古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

原発事故と金融危機

2011-08-03 | 読書
『日本経済復活まで』の続きです。
 原発事故と金融危機とは良く似ている、と筆者は言う。
 【ある数字までを被害の「想定範囲」として、それを満たしたものを「安全」として宣言する、といった手法が採用されているのは原発ばかりではない。金融商品についてもこのような方法が日常的に使用されている。
 たとえば、社債や国債の格付けをするとき、格付け期間は一定の「想定範囲」のショックに対して安全である社債や国債に対して「AAA」などの格付け、お墨付けを付与する。
 住宅ローン全体ののうち不履行が20%以下の場合は、損失をかぶらなくても良い(その損失を引き受けるファンドが別にある)というファンドに「AAA」という格付けを与える。住宅ローンの不履行率、20%という「想定範囲」を設けたわけだ。
 アメリカの証券市場は、住宅ローン不履行2割という「臨界点」を越えた途端に大事故が発生した。】
格付けの「想定範囲」は、売れるように証券を設計するための「想定範囲」だった?
第2部は、「この国の未来」と題する。
一言で要約すると、『原発事故で日本は原子力に頼ることが困難になる。電力は火力発電に頼らざるを得ない。燃料として化石燃料の輸入が増えるので、その支払いのため、外貨を稼ぐ必要が高まる。かつての時代と同様、輸出産業の重要度が高まることになる。』
でも、その趣旨で述べるのなら、『円高の下、中国や韓国、インドなどの追い上げが厳しくなってくるのに、今後とも日本が輸出で食っていけるためにどうすべきか』を具体的に述べてほしかったと感じた。
しかし、筆者が指摘している次のことは重要だ。
『要するに、現在の東電はプレーヤとして二つの役割を持っている。第一はフクシマ原発事故の加害者、あるいはこの事故の解決責任者。また第二は、エネルギー産業の担い手として日本経済が陥っている供給のボトルネックを解消するために、政府による金融支援が第一番目に向けられる、かつての(傾斜生産方式での)石炭産業のような意味でのスター・プレーヤという役割である。』
私は、この二つの役割を同じ東電が果たすのは困難であり、だから前者の東電は会社更生法で整理すべきだと思うが、筆者はそう考えない。
その理由は、『東電債の不履行が生じた場合、それは日本の債権市場そのものの崩壊を招く。その根拠は次の二つ。東電債のような一番安全と見られていた社債でも立ち行かないとなれば、後の社債は怖くて近寄れない。すなわち社債価格は暴落し、社債市場による資金調達は不可能になる。第二に、東電債を多く抱えた企業や金融機関は、経営の悪化を疑われ、資金の調達ができなくなる。』要するに、大きすぎて潰せないという。どうするか。
やみくもに東電の救済だけを考えた『原子力損害賠償支援機構法』は、電力事業の再生という観点から、再考すべきと思う。
第2部よりも第1部の方が、面白い情報が多かった!