shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Kingdom Come

2009-08-07 | Hard Rock
 “クローン” と言う言葉はネガティヴなニュアンスを内包している。要するに“本物に似てはいるが、所詮はニセモノ” という否定的なイメージが常につきまとっているのだ。クローン牛しかり、クローン人間しかりである。今から約20年ほど前のこと、バイオテクノロジーの世界でではなく私の大好きなハードロックの世界で “クローン論争” が大いに盛り上がったことがあった。昨日取り上げたゲイリー・ムーアの「レッド・クローンズ」なんかはその最たるものだったが、要するにレッド・ゼッペリンそっくりのスタイル、音作りで大ヒットを飛ばした新人バンド、キングダム・カム(英語で “来世” という意味)が、アホな音楽評論家連中や心の狭いゼッペリン・ファン、そして同業者であるミュージシャンたちをも含めて、周りからボロクソにけなされ徹底的に叩かれ続けた一連の大論争(というかイジメに近いバッシング)のことである。私もFMの音楽番組で初めて彼らの曲「ゲット・イット・オン」を聴いた時はブッ飛んだ。 “これって「カシミール」やん...(゜o゜)” 確かにそのサウンドはゼッペリンのそれに酷似していたし、ヴォーカルのレニー・ウルフのハイトーン・ヴォイスはロバート・プラント唱法そのまんまだったが、何よりも強烈だったのは音楽そのものが放つ凄まじいまでのエネルギーで、この手の音が大好きな私は大コーフンしてCD屋へと走った。で、その時に買ったのが彼らのデビュー・アルバム「キングダム・カム」である。
 アルバムを通して聴いてみてまず思ったのは、 “ゼッペリンが再結成して本気出して作り上げた渾身のアルバム” と言えばそれでまかり通ってしまいそうなほどゼッペリンしてる、ってこと。特にレニー・ウルフは声質といい、歌い方といい、感情移入の仕方といい、往年のロバート・プラントそのものだし、バンドの音の組み立て方や空間の取り方も本家そっくりだ。しかしそのサウンドは決して単なるデッド・コピーではない。ゼッペリン的なブルース・ロックを一度完全に消化し、彼らのオリジナリティーをブレンドした上で、プロデューサーである巨匠ボブ・ロックが硬派なサウンド・プロダクションを施してガチガチに磨き上げた逸品なのだ。否定派のクリティック連中は二言目には “オリジナリティーが...” 云々と御託を並べるが、そんなものクソクラエだ。私は “つまらないオリジナル” よりも “素晴らしいクローン” を聴きたい。オリジナリティーがどーのこーのというのは素直に音楽を愉しめない眠たい連中のタワゴトにしか聞こえない。
 彼らを攻撃したミュージシャン連中だってそうだ。このアルバムは全米でプラチナ・ディスク、つまりミリオンセラーになる大成功を収めたのだが、それはすなわちこの音を渇望していたファンが全米だけで100万人以上いたということだろう。それだけのニーズがあるにもかかわらず誰も手を付けられなかったことを彼らが実践したにすぎない。勝手にゼッペリンを聖域視してやらなかったのか、それともゼッペリン・サウンドを再現するだけの能力がなかったのかは知らないが、とにかく彼らが売れたもんだから嫉妬しているようにしか思えない。みっともないねぇ、男のジェラシーは(笑)
 ということで私はこのアルバムが大好き(^o^)丿 もう何百回聴いたかわからないくらいだが、未だに飽きないどころか聴けば聴くほど好きになる。こんなアルバムは滅多にない。まずは①「リヴィング・アウト・オブ・タッチ」、イントロで骨太ドラムの一撃がビシバシきまるところでもう理性が吹っ飛んでしまうが、哀愁舞い散る泣きのメロディがたまらないキラー・チューンである。3分47秒からの「ホール・ロッタ・ラヴ」なリフは鳥肌モノだ。②「プッシン・ハード」、レニーのエモーショナルなヴォーカルが全開で、2分33秒からの “レッ・ザ・モモモモモモモゥメンツ...” にはゾクゾクする。クローンでも何でもエエもんはエエんじゃい!
 ③「ホワット・ラヴ・キャン・ビー」は「シンス・アイヴ・ビーン・ラヴィング・ユー」へのオマージュで、いきなり “クク、クッ、カム・トゥ・ミー・ナウ...” とレニーさん、完全にプラントが降臨してます(笑) 胸を締め付けられるようなブルージーなバラッドで、ヴォーカルもギターもため息が出るほど素晴らしいし、曲そのものの完成度も抜群に高い。この①②③の流れは完璧だと思う。
 ④「セヴンティーン」はドリフの「ヒゲダンス」のテンポを思い切り落として大仰なドラムの波状攻撃にさらし、ヘヴィーなリフを曲全体にまぶして一丁上がり、みたいな単調な曲展開で、ちょっと間延びする感じは否めない。⑤「シャッフル」は “どこかで聞いたような感じはするがそれが何か思い出せない” 系のメロディーが支配するノリの良い曲。2分32秒から大盤振る舞いされるレニーの追っかけコーラスが「移民の歌」してて思わずニヤリとしてしまう。
 ⑥「ゲット・イット・オン」、衝撃のファースト・シングルである。そう、このイントロ、このリフ、このシャウト、この絶妙な間、この爆裂ドラム... すべてが圧巻だ。私の知る限り最高最強のゼッペリン・オマージュで、死ぬまで聴き続けたい超愛聴曲だ。⑦「ナウ・フォーエヴァー・アフター」はこのアルバム中一番ゼッペリンに似てない曲(笑)で、キャッチーでノリの良いオーソドックスなハードロックに仕上がっている。⑧「ハイダウェイ」はこれまたヘヴィーなリフがカッコ良いナンバーで、ビシバシきまる打ち下ろしドラミングが快感だ。エイジアっぽいシンセを絶妙な隠し味に使っているあたりに彼らの恐るべき音楽的センスの一端が垣間見れる。
 ⑨「ラヴィング・ユー」は「ゼッペリンⅢ」で顕著だったブリティッシュ・トラッド・フレイバーたっぷりの1曲で、彼らのゼッペリン愛がダイレクトに伝わってきて嬉しくなってしまう。レニーのエモーショナルなヴォーカルの吸引力が強烈だ。⑩「シャウト・イット・アウト」は⑦同様あまりゼッペリンに似てない曲で、ストレートなハードロックと言う感じ。どちらもセカンド・アルバムの作風に似ているのでこれが彼らの素のサウンドなのかもしれない。
 あれから20年が経ち、 “クローン論争” も今や懐かしい思い出になってしまったが、私の中でこのアルバムは80'sハードロック名盤10選に必ず入れたいスーパーウルトラ愛聴盤として永遠の輝きを放っているのだ。

Kingdom Come - Get It on

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