラリアはア年ぶり、NZは12年ぶり、PNGは29年ぶりであった。安倍首相の訪問は、大洋州の主要国との間で、安保・防衛面ならびに経済面での関係強化を打ち出す姿勢を強く示すものとなった。

 日本と大洋州地域とは、戦後長きにわたり友好関係を築き上げてきており、いずれの国も日本に対する好感度は極めて高い。NZでの各国国民イメージに関する世論調査によると、ここ10年間日本人がアジアの中で最も好感度が高く、インドや中国、韓国などに約5 - 10%の差をつけている。一方で、語学留学などを通じて急増している中国人や韓国人と比べ、日本人のNZ訪問者数は伸び悩んでおり、その高い評価と裏腹に現地での存在感は急激に低下している。

 オーストラリアでは、2013年に就任したトニー・アボット首相が、日本を「アジアにおける最良の友人」と評したように、政府レべルでの日豪関係は極めて良好である。一方、2014年に実施された世論調査では、アジアにおける最良の友人はどこかという質問に対して、最も高かったのは中国で31%を占め、次いで日本が28%であった。この数字からは、オーストラリアにおける国民レベルでの経済成長著しい中国への接近と、それに伴う日本離れの兆しが窺える。

 PNGをはじめとした太平洋島嶼国も、対日感情は極めて良好である。その背景には、ミクロネシアを中心とした戦前の委任統治時代から続く歴史的な関係や、第二次世界大戦後の独立間もない島嶼国に対して社会・経済インフラ整備を支援したODA外交が挙げられる。

 他方で、この友好関係を今後も続くものと当然視することには注意が必要である。オーストラリアやNZと間には、捕鯨問題など簡単には解決できない課題が存在している。また太平洋島嶼国に対しては、近年中国が急激に進出し、経済面や軍事面での関与を強めている。

 2015年も、4月の天皇・皇后両陛下によるパラオ訪問や、5月の第7回太平洋・島サミット開催など、大洋州地域が注目されている。日・大洋州地域間の交流の活発化を通じて、両者の友好関係が益々深化し、互いを真に信頼できるパートナーとして認め合える関係となるまでに発展することを切に願ってやまない。
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