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日本のNGNはテークオフできるか

『次世代インターネットの経済学』より

世界が競う次世代インターネット

 世界的なブロードバンド化の流れの中で、各国とも、公衆交換電話ネットワークから、次世代ネットワーク(NGN)への移行を検討している。NGNとは、インターネットプロトコル(IP)技術を利用して、音声伝送とデータ通信の融合、通信と放送の融合、固定と移動の融合(FMC)を含めた、マルチメディア・ネットワークである。NGNの国際標準はITU‐Tなど国際機関で協議されているが、各国の事情を反映して、NGNへの移行アプローチは多種多様である。

 英国BTの21CNを受け、各国の主要キャリアもNGN計画の策定を急いでいる。とりわけ、世界の中で最もアグレッシブな戦略をとるのは、NTTグループである。NTTは、二〇〇四年一一月に中期経営戦略を発表し、FTTHをペースにしたNGNを打ち出した。二〇〇六年一二月にはフィールド・トライアルを開始し、二〇〇八年三月にはNGNの商用サービスを開始した。

 NGNの構想は、電話ネットワークの中央制御の高い信頼性とインターネットの高い柔軟性を組み合わせたネットワークを構築しようというものである。もっとも、電話とインターネットの長所の組み合わせになればいいが、短所の組み合わせになる危険性もある。NTTグループのライバル事業者が同じ立場に立ったイコール・フッティングで接続できるのかどうか、資金繰りに苦しむISP事業者が接続する場合の接続料金をどうするのかなど、不透明性が残されている。

 NTTグループは、NGNには四点のアドバンテージがあると主張している。

  ①品質保証:NGNでは、アプリケーションに応じて四つの品質クラス(最優先、高優先、優先、ベストエフォート)が提供される。高い品質クラスでは、帯域が確保されるため、ハイビジョンの高精細な映像をネットワーク上で送信できる。

  ②セキュリティ:NGNでは、回線ごとに発信者IDのチェックを行い、なりすましを防止する。また、ネットワークの入り口に、異常なトラフィックをブロックする機能も配置する。

  ③信頼性:NGNでは、PSTNの信頼性を受け継ぎ、特定のエリアに通信が集中した際のトラフィックコントロールや、重要通信の確保ができる。

  ④オープンなインターフェース:NGNでは、多彩なアプリケーションに対応するため、高品質の音声や映像通信のためのインタラクティブ通信機能、コンテンツ配信のためのユニキャスト通信機能やマルチキャスト通信機能、さらには高品質の次世代イーサ機能を提供する。

 NGNそれ自体は、消費者にとっては一種の標準であり、直接、消費の対象となるサービス

NGNのキラーコンテンツは何か

 NGNは大別して、安全で高品質なビジネス環境の実現を目指すNGN for BUSINESS、安心・安全な社会環境の実現を目指すNGN for SOCIETY、楽しく便利なホームライフを目指すNGN for LIFEに分類できる。

 BUSINESS系の代表的なNGNサービスとしては、会議ソリューション系サービス、シームレス・コミュニケーション系サービス、ネットワーク・サービスがある。SOCIETY系のNGNサービスは、介護・医療サービス、公共サービスから構成される。そしてにLIFE系のNGNには、ホームエンターテインメント系サービス、ユビキタスライフ系サービスが挙げられる。というわけではない。したがって、NGNによってどのような新しいサービスが実現するのかが分からなければ、消費者がNGNを実際に利活用しようとは思わないだろう。

 彼らにNGNで実現されるサービスを利用したいと思うかどうかを五段階に分けて尋ねたところ、是非利用したいが四〇%、少しは利用したいが四六%と非常に高い利用意欲を示している。次に、BUSINESS系、SOCIETY系、LIFE系それぞれについても、同様の質問をしたところ、LIFE系を利用したいという回答率が八〇%を超え、一番高く、それから、BUSINESS系が七〇%台、SOCIETY系が六〇%台で続いた。

 一番人気が高かったLIFE系の中でも、特に人気を集めたベスト3は、地上デジタル放送IP再送信(七一%)、ハイビジョン映像配信サービス(六五%)、ハイビジョンIPテレビ電話(四二%)と、ハイビジョン動画・放送サービスで占められた。こうしたホームエンターテインメント系サービスは、現行サービスのアップグレード的な側面が強く、ユーザにとっても、具体的なイメージが湧きやすいからであろう。
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