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アタリのマルクス観

マルクスの資本論

 マルクスで不思議なのは、なぜ、「資本」なのか、「作ること」なのか。「作ること」の生産性を上げるとか、搾取のためには、回るためには消費がなければならない。資本主義というのは、作ることだけでない。循環です。仕組みです

 フォードが大量生産をはじめた時に、車の購買層を作るために、賃金とか福祉のレベルを上げた。ここから、資本主義は新しい局面を描いた。所有欲を原動力にした、資本主義です。

 民主主義とペアとなって、はじめて、資本主義は機能になります。そこに対して、グローバリゼーションと自由の意識は大きなパラメーターです。

 そして、民族の問題も国民国家にとっては大きな問題です。そういうものとは別次元で、作ることで、「プロレタリアート」と「ブルジュアジー」に分けてしまう。

 なぜ、消費者とか生活者とか、生きる目的などの個人のスタンスがないのか。プロレタリアートが居るだけの世界と言うのは、何か悲惨な気がします。生活がない、階級社会。

 マルクスの描いた、インターナショナルの世界が、一国主義という枠で変質したんでしょう。国民という枠の中で組織される力は求心力を持ちます。第一次世界大戦の独仏を縛った。その中は、危機に瀕する国家に対して、国民は存在するが、プロレタリアートは存在しない。

 その先にあったのは、全体主義であった。ドイツの匕首伝説は強烈であった。

アタリのマルクス観

 マルクスはそれ以前の疎外から解放された世界を、とりわけ資本主義の中に見ていて、その断末魔について考えたわけでもないし、一国で社会主義が実現できると考えたわけでもない。自由貿易とグローバリゼーションを弁護し、そして革命は、たとえ起こったとしても、資本主義をすべて乗り越えねば、実現などしないだろうと予言していた。

 彼が過ごした世紀が驚くほどわれわれの世紀に似ている。世界は人口的に見るとアジア優勢で、経済的にはアングロ=サクソン優勢であった。民主主義と市場が地球を侵略しつつあった。技術がエネルギーや素材の生産、コミュニケーション、芸術、イデオロギーを革命化し、労働にともなう苦痛も、驚くほどの軽減を告げていた。市場がかつてない成長の波に入る直前にあり、その矛盾が絶頂期にあったかどうかを知るものなどどこにもいなかった。もっとも力のあるものと、もっとも貧しいものとの不平等もひどい状態であった。しばしば暴力的で、さらに絶望的な圧力グループが、市場のグローバリゼーション、民主主義の勃興、宗教の世俗化と対立していた。人々は、貧困、疎外、苦痛から人間を解放することより、別の友愛的世界の中に希望を託していた。人々を必然的に友愛的世界に導く道を見つけたという名誉をめぐって、多くの作家や政治家が言い争っていた。勇気ある人々、とりわけマルクスのようなジャーナリストが、演説の自由、執筆の自由、思考の自由のために命を落としていた。資本主義がわがもの顔に支配し、いたるところで労賃に重石をかけ、ヨーロッパの国民国家にあわせて、世界組織を作ろうとしていた。

 マルクスが、西欧的近代人を構成するすべてのものに出会える好都合な位置にいた。ユダヤ教から、貧困を許さず、生命が価値を持つのは人間の運命を改善する場合だけであるという思想、キリスト教からは、人間は隣人愛をもつという、解放者としての未来の夢、ルネサンスからは、合理的に世界を考察するという野心、プロイセンからは、哲学は第一の科学であること、国家はあらゆる権力の脅威的中心であるという確信、フランスからは、革命は人民解放の条件であるという自負、イギリスからは、民主主義、経験主義、政治経済学の情念、ヨーロッパからは、自由と平和という情念を受け継いでいる。

 資本主義が、社会関係の商品化を完成し、資源のすべてを利用しつくすとすれば、しかも資本主義が人間を破壊することがないとすれば、世界的社会主義への道を開いてくれるだろう。言い換えれば、市場は友愛に道を譲るだろう。それを想像するには、マルクスが世界的社会主義を描いたときすでに作り出していた原理に戻る必要がある。すなわち、無償「生産」するのではなく、「創る」という芸術、共有、自由と責任の遂行に必要な財を自分のものにすることである。それを行う世界国家がない以上、地球規模による権力の遂行ではなく、マルクスが好んだこの「革命的進歩」、世界精神へ移行することによって成し遂げられるだろう。責任と無償に進まねばならない。すべての人間が世界市民となり、最終的には世界は人間のために作られることになろう。
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