古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

雨の尾道

2004-09-08 | 旅行
 聖湖マラソンの翌日朝、今日は天気がよければ、しまなみ海道をレンタル自転車で走破しようと、
7時前ホテルをチェックアウトして7.06の山陽本線に乗車。8時半頃、尾道駅に
着いた。
 ところが、駅を出るとパラパラ雨が降り出す。これはダメかなと思いつつ、駅前の
しまなみ交流館裏の駐車場に行く。この中に自転車のレンタル屋があると聞いてい
た。駐車場入口に、守衛風のおじさんが腰掛けていた。
 「今治まで自転車で行きたいけど、自転車貸してくれる?」
 おじさんはジロジロと小生の姿を見て、「貸すけど今日は雨だよ。それに7時間は
かかる。雨は四国の方から来るから、向こうに行けば完全に雨だよ」
 「80Kmだから、時速16Kmで行けば5時間で行けるんじゃない?」
 「お見受けした貴方の年齢で、そんなスピードは無理無理!絶対7時間かかりま
す。お天気のよい時に出直されたほうが良いですよ」。反論は容易だが、空模様を見
ると、勧告に従った方が良さそう。
 「じゃあ、またお天気の良い時にきます」と言うと、「それが良いですよ」と実に
嬉しそうな笑顔を見せた。人は誰でも、自分の意見が採用されると嬉しいものだ。
 「これ、ご参考に持っててください」と、しまなみ海道のイラストマップを呉れ
た。
 というわけで、「しまなみ」は諦めて午前中、尾道散策をすることにした。駅のコ
インロッカーに荷物を預ける。

 尾道は「坂の町、寺の町、文学の町」と言われるが、いつも新幹線で通過するだけ
で、下車したのは初めて。先ずは「文学」と、しまなみ交流館で「文学館はどう行っ
たら良い?」と聞くと、ロープウェイで千光寺公園に上がり、下りてくると途中にあ
るという。ロープウェイの乗り場はバスで3区と言ったが、1Kmぐらいとのことなの
で歩くことにする。駅から左手に商店街のアーケードを歩く。
 ロープウェイは¥280で、山頂まで約3分。市内を一望してから遊歩道(と言っ
てもかなり急勾配)を下り始める。すぐ下に市立美術館があったが、月曜休館。降り
しきる雨の中を、志賀直哉の旧宅を整備した尾道文学館まで歩く。
 雨で、客は私一人、職員の男性がつきっきりで説明してくれたが、暑くて汗がぽた
ぽた落ちてきて、きまり悪かった。高垣眸(SF作家)、行友李風(脚本家)、横山
美智子、林芙美子など尾道ゆかりの文人の遺品を展示している。最後の志賀直哉の旧
宅、6畳と3畳の二部屋、3軒長屋の一番奥で路地の片側に竈がある。「暗夜行路」
をここで執筆したというが、まことに質素な日本家屋の観。
 文学館を出て少し下ると、尾道の文人、麻生路郎の句碑が建っている。
 「おれに似よ、おれに似るなと子を思い」
 傍らに奥さんの句。「飲んで欲し、やめても欲しい酒を注ぐ」
 
 国道2号線に降りて東へ1Kmほど行く。尾道白樺美術館があった。ここは開いてい
たので入ってみると、梅原龍三郎邸を復元し展示室を付設した美術館と説明がある。
「梅原さんの屋敷だったんですか?」と聞くと、梅原邸の設計図を基に建築したもの
で、本物の梅原邸は、清春白樺美術館(山梨県)になっている。本館とは姉妹館で
す、と言う。
 「浅間噴煙」など梅原作品があり、展示室では「東山魁夷(唐招提寺障壁画のため
の版画)展」をやっていた。
 見終わって、外に出ると、傍に「浄土寺」の表示がある。文学館の職員が「いいお
寺だ」と推奨していたと思い出し、参詣した。
 尾道では、いたるところに、何々寺の看板が建っていて、まさしく寺の町だが、見
出したら切りがないので、浄土寺だけでお寺は済ませることにして、駅に戻った。
 12:25の山陽本線で、福山へ。新幹線に乗り換え、5時名古屋へ帰宅しまし
た。名古屋はまだ晴天でしたが、あの後、愛媛・広島は猛烈な強風の台風18号が襲
来したようで、しまなみサイクリングを諦めたのは正解でした。