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エジプトのフェイスブック革命

『逆パノプティコン社会の到来』より

エジプトのインターネット利用状況

 2011年現在、エジプトのインターネット利用者は全体人口の約20%。とくにさかんなのはブログだ。フェイスブックの利用者は人口の6%である500万人、うち、18~34歳の使用者か78%を占めるというから、若年層の利用率の高さでも際だっている。

 しかし、前述の「国境なき記者団」が明らかにした、2010年度版のエジプトの言論自由度は178ヵ国中で126位。これもまた、チュニジア同様、インターネッ卜を含む言論・表現への政府による弾圧か激しい「インターネットの敵」国家群とされている。

 エジプト政府は、2005年からインターネット言論を弾圧しはじめ、「イスラム冒涜」、「大統領冒涜」などを理由に、多くのブロガーらを逮捕していった。それによって、インターネットを通した国民の抵抗はさらに強まっていったのはチュニジア同様である。

2011年1月15日、大統領の辞任・亡命をもたらしたチュニジアのジャスミン革命を受けて、エジプトでも、1月17日~18日に、3人が焼身自殺。そして、1月25日、ムバラク大統領の退陣および政治経済改革を要求する大規模なデモがはじまった。

 そうしたなか、警察の発砲によって100人以上か死亡、数千人が負傷した。26日には、政府は野党の要人20人を検挙し、モハメド・エルバラダイ元国際原子力機構事務総長を自宅軟禁。                         

 そして、1月29日、ムバラク大統領がテレビ演説を通じて内閣解散と政治改革を明らかにしたわけだか、その直後に大統領側近を副大統領と総理に任命したことから、国民の怒りはさらに激化。国際的にも、米国、カナダ、英国、スイスなど各地で連帯デモが広がり、米国政府も、エジプト政府のデモ隊に対する弾圧を中止するよう強く要請した。

以前から始まっていた革命をフェイスブックが加速化

 エジプトでは、2004年にいわゆる「キファヤ運動」というのが起こり、それまで分裂していた反ムバラク勢力か結集した。イスラム主義者、ムスリム同胞団から共産主義者、リペラル、世俗左派までか、「ムバラク政権の終了と世襲体制に対する反対」という2つの共通した目標の下、結集し、2007年まで、さまざまなデモ活動を行ってきたのだ。
このキファヤ運動がそれまでの他の反政府運動と異なっていたのは、インターネッ卜の可能性を活用したという点だ。具体的には、デモやストライキを組織化するため、多くのブログサイトを立ち上げた。

 2004年末、キファヤ運動がはじめて行われたときには、ほんのひと握りのブロガーがデモに参加し、ブログに書いただけだったが、1年足らずでそれは数百にのぼり、今や数千にもなっている。そして、こうした多くのブロガーが、2011年1月25日以降の反政府デモ活動において、重要な役割を果たすことになる。

フェイスブックによって反政府デモが一気に加速

 このように、ブログが市民運動の重要な役割を果たしているなか、2008年に入ると、もうひとつの強力なメディアが登場、合流することになる。

 2009年4月6日、ムバラク政権の腐敗に対する全国的な抗議デモが起こった。いわゆる「エジプト4月6日運動」である。

 これは、もともとは、繊維工場の労働者によるストライキのはずだった。ところが、これを反政府活動家がフェイスブックで呼びかけ、活動を展開していった結果、工場でのストライキにとどまらず、政権側がもっとも恐れていた結果となった。全国的な抗議デモヘと発展していったのだ。それは、劣悪な労働条件や急騰する物価に対する民衆の不満か噴出した結果でもあった。

 起点となったのは、若い女性活動家のフェイスブックでの呼びかけたった。繊維工場の労働者への同情を目的とした抗議デモをフェイスブックで呼びかけた。すると、2週間で7万人を超えるフェイスブック利用者が、その抗議デモヘの参加を約束した。続いて、これに気づいた政治ブロガーがこのデモヘの参加を呼びかけはじめ、野党もこれに全面的に合流することになる。

 こうして、さまざまな政治組織か結集し、4月6日の、それまでの数十年間でもっとも大規模な政治運動へとつながっていくのである。

 つまり、「キファヤ運動」にブロガーが命を与え、フェイスブックで「4月6日運動」を一気に加速させていった。そして、それが最終的に、2011年1月、2月の全国デモにつながり、ムバラク政権を辞任に追い込んだのだった。
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