shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Dark Side Of The Moon A Cappella

2010-12-06 | Cover Songs
 ピンク・フロイドの名盤「狂気」は中身の音楽だけでなく、その器であるジャケットも素晴らしい。制作を担当したのはヒプノシスというイギリスのデザイン・グループで、彼らは他にもフロイドの「原子心母」「炎」「アニマルズ」、ゼッペリンの「聖なる館」「プレゼンス」、T.レックスの「エレクトリック・ウォリアー」といった印象的なジャケットを手掛けているし、あまり知られていないかもしれないがポールの「ヴィーナス・アンド・マース」や「スピード・オブ・サウンド」、「タッグ・オブ・ウォー」なんかも彼らのデザインだ。ユーミンの「昨晩お会いしましょう」や「ヴォイジャー」まで担当しているのには正直ビックリだが、そんな中でもやはり「狂気」のアートワークは群を抜いて素晴らしいと思う。
 私はパロジャケが大好きで、面白そうだと思えば中身を気にせずに買ってしまうところがある。パロジャケの成否を決めるのはその元になるオリジナル・デザインが優秀かつ有名なこと。そういう意味で私の “パロジャケ元ネタ・トップ3アルバム” は、「アビー・ロード」、「サージェント・ペパーズ」、「ウィズ・ザ・ビートルズ」なのだが、ビートルズ以外では何と言ってもこの「狂気」が一番面白い。三角形のプリズムの部分を他の物に置き換えることによって様々なヴァリエーションが生まれてくるからだ(←一度Googleの画像検索で “Dark Side Of The Moon” を検索してみて下さい。めっちゃ面白いですよ...)。そんな数ある「狂気」パロジャケ盤の中で、中身の音楽も十分傾聴に値すると思えるのがこの「ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン・アカペラ」だ。
 このアルバムの存在は2年ほど前に CD BABY というアメリカのマイナー・レーベル専門通販サイトで偶然知ったのだが、既に在庫切れでダウンロード・オンリーとなってしまっていた。ジャケットも何もナシでしかも音の悪い MP3 でダウンロードするなんて論外だったので、私はそれ以降様々な通販/オークション・サイトで網を張って辛抱強く待ち続け、先月やっとのことで eBay UK に出た盤をゲット、絶版でプレミアが付いていることを考えると新品送料込みで£16なら御の字だ。
 この盤はタイトルからも分かる通りフロイドの「狂気」をヴォーカル・パーカッションを含む9人のシンガーで再現した完全アカペラ・ヴァージョンで、何よりもまずその斬新な発想に驚かされる。それもよりにもよって SE を駆使したあのアルバムを全曲丸ごとコピーというのだからこれはもう参りましたと平伏すしかない。
 ①「スピーク・トゥ・ミー」は心臓の鼓動音からポコポコポコという木魚みたいな音(←当然全部声だけで作られてます...)がフェードインしてきてアカペラで例のメロディーへとなだれ込む一連の流れに思わず耳が吸い付くし、②「オン・ザ・ラン」のシンセ・サウンドも “超高速ダマナマ・スキャット(?)” で再現していてもう見事という他ない。
 ③「タイム」では例の時計が一斉に鳴り出すパートをみんなでよってたかって “Get up!” 、 “Good morning!” 、 “It’s time to wake up!” などと叫んでいるところが笑えるし、何と言ってもギルモアのギター・ソロを人声だけで絶妙に表現しているところが凄い。⑤「マネー」はレジやお金の SE をヴォーカリーズで再現しているパートが聴き所。やがて口ベースが滑り込んできて(←ここ大好き!)例のメロディーが歌われるのだが、バックのコーラス・ワークは万華鏡のようなカラフルな音世界を作り上げるのに成功しており、まさに絵に描いたような名曲名演と言えるだろう。
 最初は興味本位で購入したのだが、とにかく聴けば聴くほどその世界に引き込まれてしまうこのアルバム、特にオリジナルの「狂気」を徹底的に聴き込んだ後にコレを聴けば驚倒すること間違いなし。そしてまたオリジナルが聴きたくなってくる、そんなニクイ1枚なのだ。

マネー


Vocomotion - Time (Pink Floyd cover)


Pink Floyd - On the run by Vocomotion

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