古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

アベノミクスと株価

2017-01-17 | 経済と世相
 図書館で、古い雑誌をチェックしていたら、アベノミクスと株価についての論述が見つかりました。
「世界」の昨年11月号の寺島実郎氏の『脳力ノレッスン「2016年米大統領選の深層課題民主主義は資本主義を制御できるか」』です。以下にその部分を紹介します。

あたかも「株価を上げる政治が良い政治」であるかのごとく時代が動いている。日本の高齢者がアベノミクスに拍手を送る構造をかいせきすると、記入資産の保有状況をみると、貯蓄の58%、有価証券の72%は60歳以上の世帯によって保有されている。貯蓄が一切利息を産まない状況で年金だけでは苦しくなった高齢者にとって保有する株の値上がりへの関心は尋常でない。「株を上げること」につながる政策誘導を支持する心理がアベノミクスを支持する。金融緩和だけでなく、公的マネーを株式市場に突っ込む方向に向かい、GPIF(年金基金)と日銀のETF買いだけで実に39兆円(16年3月末)もの額が直接日本株に投入された。上場企業の4分の1の筆頭株主が公的マネーという事態が生じ、国家資本主義ともいえる様相を呈している。健全な市場機能が急速に失われている。
アベノミクスに入り3年は外国人投資家の買い越しが(ピーク時累計で21兆円が日経平均を2.1万円に押し上げたが、今年に入って8兆円の売り越しとなり、代わって公的マネーの投入で1.6万円台を維持している。これがなければ既に1.2万円を割り込んでいるだろう。株価の維持が政権基盤、安易に株価を上げる政策だけに誘惑を感ずるというのが政治の現実である。
 日本のような産業国家は、「経済の金融化」に振り回されることを極力避けなばならない。マネーゲームを抑制し財政を健全化し、技術を重視する産業政策をもって実態経済に地平を開かねばならない。

 ところでトランプ氏の当選が決まった直後、株価は急落しましたが、翌日になると一転急上昇しました。株価を上げたいアベノミクスにとっては天佑でしたが、これをどう解釈すべきでしょう。
 かつて日本のバブル崩壊後の経済低迷について、外国の経済専門家は日本の政策をいろいろ批判しましたが、近年、欧米先進国が経済低迷すると、欧米の各国が採った政策は、日本政府と同じような金融緩和を日本以上に拡大して行うことでした。それをまた真似して異次元の金融緩和に踏み切ったのがアベノミクスでした。「アベノミクスと同様な株価上げ政策をトランプ政権が採るだろう。先回りして買っておこう」と市場が判断したのだと、私は思います。