古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

「集団的自衛権と安全保障

2014-07-24 | 経済と世相
なかにし礼さんの講演会で“平和憲法と天皇”という著書の販売サイン会があったが、前の日に、同じようなテーマの本を購入していたので、なかにしさんの本は買わなかった。、同じようなテーマの本とは、7月に出た岩波新書の「集団的自衛権と安全保障」、著者は豊下楢彦さんと古関彰一さん。豊下さんは、国債政治論を専攻する1945年生まれの関西学院大教授。「安保条約の成立(吉田外交と天皇外交)」なる著書(岩波新書」がある。
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20140724
以下は、この「集団的自衛権と安全保障」から、集団的自衛権がいかにアナクロニズムの論であるかを具体的に解説したくだりです。
 首相は言う「朝鮮半島有事の際、避難する邦人を救助・輸送する米艦船が攻撃を受けた場合、日本人の載っているこの米国の船を日本の自衛隊は守ることが出来ない。これが現在の憲法解釈です」
 しかし、こうした事例は現実には起きえない。在韓米軍が毎年訓練を行っている「非戦闘員避難救出作戦」で避難させるべき対象は在韓米国市民14万人と「友好国」の市民8万人で、「友好国」とは英国、カナダ、オーストラリヤ、ニュウジランドというアングロ・サクソン系諸国で、避難作戦は航空機によって実施されることになっている。
 さらに、なぜ首相は原発の「再稼働」を急ぐのか。日本の原発はミサイル攻撃には全く無防備でしかも稼働中であれば未曾有の被害を招く。それでも、再稼働に突き進むのは北朝鮮のミサイルの脅威を喧伝するのは国民の不安をあおりたてるためで、本音のところは首相も、北朝鮮はミサイル攻撃をしてくるほど「理性を欠いた国ではない」と考えている?北朝鮮が日本や米国を攻撃すれば、それを奇貨として米国の総反撃によって体制が崩壊することを覚悟した“理性を欠いた自殺行為”に他ならない。
 南沙諸島で、ベトナム・フィリピンと中国の間で紛争が起きた場合、日本政府は集団的自衛権を行使できるとの宣言を受けて、ベトナム・フィリピンが、日本の軍事的支援を要請してきたら、日本はどう対応するか。首相は「集団的自衛権は抑止力を高める」というが、この要請を拒否した瞬間、抑止力はなくなる。
 さらなる問題は、安倍首相が執念を燃やす「機雷掃海」具体的には、ホルムス海峡にイランが機雷を敷設した場合に、海上自衛隊が掃海艦を派遣して除去させるという。この機雷掃海と集団的自衛権との関係。
 想定としては、イランによる機雷敷設を米艦船への武力攻撃とみなした米国が、日本に集団的自衛権を行使するよう「明示の要請」を行う。この要請を受けて海上寺衛隊が機雷除去を行う。政府・自民党は、機雷掃海は地上戦のような戦闘行為でないから「限定的かつ受動的な武力行使」だという。しかし、日本による機雷掃海を敵対的な「武力行使」と判断したイランが、掃海戦の護衛艦に攻撃を加えてきた場合、日本はイランとの間で本格的な戦争になる。
安倍首相は「海外派兵はいたしません」と言明してきた。ところがホルムス海峡は、オマーンあるいはイランの領海によって占められ公海は存在しない。「海外派兵しない」という公約に従えば、自衛隊の掃海戦はホルムス海峡の手前で引き返さなければならない。オマーンの同意を得て領海に入ることが想定されているとすると、当事国の同意や要請により自衛隊が他国の領域に入るのなら、「海外派兵しない」という公約は反故になる。
 何が安倍首相を集団的自衛権に駆り立てているのか。それは、言うまでもなく「戦後レジームからの脱却」に不可欠の課題だから。 最大の眼目は青年が誇りを持って「血を流す」ことができるような国家体制を作り上げていくところにある。