古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

伊達公子さん

2004-07-03 | マラソン
 6月30日の中日夕刊に、スポーツライターの山崎浩子さんが、元プロテニスプ
レーヤの伊達公子さんについて寄稿していました。これが実に良い記事でした。思わ
ず嬉しくなって、中日を読んでいない方にも紹介したくなり、以下に引用する次第で
す。
【テニスプレーヤーの伊達公子がロンドンマラソンに挑戦し、無事完走したのは、耳
にしていた。が、そのドキュメントをテレビで見て、彼女のマラソンへの姿勢が生半
可ではなかったことに驚かされた。
 コーチ、トレーナー、そして練習パートナーにはシドニーオリンピック出場の市橋
有里と、その道のプロで脇を固め、綿密な計画をもとに練習を行う。管理栄養士の指
導を仰ぎながら、好きなケーキを口にせず、カロリー計算をしながら食事する。それ
も家ではそれぞれの食品のグラム数を量り、レストランでもシェフを呼んで、パスタ
は何グラム使ったのか聞くという徹底振り。もしかしたらそんじょそこらの現役プロ
アスリートよりもストイックなのではないだろうか。
 1995年WTA世界ランキングで4位に昇りつめ、96年のウィンブルドンで日本人女
性初のベスト4となった伊達は、同年絶頂時に引退した。その後、こどもたちにテニ
スの楽しさを教えるイベントを開催したり、テニス解説などで活躍。結婚もして充実
した毎日を送っている伊達が、そこまでストイックになれる要因とはいったい何だろ
う。
 自身は、引退後6年ぶりに出場した公式戦でアキレス腱を断裂し、ゲームを棄権、
不完全燃焼だったことから、そのモヤモヤしたものを払しょくしたかったと言ってい
たが、私は体に染みこんだ”体質”からきているのだと思う。
 現役時代、ストイックな毎日を過ごしている者の多くは、そんな生活から早く解放
されたいと願う。好きなものを食べ、遊びたいだけ遊べるという生活に恋い焦れてい
る。そして実際引退すると、目覚ましをセットせずに寝られるというささいなことま
で、たまらなくうれしかったりする。
 けれどそれも最初のうちだけ。想像していた生活に次第に物足りなさを感じてく
る。たとえ仕事が充実していても、毎日コツコツと積み上げて結果を出してきた現役
時代の充実感、達成感とは何かが違う。いつの間にか「もっと自分を追い込みたいと
いう欲望がわき「厳しさを乗り越えて初めて満足感が得られる」という体質が出来上
がっていて、それは引退して何年たってもなかなか変えられないのである。
 伊達も、初めは軽い気持ちで挑戦することを決めたマラソンでも、やるとなったら
「妥協はしたくない」という思いが、その体の中にも充満したことだろう。この厳し
さの後には得も言われぬ達成感があることを知っている彼女だからこそ、よりスト
イックとなっていったに違いない。
 初マラソンを3時間27分40秒という好タイムで走り抜けた伊達。彼女はこれか
らも”体質“からくる衝動を押えられず、ストイックになれるものに自ら飛び込んで
いくことだろう。】