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アフリカの大疑問 ソーシャル社会

『アフリカの大疑問』より

いま、政権を覆す「ソーシャルメディア」のパワーとは

 2010年から11年にかけて、アフリカ・中東のアラブ圏を中心に独裁政権の打倒をめざす民衆蜂起が相次ぎ、チュニジアやエジプトでは体制転覆が実現した。

 軍事力を後ろ楯にした強固な支配体制が敷かれていた国々で、いかにして民衆革命は成功したのか。
その大きな原動力になったのは、「ツイッター」や「フェイスブック」といったソーシャルメディアだ。ソーシャルメディアが、多くの市民が団結し、行動を起こすのに一役も二役も買ったのである。

 ツイッターは、インターネット上で140文字のごく短い情報を不特定多数の人人に発信したり、ほかの人の情報を読んだりできるサービス。フェイスブックは、アメリカのフェイスブック社の提供による、6億人もの会員を有する世界最大のSNS(ソーシャル・ネットワーキングーサービス)で、会員同士の情報交換や画像・動画の投稿などが可能だ。

 これらソーシャルメディアの最大の特徴は、不特定多数の人々への情報発信が誰でも簡単にできる点にある。その伝わり方はウイルスの伝染の様子に似ているため、「バイラル(ウイルスのような)」効果と呼ばれる。

 こうした情報発信の担い手は、かつてはマスメディアだけだった。したがって、政府がマスメディアを支配し情報操作しているような国の場合、市民はなかなか真の情報を得られなかった。また、市民がまとまって行動を起こすにしても、政府の検閲にあって情報を共有できず、団結するのが難しかった。

 しかし、ソーシャルメディアの登場が事態を一変させた。ツイッターやフエイスブックは、携帯電話さえあれば、簡単に情報の受発信ができる。市民はこれを利用して情報を効率的にやり取りし、反政府の世論を作り上げ、盛り上げた。そして街に大挙して集まり、デモを繰り広げたのである。

 民主化運動をつぶそうとする政権側は、ツイッターやフエイスブックを利用させまいと、国内のインターネット業者に接続を遮断するように命じたり、利用者のアカウント情報を消去したり、居場所を突き止めるハッキング活動などを行なった。しかし結局、市民の情報共有を止めきれなかった。

 アフリカには、独裁的な国家が存在する。そうした国の指導者はソーシャルメディアによって市民が真実の情報を得ることを恐れているといわれる。ソーシャルメディアは、体制転覆をも可能にする、アフリカの人々の強力な武器になったのだ。

携帯電話の普及率が6年間で900%も伸びた理由

 アフリカやアジアを中心とした発展途上地域で大幅に普及率が伸びているのだ。
とくにアフリカの伸びがすごい。アフリカの携帯電話加入者数を見ると、2003年の約5300万人から09年には約4億6800万人にまで拡大している。なんと約900%という驚異的な伸びだ。しかも、これでも47%の普及率に過ぎないのだから、今後さらに伸びていくことはまちがいない。アフリカは世界でもっとも成長の速い携帯電話市場といえるのである。

 それにしても、なぜここまで急速に普及したのだろうか。

 その理由のひとつには、アフリカの固定電話の普及率がわずかI%に過ぎないことが挙げられる。固定電話の場合、電線網を張りめぐらす必要があり、設置コストが高くつく。そのため、なかなか普及は進まなかった。

 いっぽう携帯電話は、アンテナを立てて中継基地をつくるだけでネットワークを構築でき、アフリカの広大な土地でも容易にカバーできる。そうしたシステム上の優位性を活かして、携帯電話は普及していったのだ。

 ふたつ目の理由は、プリベイドカードの導入だ。お金を払ってカードを買い、払った金額分だけ通話できるというシンプルなしくみを導入したことで、低所得者でも手軽に携帯電話をもてるようになった。
そして3つ目の理由は、携帯電話を使った送金サービスである。アフリカでは銀行の支店網やATMの普及が十分に進んでいない。したがって、都会や外国へ出稼ぎに出た人が仕送りするさいには、手渡ししたり郵便を利用する以外に方法がなかった。それが携帯電話に組み込まれた送金サービス機能によって、手軽に送金できるようになったのだ。
携帯電話の普及は、アフリカの社会に大きな変化を生んだ。たとえば農村では、これまで多くの農家が仲買人の言い値で農作物を売っていた。
しかし、携帯電話で適性価格を知ることができるようになり、妥当な金額で取引できるようになったのである。
仲買人のほうも、事前に農家に買い付けの日程を連絡できるようになり、待ち時間が節約されるなどコストダウンにつながっている。
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