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創発基点型 走りながら考えよ!

『経営戦略パーフェクトセオリー』より

創発基点型 走りながら考えよ!

組織形態・各社員が常に考える「学習する組織」を作る

 従来型のピラミッド組織は、上意下達の指示命令系統であれば有効に働きますが、逆に意図せざる成果を生むようなスタイルではありません。したがって必要となるのは、現場側に権限を委譲する組織スタイルです。意図せざる成果を生むには、現場に一定の権限委譲をし、社員1人ひとりが常に考えるような「学習する組織」を実現することです。

試行錯誤しながら知恵を絞り、意図せざる成果を生み出す

・不確実性の高い状況では効果的

 基本思想は、「走りながら考える」の一言に尽きます。実行と同時に、リアルタイムで考えるという戦略です。どんな会社でも将来はわからない以上、こうした試行錯誤は何らかの形で無意識で行なっているはずであり、それを戦略手法として実施するということです。

 したがって、現場サイドによる事後的な戦略ということになります。現場で試行錯誤を行ないながら学習し、新たな知恵を創り出し、それによって「意図せざる」成果を生み出すということです。きわめて直観的な色合いが強い手法ということがいえるでしょう。

 活用場面としては、やはり不確実性が高い状況ということになります。不確定要素の大きい先端的業界ではとくに有効でしょう。もちろん、どんな会社であっても将来が確定しているわけではないので、究極的にはすべての場面に使えるということになりますが、時間もコストもかかる手法のため、留意が必要です。

・創発基点型のデメリット

 ●どうしても非効率になる

 1点目は、効率という点ではどうしても悪いものになるということです。試行錯誤を繰り返すということですから、時間もコストもかかって当然です。社員間のノウハウ共有によって知識を創造するということになりますから、人材も余裕をもたせておくことが必要です。失敗も許容しなければなりません。

 立ち上げ段階のベンチャー企業であれば、余裕も何もない中で、「いいからがんばれ!」と人の2倍も3倍も働くということで対応していくわけですが、それはいつまでも続けられるものではありません。

 継続的にこの戦略手法をとるとしたら、組織として資源の余裕をもたせるという意思決定をしなければなりません。先ほど、経営資源に余裕を持たせて柔軟性を生む組織スラックという概念を説明しましたが、「冗長性」ということが、この戦略タイプの特徴でもあるわけです。効率性とは正反対の思考が必要ということです。

 しかし、「意図せざる」成果を生むために余裕をもたせるという意思決定は、経営者としては、実際問題なかなかとりにくいはずです。目先の収益を落とすという判断はなかなかとりにくいものです。社外の投資家や取引先からは、批判が寄せられるかもしれません。その意味で、この戦略を貫くには経営者には相当の覚悟が求められるということになります。

●無秩序になることもある

 2点目は、ただの無秩序に陥る可能性があるということです。前提となる環境条件をセットしたらあとは現場サイドの創発に任せるという形になります。成果主義もとりませんので、事前に明確な成果で縛るということもしないわけです。下手をすると、誰も責任をとらない中で無秩序に堕すだけということにもなりかねません。

 そのため、こうした手法の有効性に疑問を呈する研究も少なからずあります。たとえば、クロスファンクショナルチームのように多楡匪をもったグループワークも、メンバー間の人間関係を重視しすぎることによって、決して革新的なものを生むことにつながらないという研究結果もあります。

 そこで必要となるのが、経営サイドの関与です。いままでは、前提となる環境条件をセットしたらあとは現場に任せるしかないと書いてきましたが、そうはいっても完全な放任であっては、「意図せざる」成果は生まれないということです。

 むずかしいことをいっているのではありませんし、妙なマネジメントの仕組みを作ることを求めているわけでもありません。適宜ミーティングの状況をヒアリングする、たまにはミーティングに顔を出してみる、メンバーを飲みに連れて行く、そんなことで十分です。そのようなちょっとしたコミュニケーションがきわめて重要なのです。

 「そんなこと当たり前だろ」とお叱りを受けそうですが、その当たり前のことが、忙しさにかまけてついつい忘れられがちになるものです。経営サイドのみなさまには、ぜひお忘れなきようお願いしたいものです。
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