shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

真夜中のドア / 松原みき

2021-08-08 | J-Rock/Pop
 先日、職場で仲良しの同僚Aさんが “shiotchさんってレコードとかCDいっぱい持ってはったよね?” と話しかけてきた。“まぁ、ジャンルはめっちゃ偏ってるけどいっぱいあるで。” と答えると “松原みきのレコードって持ってない?” と仰る。松原みきとはこれまた懐かしい名前だ。何を隠そう私は彼女の大ファンで、特に高校~大学時代にかけては彼女のレコードをよく聴いたものだった。
 当時の邦楽界はちょうど過渡期といえる時期で、古き良き昭和歌謡とは一線を画す大貫妙子や門あさ美、尾崎亜美、EPOといったフレッシュな女性シンガー達が次々とシーンに現れ、レコード会社も彼女らを一括りにして “ニュー・ミュージック” というワケのわからない新ジャンルの旗手として喧伝していたような記憶があるが、そんな中で私がその声に惚れ込んで聴きまくっていたのが松原みきだった。
 彼女のデビュー曲「真夜中のドア」を初めて聴いたのは確かラジオの音楽番組だったように思うが、彼女の歌声がラジオから流れてきたのを聴いて “めっちゃエエ曲やん!!!” と一発で気に入ってすぐにシングル盤を買いに走ったし、デビュー・アルバム「Pocket Park」に付いてきたポスターを眺めながら “エエ歌手見つけたわ...” と悦に入っていたのも今となっては懐かしい思い出だ。
 今回の私的リバイバルのきっかけを作ってくれたAさんは大のクラシック・ファンで(←何故かリッチー・ブラックモアも好きらしいが...)彼の口から邦楽のアーティストの名前なんてそれまで聞いたことがなかったのだが、そんな彼が今頃になって急に松原みきとは一体どういう風の吹き回しなのだろう?と興味をそそられた私が “何で松原みき知ってるん?” と聞くと “これでも昔ファンやったんですよ。で、今朝ラジオから「真夜中のドア」が流れてきて懐かしゅうなったんです。でもレコードとかもうどっかいってしもうて聴けへんし、ひょっとしてshiotchさんやったら持ってはるかなぁ...と思うたんですわ。” とのこと。
 へぇ~、Aさんも彼女のファンやったんか... とすっかり嬉しくなった私は帰ってすぐにレコード棚を引っ掻き回して手持ちのみきちゃん音源をすべてCDに焼いてさしあげたのだが、久々に聴く松原みきは懐かしいと同時にすっごく新鮮で、当時は気付かなかった発見が随所にあって聴くのがめっちゃ楽しい。それをきっかけに最近ヘビーローテーションで彼女のレコードを聴いているのでこのブログでも特集することにした。第1弾は彼女の代名詞的存在と言っても過言ではない日本ポップス史上屈指の大名曲「真夜中のドア」だ。
 ポップスの世界で言えばコニー・フランシスの「Vacation」やリトル・エヴァの「The Loco-motion」、ジャズの世界で言えばドリス・デイの「Sentimental Journey」やリー・ワイリーの「Manhattan」のように、優れたシンガーには必ず “極めつけのこの1曲” というものが存在し、歌い手の声質や歌唱法と楽曲の旋律との絶妙なマッチングによって時代を超えて聴き継がれるレベルの奇跡的名曲名唱が生まれるものだが、松原みきにとって「真夜中のドア」という曲はまさにそんな1曲であり、ヴォーカル・演奏・歌詞・メロディー・アレンジと、全く文句のつけようがない完全無欠のスーパーウルトラ大名演だと思う。
 そもそも松原みきという人はジャズもバリバリに歌いこなせるくらいの実力派シンガーで、ジャズ・クラブで飛び入りで歌ったところをジャズ・ピアニストの世良譲氏に見い出されてデビューしたという凄いエピソードの持ち主なのだが、この曲でも天性の伸びやかな歌声で歌詞の世界を見事に表現し、聴く者をグイグイ引き込んでいくところが実に素晴らしい。そのクールで洗練されていて親しみやすいヴォーカルは唯一無比で、まさに松原みき一世一代の名唱と言っていいと思う。
 そんな彼女を支えるバックのミュージシャンたちの演奏も見事という他なく、歌心溢れる松原正樹(←あの「微笑み返し」のソロで有名な超一流スタジオ・ミュージシャン)のギター、特にエンディングのドラマチックなソロ・フレーズにはもう参りましたと平伏すしかない。私の知る限り間違いなく彼のベスト・ソロだと思う。又、闊達なフレーズで楽曲にえもいわれぬドライヴ感を生み出す後藤次利のベースも、正確無比なリズムを刻み続ける林立夫のドラムも圧倒的に、超越的に、すんばらしい!!! いやぁ、ホンマに最高ですわ... (≧▽≦)
 聞くところによるとこの曲はストリーミング回数を集計したグローバル・チャートで去年の末に約3週間にわたって世界1位を記録したという。繰り返すが41年前の日本の曲が “世界1位” をとったのだ。まさに空前にして絶後の快挙である。彼女が若くして亡くなってしまったことが返す返すも残念だが、色褪せない彼女の歌声はこれからも国境を超え、世代を超え、時代を超えて聴き継がれていくことだろう。
松原みき 真夜中のドア STAY WITH ME | Miki Matsubara | Japan
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