『ケースに学ぶ マーケティング』より ドトールとスターバックスのマーケティング戦略 ⇒ スタバに関しては、15年間のお客様としての経験があります。お金に換算するとざっと、300万円ぐらいは使っている。一番気に入っているのは、「おお客様ひとり」への対応です。
ドトールのマーケティング戦略
1962年、24歳のときコーヒー豆の焙煎加工と卸売業を行う会社としてドトールコーヒーを設立した。社名のドトールは彼がブラジル・サンパウロで働いていたときの住所からとって名づけられた。
鳥羽氏がセルフサービス式のドトールを創業するヒントとなったのは、1971年に参加した業界主催のヨーロッパ視察旅行だった。パリのカフェでは同じコーヒーに対し、立ち飲みと着席とでは異なる価格が設定されていて、出勤前のビジネスマンたちは安い立ち飲みコーヒーを飲んで仕事に向かっていた。また、ドイツでは人々がコーヒー豆をカフェの店頭で買っていた。このようにヨーロッパではカフェは日常生活に密着したものとして存在しており、コーヒーが普及しつつある日本においても、日本人の生活に密着したカフェが必要であると感じ、それをドトールとして具現化したのである。
ビジネスマンに負担のない価格で毎日おいしいコーヒーを飲んでもらい、日々の生活に安らぎと活力を感じてもらいたいという思いから始まったドトールでは、150円という低価格とおいしさを両立させるためにさまざまな工夫がなされている。
コーヒーの価格をこれまでの半分に設定しても利益の出る店にするためには、単純に倍以上のお客さんに来てもらう必要がある。そのためには毎日通ってもらえる味の提供とともに、客を待たせない仕組みづくりは必要となる。ドトールでは店内の機械化を積極的に進めることで1店舗当たりの平均社員数が0.7人(スターバックスは1.9人)と人件費を抑えつつも、来店客数を増やして高回転率を維持しており、これによって狭くても利益の出る店舗となっている。この仕組みを実現するためには、カウンターでいかに素早くコーヒーを提供できるかがポイントになる。経験の浅いアルバイトでもおいしいコーヒーを提供できるようドイツ製フルオートマチックのコーヒー・メーカーを導入したり、軽食用のパンを焼く機械や食洗機などを積極的に導入することで、彼らが効率よく働けるように工夫している。
それと同時に毎日飲めるおいしいコーヒーを実現するために世界11カ国から品質の高い豆を購入し、自社で直火式焙煎を行う仕組みを構築した。この直火式焙煎は人手と時間がかかるため、大手企業は通常、熱風焙煎を用いるが、コーヒーのおいしさを実現するためには妥協できない点であった。この仕組みは品質を維持できる一方、調達コストが割高になる。そのため売上原価は50%と、26.5%のスターバックスと比較して非常に高くなっている。そこには、コーヒー豆の焙煎・卸から出発した同社のこだわりが感じられる。
また、忙しいビジネスマンに手軽に食べてもらえるようにと、コーヒーと一緒に販売する軽食にも力を入れている。オープン当初から売っている「ジャーマンドック」は、ヨーロッパ視察の際にドイツで食べたフランクフルトの昧を再現するために、国内のソーセージ、パン、マスタード・メーカーと共同で開発したもので、ドトールの朝の定番となっている。1998年から登場した「ミラノサンド」も手軽なランチの定番として、メニューを変えつつも現在まで販売されている。
店舗に関しては、「安らぎと活力」を提供できるよう色彩心理学で母性愛を示すクリーム色と活力を示す赤茶色を基調にしており、明るく清潔で快適な店舗デザインとなっている。近年は公共の場での受動喫煙の防止がうたわれる健康増進法(2003年から施行)に対応して、店内の分煙も積極的に進められており、タバコを吸わない人たちにとっても気軽に利用できるようになった。
ドトールでは「頑張る人の頑張らない時間」というブランド・メッセージを2010年より発信している。忙しくて時問がないビジネスマンたちに短時間でリフレッシュしてもらえるようなちょっとした息抜きの場を提供できるよう、コーヒーからサイドメニュー、店舗設計に至るまでさまざまな工夫がなされているのである。
スターバックスのマーケティング戦略
スターバックスはコーヒー豆の挽き売り専門店として、アメリカ・シアトルで1971年に創業された。その当時、コーヒー豆はアラビカ種が良質とされていたが、それらのほとんどはヨーロッパで消費されており、アメリカでは品質の劣るロブスタ種のコーヒー豆加計費されていた。先進国といえどもアメリカのコーヒー文化はまだ未熟であった。
そのようななか、実質的な創業者であるシュルツ氏は、コーヒー豆にこだわるスターバックスの虜になり、1982年に同社に入社する。その翌年、ミラノに出張したとき、彼はイタリアのカフエから大きな刺激を受けた。その1つが町中に何軒もあるエスプレッソ・バーであり、そこでお客を楽しませるバリスタの存在だった。もう1つはカフェラテである。シュルツ氏はエスプレッソにスチームミルクを入れたカフェラテの味が、これまでに飲んだことのあるコーヒーにミルクを注いだもの(カフェオレ)と大きく違うことを知る。こうした体験から、シュルツ氏はイタリアに根づくエスプレッソ文化をアメリカに広めたいと考えるようになり、カフエ業態の開発を目指した。
スターバックスの名を冠しかカフェが本格的に展開されるのは、1987年からである。コーヒー豆の挽き売りからスタートしたスターバックスもドトールと同様、コーヒーの味にこだわりを持つ。トレーサビリティと品質管理を厳密に行うことで生産地の特徴的な風味特性を持つ希少価値の高いコーヒーのことをスベシャルティ・コーヒーというが、それを日本に広めたのはスターバックスである。
同社の提供するコーヒードリンクは高品質のアラビカ種コーヒー豆から抽出したエスプレッソがベースとなっている。さらにミルクを無脂肪にしたり、キャラメルやバニラといったシロップを追加したりといったカスタマイズのサービスをつけることで、それぞれの顧客の好みに合ったコーヒーをつくることができる。
ブレンドコーヒーやアイスコーヒーが主力商品のドトールに対し、スターバックスではカフェラテ(「スターバックスラテ」と呼ばれる)やそこにハニラシロップとキャラメルソースを加えた「キャラメル・マキアート」、フローズンドリンクの「フラペチーノ」など甘めのドリンクメニューが人気となっている。これらは通常のコーヒーよりも苦みの強いエスプレッソヘの敷居を低くさせるものであり、独特な苦みを敬遠してこれまでコーヒーを飲まなかったような消費者(とくに女性)にも広く受け入れられる要因となった。
スターバックスの店内に入ると、カウンターでは緑のエプロンをつけたバリスタがコーヒーの注文を聞いてくれるが、彼らはコーヒーに関する研修を受けているため、コーヒー豆について質問しても快く答えてくれる。また、ドトールのコーヒーの提供は注文カウンターですぐに出されるクイックサービスだが、スターバックスの場合は注文するところとつくるところ、提供するところを別々に設けている。そのうえ、顧客のカスタマイズに対応しながら注文の1つひとつを丁寧につくっているため、注文してからコーヒーが出てくるまでに2~3分はかかるが、そこにはおいしいコーヒーを滝れることへのこだわりが感じられる。
間接照明を活かした暗めの店内はコーヒーの香りで満たされており、座り心地のよいイスやソファが置かれている。このコーヒーの香りを大切にするために店内は禁煙になっている。バックに流れるジャズをはじめとする音楽も心地よく、1人で読書をしたり、友達とおしゃべりしたりと、スターバックスの店内ではゆったりとした時間を過ごすことができる。
スターバックスのコンセプトは「サード・プレイス(第三の場)」である。「サード・プレイス」とは都市社会学者のオルデンバーグが提唱した言葉で、人々にはファースト・プレイスである自宅やセカンド・プレイスである職場・学校とは異なる第3の居場所に対するニーズがあるという。このサード・プレイスとして、スターバックスはとくにこれまでのカフェや喫茶店を敬遠していた女性たちがくつろげる空間を提供することに成功したのである。
ドトールのマーケティング戦略
1962年、24歳のときコーヒー豆の焙煎加工と卸売業を行う会社としてドトールコーヒーを設立した。社名のドトールは彼がブラジル・サンパウロで働いていたときの住所からとって名づけられた。
鳥羽氏がセルフサービス式のドトールを創業するヒントとなったのは、1971年に参加した業界主催のヨーロッパ視察旅行だった。パリのカフェでは同じコーヒーに対し、立ち飲みと着席とでは異なる価格が設定されていて、出勤前のビジネスマンたちは安い立ち飲みコーヒーを飲んで仕事に向かっていた。また、ドイツでは人々がコーヒー豆をカフェの店頭で買っていた。このようにヨーロッパではカフェは日常生活に密着したものとして存在しており、コーヒーが普及しつつある日本においても、日本人の生活に密着したカフェが必要であると感じ、それをドトールとして具現化したのである。
ビジネスマンに負担のない価格で毎日おいしいコーヒーを飲んでもらい、日々の生活に安らぎと活力を感じてもらいたいという思いから始まったドトールでは、150円という低価格とおいしさを両立させるためにさまざまな工夫がなされている。
コーヒーの価格をこれまでの半分に設定しても利益の出る店にするためには、単純に倍以上のお客さんに来てもらう必要がある。そのためには毎日通ってもらえる味の提供とともに、客を待たせない仕組みづくりは必要となる。ドトールでは店内の機械化を積極的に進めることで1店舗当たりの平均社員数が0.7人(スターバックスは1.9人)と人件費を抑えつつも、来店客数を増やして高回転率を維持しており、これによって狭くても利益の出る店舗となっている。この仕組みを実現するためには、カウンターでいかに素早くコーヒーを提供できるかがポイントになる。経験の浅いアルバイトでもおいしいコーヒーを提供できるようドイツ製フルオートマチックのコーヒー・メーカーを導入したり、軽食用のパンを焼く機械や食洗機などを積極的に導入することで、彼らが効率よく働けるように工夫している。
それと同時に毎日飲めるおいしいコーヒーを実現するために世界11カ国から品質の高い豆を購入し、自社で直火式焙煎を行う仕組みを構築した。この直火式焙煎は人手と時間がかかるため、大手企業は通常、熱風焙煎を用いるが、コーヒーのおいしさを実現するためには妥協できない点であった。この仕組みは品質を維持できる一方、調達コストが割高になる。そのため売上原価は50%と、26.5%のスターバックスと比較して非常に高くなっている。そこには、コーヒー豆の焙煎・卸から出発した同社のこだわりが感じられる。
また、忙しいビジネスマンに手軽に食べてもらえるようにと、コーヒーと一緒に販売する軽食にも力を入れている。オープン当初から売っている「ジャーマンドック」は、ヨーロッパ視察の際にドイツで食べたフランクフルトの昧を再現するために、国内のソーセージ、パン、マスタード・メーカーと共同で開発したもので、ドトールの朝の定番となっている。1998年から登場した「ミラノサンド」も手軽なランチの定番として、メニューを変えつつも現在まで販売されている。
店舗に関しては、「安らぎと活力」を提供できるよう色彩心理学で母性愛を示すクリーム色と活力を示す赤茶色を基調にしており、明るく清潔で快適な店舗デザインとなっている。近年は公共の場での受動喫煙の防止がうたわれる健康増進法(2003年から施行)に対応して、店内の分煙も積極的に進められており、タバコを吸わない人たちにとっても気軽に利用できるようになった。
ドトールでは「頑張る人の頑張らない時間」というブランド・メッセージを2010年より発信している。忙しくて時問がないビジネスマンたちに短時間でリフレッシュしてもらえるようなちょっとした息抜きの場を提供できるよう、コーヒーからサイドメニュー、店舗設計に至るまでさまざまな工夫がなされているのである。
スターバックスのマーケティング戦略
スターバックスはコーヒー豆の挽き売り専門店として、アメリカ・シアトルで1971年に創業された。その当時、コーヒー豆はアラビカ種が良質とされていたが、それらのほとんどはヨーロッパで消費されており、アメリカでは品質の劣るロブスタ種のコーヒー豆加計費されていた。先進国といえどもアメリカのコーヒー文化はまだ未熟であった。
そのようななか、実質的な創業者であるシュルツ氏は、コーヒー豆にこだわるスターバックスの虜になり、1982年に同社に入社する。その翌年、ミラノに出張したとき、彼はイタリアのカフエから大きな刺激を受けた。その1つが町中に何軒もあるエスプレッソ・バーであり、そこでお客を楽しませるバリスタの存在だった。もう1つはカフェラテである。シュルツ氏はエスプレッソにスチームミルクを入れたカフェラテの味が、これまでに飲んだことのあるコーヒーにミルクを注いだもの(カフェオレ)と大きく違うことを知る。こうした体験から、シュルツ氏はイタリアに根づくエスプレッソ文化をアメリカに広めたいと考えるようになり、カフエ業態の開発を目指した。
スターバックスの名を冠しかカフェが本格的に展開されるのは、1987年からである。コーヒー豆の挽き売りからスタートしたスターバックスもドトールと同様、コーヒーの味にこだわりを持つ。トレーサビリティと品質管理を厳密に行うことで生産地の特徴的な風味特性を持つ希少価値の高いコーヒーのことをスベシャルティ・コーヒーというが、それを日本に広めたのはスターバックスである。
同社の提供するコーヒードリンクは高品質のアラビカ種コーヒー豆から抽出したエスプレッソがベースとなっている。さらにミルクを無脂肪にしたり、キャラメルやバニラといったシロップを追加したりといったカスタマイズのサービスをつけることで、それぞれの顧客の好みに合ったコーヒーをつくることができる。
ブレンドコーヒーやアイスコーヒーが主力商品のドトールに対し、スターバックスではカフェラテ(「スターバックスラテ」と呼ばれる)やそこにハニラシロップとキャラメルソースを加えた「キャラメル・マキアート」、フローズンドリンクの「フラペチーノ」など甘めのドリンクメニューが人気となっている。これらは通常のコーヒーよりも苦みの強いエスプレッソヘの敷居を低くさせるものであり、独特な苦みを敬遠してこれまでコーヒーを飲まなかったような消費者(とくに女性)にも広く受け入れられる要因となった。
スターバックスの店内に入ると、カウンターでは緑のエプロンをつけたバリスタがコーヒーの注文を聞いてくれるが、彼らはコーヒーに関する研修を受けているため、コーヒー豆について質問しても快く答えてくれる。また、ドトールのコーヒーの提供は注文カウンターですぐに出されるクイックサービスだが、スターバックスの場合は注文するところとつくるところ、提供するところを別々に設けている。そのうえ、顧客のカスタマイズに対応しながら注文の1つひとつを丁寧につくっているため、注文してからコーヒーが出てくるまでに2~3分はかかるが、そこにはおいしいコーヒーを滝れることへのこだわりが感じられる。
間接照明を活かした暗めの店内はコーヒーの香りで満たされており、座り心地のよいイスやソファが置かれている。このコーヒーの香りを大切にするために店内は禁煙になっている。バックに流れるジャズをはじめとする音楽も心地よく、1人で読書をしたり、友達とおしゃべりしたりと、スターバックスの店内ではゆったりとした時間を過ごすことができる。
スターバックスのコンセプトは「サード・プレイス(第三の場)」である。「サード・プレイス」とは都市社会学者のオルデンバーグが提唱した言葉で、人々にはファースト・プレイスである自宅やセカンド・プレイスである職場・学校とは異なる第3の居場所に対するニーズがあるという。このサード・プレイスとして、スターバックスはとくにこれまでのカフェや喫茶店を敬遠していた女性たちがくつろげる空間を提供することに成功したのである。
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