古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

観光立国論

2016-02-08 | 読書
『新・観光立国論』(デービッド・アトキンソン著、東洋経済新報2015年6月刊)を県図書館で見つけ、借りてきました。
 昨年の山本七平賞受賞の本で、筆者は小西美術工芸社社長、1965年イギリス生まれ、オックスフォード大学「日本学」専攻1992年ゴールドマン・サックス入社日本の不良債権の実態を暴くレポ-トを発表し注目される。1999年裏千家入門、2009年国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工芸社に入社、2010年同社会長、2011年会長兼社長に就任。というユニークな経歴の方です。
 筆者の主張を簡単に要約すると、
 経済成長とはGDPを成長させることだ。ところがGDPを決める最大の要因は人口である。データ面から見てみよう。
先進国の人口とGDP
国名 人口(2015IMF) GDP(100万ドル)2014IMF 一人当たりGDP(ドル)
アメリカ 320,698,000 17,418,925 54,316
日本 126,910,000 4,616,335 36,375
ドイツ 80,959,000 3,859,547 47,693
イギリス 64,800,000 2,945,146 45,450
フランス 66,109,000 2,846,889 43,064
イタリヤ 60,738,845 2,147,952 35,335
合計 720,230,845 33,834,794 46,978
日本のすごい点は1億人の人口を有しているのに、先進国になっている点です。1億以上の人口で先進国は日本とアメリカだけです。

2013年の日本の人口は1億2700万人。GDPは約6000億ドル、1人当たり36375ドルで、人口5000万人を上回る先進国の一人当たりGDPの平均は46978ドルでした。
 日本社会の効率性が上がって、一人当たりGDPがこの46978ドルになったとすれば、人口が9913万人(2048年内閣府予想)に減った場合、GDPは約4兆7000億ドル。人口が減っても意外にGDPは減らず横ばいです。生産性向上はGDPの維持には効果がある。ただ問題は効率性向上は人口減少を吸収する力はあってもGDPを成長させる力はない。
 人口5000万を超える国家の場合、どんなに効率を上げても、一人当たりGDPは国際平均に収斂されていくからです。
このため少子化の進む日本は極めて「成長しづらい国」になっている。では人口を増やす移民策をとれば経済成長はしやすいのではないか?ところが移民策には負の側面がある。そこで負の側面を持たない短期移民策を取ったらどうかというのが筆者の提言である。
「短期移民」とは観光客の意味である。
既に観光客は充分来ている。2013年には年間1300万人、昨年は2000万人に近づいている。日本は観光面でも大国ではないかと思われるかもしれない。それが根本的に間違っている。「観光大国」と言えるためには、GDPのなかに占める観光収入の比率が世界の国の中で平均並み以上でなければならない。2014年の報告では、世界の観光産業は全世界のGDPの9%を占めています。観光輸出額は全世界のGDPの6%です。従って、この数値を上回ることが、観光大国たる最低条件です。日本の2013年のデータでは、観光収入はGDPの0.4%に過ぎない。
 ところが日本のこの比率は実に0.4%で日本は「観光後進国」です。
GDPと観光収入
国名 観光収入(100万ドル) GDP(100万ドル) 比率(%)
アメリカ 214、772 17,418,925 1.2
スペイン 67、606 1,406855 4.8
フランス 66,064 2.846,889 2.3
イギリス 49,404 2,945,146 1.7
イタリヤ 46.190 2,147,952 2.2
オーストラリヤ 33,376 437,123 1.7
オランダ 22,667 866,354 2.6
合計 522,699 29,513,433 1.8
日本 16,865 46,163,354 0.4
 日本は「観光大国」になりうる潜在能力は十分あります。 何故なら、「観光立国」ができる4条件は、「気候」、「自然」、「文化」、「食事」です。この4条件をいずれも満たす稀有の国が日本だからです。
 以下各章で、「観光資源として何を発信するか」、「観光立国に相手のニーズとビジネスの始点を」、「観光立国のためのマーケッチングとロジスチックス」と「観光立国」を進める方策を展開しています。
 人口がGDPを決めるというのは、人口が需要額、すなわちお金の消費額を決めるから。
となれば、外国人であっても日本で消費する人口が増えれば、観光立国で経済成長をはかるべきうだという筆者の主張は充分頷けます。