shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

She's Something / MAYA

2009-05-06 | Jazz Vocal
 レコ屋でエサ箱を漁っていて店内に流れる音楽に心を奪われ、それがきっかけで未知の盤やアーティストを発見した話はこれまで何度か書いてきたと思うが、このMAYAとの出会いもそんな感じだった。もう7年も前のことになるが、今は亡きミナミの名店ワルツ堂でCDを見ているといきなり「私はピアノ」の軽快なボッサ・カヴァーが店内に鳴り響いた。しかもそれは日本語ではなく、どうやらポルトガル語で歌われているようだ。もちろん個々の単語とか意味とかは全然分からないけれど、アイルトン・セナのインタビューを通してポルトガル語の雰囲気やリズムだけは何となく掴めるようになっていた私は「サザンの曲をブラジリアン・シンガーがカヴァーしてんのか?えらいこっちゃ(>_<) これは買わねば!!!」と大コーフンして早速レジに確認に行くと、それはMAYAというシンガーの「シーズ・サムシング」という盤で、ジャケットには肘をついて気だるそうにこっちを見ている小悪魔系(?)の女性が写っていた。日本人ぽい感じの娘やなぁ... あの発音はハーフかもしれんな... などと考えつつ、「私はピアノ」のポルトガル語ヴァージョンをここで逃がしてたまるかとその場で即購入した。
 家に飛んで帰った私は買ってきたばかりの盤をCDプレーヤーに入れ、トラック・ボタンの5を押した。もちろん⑤「私はピアノ (Eu sou um piano)」である。60年代ロマン歌謡の魅力を凝縮したような原曲が持つ郷愁を増幅させるようにコモエスタなピアノがひらひらと舞い、サウダージなギターがボッサ・リズムを刻む中、MAYAの巻き舌全開のポルトガル語が耳に飛び込んでくる。おぉ、コレめちゃくちゃカッコエエやん!英語と違って何言うてるのか全然わからへんのもミステリアスでエエわ(^o^)丿 ファースト・ヴァースが終わり、哀愁舞い散るギター、歌心溢れるヴィブラフォンと立て続けに素晴らしいソロが展開され、そっちに心を奪われているとセカンド・ヴァースはいきなり “人も羨むよな仲がぁ~♪” と日本語で入ってくる。意表を突かれて “えっ?” と思った途端に “ペロ デレペンテ ノエストラモォ~♪” とポルトガル語にスイッチする、この瞬間がゾクゾクするほどかっこいい(≧▽≦) こんなんカフェで流したらバカウケするやろなぁ... 耳に馴染んだハラボーの “昭和歌謡ヴァージョン” も捨てがたいが、どこまでもクールにキメるMAYAの “ボッサ・スウィング・ヴァージョン” もたまらなく魅力的だ。後で知ったことだが、彼女はれっきとした日本人で、英語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語を独学で勉強しネイティヴ並みのリズムで歌うことを体得したというから驚きだ。とにかくこの1曲で私はすっかりMAYAに魅せられてしまった。
 ②「イン・ザ・スティル・オブ・ザ・ナイト」では冒頭の1分10秒間をブラッシュとの掛け合いでひたすら疾走し、ジャズ・フィーリングに溢れる素晴らしいヴォーカルを聞かせてくれる。まるで現代に蘇ったアニタ・オデイのようだ。ゲイリー・バートンみたいなスインギーなヴァイブも、クロード・ウイリアムソンのようなドライヴ感溢れるピアノもすべてが最高だ!
 ギター、ベース、ドラムスのトリオの素晴らしい演奏ををバックにミディアムでスイングする⑥「イズント・シー・ラヴリー」は言わずと知れたスティーヴィー・ワンダーの大ヒット曲だが、彼女はこの名曲を臆することなく見事に自分の世界に引き込んでスインギーなジャズに仕上げている。他にもブラジリアン・フレイヴァー全開の①「フィール・ライク・メイキング・ラヴ」、重厚なベースとのデュオがカッコイイ③「ベサメ・ムーチョ」、ポルトガル語でしっとりと歌う⑩「星に願いを (Se uma estrela aparecer)」と、自分の好きな曲を好きなスタイルで歌う姿勢が素晴らしい。
 彼女はこの後、コロムビア・レーベルに移籍して3枚のCDを出しており、そこでもサザンの「夏をあきらめて」や「恋の女のストーリー」、ミーナの「砂に消えた涙」、コースターズの「ラヴ・ポーション№9」と、ジャンルの枠にとらわれない選曲で楽しませてくれる。特に「キス・オブ・ファイアー」に入ってる「マイアミ・ビーチ・ルンバ」はオシャレな女性ヴォーカル好きにオススメの逸品なので、興味のある方は是非一度聴いてみて下さい。

MAYA 『She's Something』&『Best Of Early Years』より  私はピアノ

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