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フェイスブック革命を総括する

フェイスブック革命を総括する

 今回の2つの国の革命運動で特記すべきは、それが宗教の派閥間での対立ではなく、抑圧する者と抑圧される者の間の対立だったという点だ。抑圧される側の者が、宗派を問わず、違いを乗り越えて結集し、ともに腐敗政権に立ち向かっていったのである。

 2国とも主役は一般の若者だ。抗議の原因になったのは、日常的な虐待、圧制、腐敗、そして失業、食糧難、経済不安といった経済的な問題で、それは抑圧される者であればみながともに感じていたことだった。

 そういう問題意識があればこそ、ソーシャルメディアを使いこなすことによって発信し、みなで共有し、ともに行動することにつながっていった。

 「抑圧される者同士の結集、反対勢力の結集、それを可能にしたソーシャルメディアの役割」というのか、今回の革命を成功に導いた主要な要因と言っていいだろう。

 まだまだ、政府に対する市民の交渉力が十分に高まったとは言えないか、ここにとどまらず、今後加速していく可能性は十分にある。

革命への障害物としてのフェイスブックり‥

 一方でフェイスブックには、口コミや携帯電話と比べ、政府が監視しやすいという側面もある。フェイスブック上で予告されたストライキに対して、政府側か効果的に事前準備を行うこともできる。

 実際、2011年2月、中国政権に対する抗議デモを行う予定をネットから入手した中国政府は、その予定区域を完全封鎖している。で、結局、集まったのは外国人のプレスと中国の警察、そして野次馬が大部分で、肝心のデモ隊はほとんど集まることがなかったそうだ。

 ただ、ここで重要なのは、こうしたなかでも、チュニジアやエジプトでは、ソーシャルメディアを使いこなす若者を中心に組織化された市民革命が成功したこと、そして、そこではとくに、フェイスブックが重要な役割を果たしたということだ。

若者主導のフェイスブック革命

 今回の北アフリカにおける革命に共通する要素のひとつに、若者が中心になっていたということがあった。そういう若者は、ケータイやソーシャルメディアといったデジタルネットやデバイスに対するリテラシーか高い。

 大人という古い世代は、フェイスブックをはじめとするソーシャルメディアに時間を使う若者を、それは単なる自己顕示欲の表示であり、社会にとって建設的な行為ではないと切り捨ててきたが、若者たちはソーシャルメディアを使って、社会、学術、政治、娯楽と、文化的にも商業的にも、現実世界と同じように活動している。今回の一連の革命はまさに。ソーシャルメディアに対する世代間の認識の違いを表面化させる結果となった。

 北アフリカにおける革命に共通する要素として、もうひとつ指摘しておきたいのは、若い世代の間では、ニューョーク大学のクレイ・シャーキー氏の言う「対等参加」が当たり前になっているということだ。

 この世代はコミュニケーションにおける上下関係に慣れておらず、デフォルトとして「対等」なコミュニケーションが前提になっている。そしてかれらは、既存のマスメディア時代には当たり前だった受動的な情報の消費者としての立場に満足しない。かれら自身も生産し、共有し、消費し、相互作用し、コラボし、配信するということが当たり前になっているのだ。

 このネッ卜やソーシャルメディアが可能にしたコミュニケーション消費様式の変化を正しく理解することか重要だ。

ソーシャルメディアがひらく明日

 急激に広かっているソーシャルメディアはオンライン空間の地形だけでなく現代社会の政治・経済・社会・文化環境を根本的に変化させている。しかし、それもまだ、導入期だ。将来どのように活用されるかはわからない。

 たとえば、ツイッターなどソーシャルメディアは、2009年のイランの大統領選挙結果に対する国民の抗議運動の過程でも重要な役割を果たしたことからわかるように、とくに、政治的転換期や革命時にニュースや情報を拡散するのにたいへん役立つ。政府が検閲しにくいうえに、政治的混乱の瞬間にも情報を伝達して、コミュニティの形成と維持を可能にするからだ。

 ツイッターは情報伝達ネットワークとして、電話やメールと本質的に違うところはないが、リアルタイムに数多くの人々に同じ情報が伝達できるという点では既存の媒体とは大きく異なる。

 また、新聞・テレビといった既存のマスメディアか検閲・統制され、その結果、まともな役割を果たしていない国家においては、ソーシャルメディアが、既存のメディアを補完・代替するメディアの役割を果たしている。そうして、市民によるコミュニティ形成や社会運動にも重要な役割を果たすことが考えられる。
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