shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

HEART

2009-03-02 | Rock & Pops (80's)
 漆黒の髪に抜群の歌唱力を持つシンガー、アン・ウィルソンと、ブロンドで絵に描いたような美貌を誇るギタリスト、ナンシー・ウィルソン。この才能豊かなウィルソン姉妹を核にしたカナダ出身の5人組ロック・バンド、ハートのデビューは75年、緊張感溢れるハードロックをベースにしながらも時折アコースティックでメロウな一面ものぞかせるそのアンビバレントな個性は唯一無比で、「クレイジー・オン・ユー」「バラクーダ」「ハートレス」といったヒット曲やライブ音源のゼッペリン・カヴァー「ロックンロール」「ユー・シュック・ミー」、ポール・マッカートニーの喉が張り裂けんばかりの極めつけのシャウト・ナンバーをメドレーにした「アイム・ダウン~ロング・トール・サリー」etcが大好きでよく聴いたものだった。
 その後、人間関係のもつれによるメンバーの脱退などでグループはガタガタになってしまったが彼女らは諦めず、崖っぷち状態から心機一転新メンバーを迎えてレコード会社を移籍し、再びトップに返り咲くためにゼッペリンやザ・フー、サバイバーなどを手掛けてきた辣腕プロデューサーのロン・ネヴィソンを起用して85年にリリースしたのがこのセルフ・タイトル・アルバム「ハート」なのだ。
 このアルバムの特筆すべき点は、オリジナルに拘らずに外部のソングライターを積極的に導入したことだろう。このあたりの展開はほぼ同時期に天国と地獄を経験し、80年代半ばに華麗な復活を遂げたエアロスミスに近いものがある。選りすぐりの10曲はキャッチーで多様性に満ち、どれを取ってもヒット性を秘めたものばかりで、ハートは全曲をライブと同じぐらいのノリと勢いでプレイし、その熱いロック・スピリットを銀盤に封じ込めた。そうとも知らずに軽~い気持ちで聴き始めた私は、ハート復活を高らかに宣言する冒頭の①「イフ・ルックス・クッド・キル」でいきなりガツン!とやられた。それは一切の無駄なゼイ肉を削ぎ落としハードでタイトな面を強調した鋭敏な仕上がりで、“女ロバート・プラント”の異名を取ったアンのヴォーカルが凄まじい。ハードでありながらメロディアスにロックするという離れ業に脱帽だ。
 ファースト・シングル②「ホワット・アバウト・ラヴ」は大仰な作風のパワー・バラッドで、力を持て余しているかのようなアンの爆裂シャウトが凄まじい。全米チャート10位まで上がってハート復活のきっかけとなった記念すべきシングルだが、やや作りすぎの感も否めない。セカンド・シングル③「ネヴァー」は「ネ~ェヴァ~、ネ~ェヴァ~、ネ~ェヴァ~♪」のサビのフレーズが耳に残るポップな曲だが、ドラムが叩きだすヘヴィーなリズムがサウンドをピリリと引き締めている。彼女らにとって初の全米№1に輝いたサード・シングル④「ジーズ・ドリームズ」は珍しくナンシーがリード・ヴォーカルをとった叙情的なバラッドで、アンとは又違ったハスキーな声(レコーディングの時に風邪をひいてたらしい...)が曲想とピッタリ合っていて、特にサビの部分のかすれる所なんかもうたまりません(≧▽≦)
 エッジの効いたハードなギターのリフがめっちゃカッコイイ⑤「ザ・ウルフ」、ドライヴ感抜群のロックンロールで①と並ぶお気に入りの⑥「オール・アイズ」、ヒューマンで温かみのあるバラッド⑦「ノーバディ・ホーム」、フォリナーのミック・ジョーンズみたいなギターのサウンドが印象的な⑩「シェル・ショック」と、さすがは「売れるアルバムを作るのが僕の使命」と豪語するロン・ネヴィソンだけのことはある。ハードなロックこそ実は曲が大切なんだということを世間に知らしめた傑作アルバムだ。

Heart- If Looks Could Kill

Heart - These Dreams

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