未唯への手紙

未唯への手紙

米国経済の変化のベクトルはどこに向かうのか?

2012年03月17日 | 3.社会
『アメリカ経済がわかる本』より

経済自由主義と経済民主主義のリバランシング展開する多国籍企業との利益相反など難問を抱えています。そしてG20をはじめ、アジア諸国、今後の経済発展に必要不可欠な資源を保有する国などが成長軌道を維持し、21世紀の経済は、グローバル経済の新たな段階を反映して変化しつつあります。

オバマ政権とオバマ以後の米国

 21世紀米国病克服への道を、期待されたオバマ政権ですが、米国経済再生への青写真の提示とそのための施策実行については、不十分な実績に留まっています。

グローバル経済の潮流変化

 90年代米国一極覇権を可能にしたニューエコノミー、グローバル市場経済は、同時に国際経済の供給力拡大/高度化を果たし、グローバル生産拠点ネットワーク上で不可欠となり、マーケットとしても重要度を増した中国・インド・ブラジル・東南アジア等の経済が一段と飛躍することを支えました。

 そうしたなかで、先進国群は、21世紀米国病からの回復に苦闘する米国、国内需要が停滞しデフレに脅かされる低成長国日本、ギリシャ問題の対応が後手に回り、今やユーロ圏全体の危機に発展したEUなどそれぞれ苦境に立っており、いずれも、財政赤字と雇用問題、グローバルに機管理政策への期待もさることながら、今後の米国経済の変化への期待があり、これは同時に米国が抱える「長期構造課題」に本格的に取り組む政権としての期待も存在したわけです。しかし巨額の財政赤字を抱え、「テロとの戦い」シンドローム後遺症にも悩むオバマ政権は確かに改革的政策の導入(医療保険改革法、金融規制改革法)には成功しましたが、これまでのところ、国民が求める[チェンジ!」にふさわしい有効なメッセージを送れない状況です。むしろ「大きな政府への逆戻り・介入主義・妥協路線以外難しい」といった批判も高まっています。とはいえ、同政権が米国にとって解決すべきとして提起している、重要な課題へのアプローチ=解決すべき「市場」に対する新たな規範・制度の確立への試行、長期構造課題への非「市場型」アプローチの模索、内外での統合型リーダーシップによる米国への信認再構築などは、引続き今後の米国政治経済の軸となっていくことが予想されます。

2012年政権の課題

 それでは2012年以降の新政権は、はたして有効にリーダーシップを発揮できるのでしょうか?

 共和党政権ではもちろん、オバマ政権にしても、その支持基盤や既得権益層の利害調整、グローバルに変動する市場経済、財政再建という枠組みのなかで改革命題に取り組み、短期間に成果を出すことは容易ではありません。そして雇用や所得を安定的に拡大する成長戦略が見えにくいなかで、米国は政治的・経済的閉塞状況に陥るリスクは依然として高いといえます。

 しかしこうした危機を米国はこれまでも幾度か経験し切り抜けてきた実績があります。

 何よりも19世紀の南北戦争時、現オバマ大統領の尊敬して止まない16代リンカーン大統領こそ、「二つに割れた家」という未曾有の困難と厳しい環境に直面したなかで、政敵でも優れた人材なら適所に活用するなど、優れた「統合的リーダーシップ」を発揮して米国の未来につながる改革を実現させた先駆者といえましょう。

 今日米国にとって必要なのはグローバル時代のニューエコノミー経済下、米国の改革命題を粘り強く推し進めること、「危機に対する過小評価や希望的観測への依存、解決の先送りや、既に限界を露呈している処方能の安易な繰り返しは『政策危機』に陥る」という教訓を生かし、強いリーダーシップを発揮することが求められます。

 バブルおよびグローバル市場の失敗や、テロとの戦いなどで発生した負の遺産を改善・解消するためのコストを国民に今後も負担させることについては、諸問題の解決に向かう改革の実行が条件となるでしょう。

中期的に期待されるパラダイムシフト
 当面米国は景気回復・経済再生が軌道に乗ることが喫緊の課題でしょうが、果たして中長期的な「米国経済の変化のベクトル」はどこに向かうのでしょうか? 大きな政府による様々な格差の縮小への試みは、非効率と高コストに至ったことで大きな抵抗があり、かといって「小さな政府」のまま市場原理に委ねた結果は21世紀米国病をもたらしてしまいました。
 21世紀の米国は、「経済自由主義」と「経済民主主義」の新たな高次元でのリ・バランシングが求められています。
 改革のスピード・内容は米国経済の回復度、国民の支持に左右されるとしても、長期的視点からは、米国経済社会もこれまでの、「市場原理」による過剰な呪縛を解きつつ、①ニューエコノミーが深化するなか、イノベーションによる成長戦略を維持・発展させ、②G20諸国等、経済発展・拡大する経済を活用しつつ、③米国自らのダイナミズムにより、米国が真に必要とする「改革」に本格的に取組む時期に至ったとも考えられます。そのためにも、④アメリカンドリームを再び可能とするアメリカンコンセンサスの再生が不可欠といえましょう。今後米国の政権は、改革についての説明責任を十分果たし、米国の長期構造課題・21世紀米国病の克服に正面から取り組むこと、内外での統合型リーダーシップを発揮して、いわゆるワシントンへの根強い不信を粘り強く解消しながら、内外における米国への信認を再構築することが求められます。

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