shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Those Were The Days / Dolly Parton

2009-06-09 | Cover Songs
 この前の「悲しき天使」大会の時は “フレンチ強化週間” ということもあって、ヨーロッパの歌姫の5ヴァージョンを取り上げたが、その時に番外編として触れたドリー・パートンを久しぶりに聴いて「こんなに良かったっけ?」と感激し、アルバムの他の曲も含めて脳内ヘヴィー・ローテーション状態に突入してしまった(笑) ミイラ取りがミイラになるというか、まるで自分で仕掛けた罠に自分がハマッたような感じだが、こういった “手持ち音源再発見” のあれこれもまた楽しいものだ(^o^)丿
 そもそもドリー・パートンに限らずカントリー、ブルーグラス系の音楽は日本では人気薄で、ただでさえシェアの低い洋楽部門の中でもかなり下位に位置するのではないだろうか?タワーレコードやHMVといった外資系大型店を除けば、普通のCDショップにはカントリーやブルーグラスのコーナーすらないというのが実情だろう。きっと今の日本には “アメリカ人にとってのルーツ・ミュージック” とも言うべきカントリー・ミュージックを受け入れ、楽しむ土壌がまだないのかもしれない。しかしただそれだけの理由でこんな素晴らしいアルバムが日の目を見ないのはもったいない。ぜひここでスポットライトを当ててみたい。
 私が初めて彼女の歌を聞いたのは映画「9時から5時まで」の同名のタイトル曲(81年)が全米№1に輝いた時で、あまりカントリーとかは意識せずに良質のトップ40ポップスとして愛聴していた。その2年後、大御所ケニー・ロジャースとのデュエット「アイランド・イン・ザ・ストリーム」がリリースされ、ケニー・ロジャースをあまり好きでなかったこともあって最初はイマイチやなぁ...と思っていたのがラジオやテレビのチャート番組で何度も耳にするうちにいつの間にか気に入ってしまった。特にサビに至る盛り上がりのパートでドリーのバネのある力強い歌声が効いており、ナヨナヨしたケニー・ロジャースを完全に喰っていた。それ以降、ポップチャートで彼女を耳にすることはなかったが、新作アルバムが出ると注目するようにしていた。
 そんな彼女が2005年にリリースした、自身3枚目に当たるフル・カヴァー・アルバムがこの「ゾーズ・ワー・ザ・デイズ」なのだ。過去の2枚がシンセ入り(アホか!)だったり選曲がイマイチだったのに対し、今回はビシーッとブルーグラス・スタイルでキメているし、選曲も文句なしの名曲アメアラレ攻撃だ。更に凄いのは超豪華なゲスト陣で、①「ゾーズ・ワー・ザ・デイズ」にはメリー・ホプキン、⑥「ミー・アンド・ボビー・マギー」にはクリス・クリストファーソン、⑦「クリムゾン・アンド・クローバー」にはトミー・ジェイムズ、⑨「ターン・ターン・ターン」にはロジャー・マッギンと、それぞれの曲のオリジナル・シンガーや作者と共演するという普通では考えられないような贅沢なキャスティングだし、③「花はどこへ行った」では何とノラ・ジョーンズとデュエットし⑧「クルーエル・ウォー」ではアリソン・クラウスがバック・コーラスで参加しているのだ。こういった超一流のゲストが彼女のレコーディングに飛んでくるのもやはり笑顔を絶やさず誰からも愛される彼女の人柄のなせるワザなのだろう。
 それにしてもロシア民謡①「ゾーズ・ワー・ザ・デイズ」が40年の時を経て海を越えてアメリカに渡り、ブルーグラス・スタイルで歌われることになろうとは、一体誰が予想しただろうか?バンジョーやマンドリン、フィドルのサウンドですっかりお色直しされてブルーグラスの名曲に変身しても、曲の髄と言うべき哀愁は全く失われていない。このヴァージョンを聴いて改めてこの曲の偉大さ、力強さを思い知らされた気がする。アルバム冒頭を飾る超強力なナンバーだ。
 私は生ギター1本でブツブツ歌うフォーク・ソングのスタイルがどうも苦手で、②「風に吹かれて」はダイアナ・ロスの、③「花はどこへ行った」はウエス・モンゴメリーのカヴァー・ヴァージョンこそが最高と信じているのだが、ブルーグラス・スタイルがフォーク・ソングにこれほど合うとは思いもしなかった。特に③は彼女の力強いヴォーカルが聴く者の心に響くキラー・チューンだ。
 ⑦「クリムゾン・アンド・クローバー」の後半の盛り上がりなんかオリジナルを凌駕するような凄まじさ(ただしラストのコマ切れヴォーカル処理はやり過ぎ!)だし、12弦ギターのイメージがこびり付いている⑨「ターン・ターン・ターン」なんかもうバンジョーの音色がコワイくらいに曲想に合っていて目からウロコとはこのことだ。
 こんな調子でフォーク・ロックの名曲たちを次から次へとチャーミングなブルーグラスに料理していくドリー... 還暦を迎えてもまだまだその力強い歌声は健在だ。

DOLLY PARTON THOSE WERE THE DAYS

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