shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ジャンゴの10インチ盤特集

2018-03-10 | Gypsy Swing
 ジプシー・ジャズを聴き始めてからかれこれもう10年以上になるが、初心者の頃の私は決してジャンゴ・ラインハルトの良い聴き手ではなかった。というのも私はジャンゴの演奏に付き物の古臭いヴァイオリンやクラリネットの音が大の苦手で、ギターとリズム楽器以外の余計なものが一切入っていないコンテンポラリーなマヌーシュ・ギタリスト達の演奏ばかり聴いていたからだ。そんな中で特に気に入ったのがローゼンバーグ・トリオやビレリ・ラグレーンなのだが、その両者ともに事あるごとにジャンゴへのリスペクトを口にし、ジャンゴが取り上げた曲を嬉々として演奏するのを見るにつけ、“やっぱりジャンゴを聴かんとアカンかなぁ...”と思い始めた。
 そしてある時、ジャンゴの5枚組CDボックスがめっちゃ安かったのを見て試しに購入、確かにヴァイオリンやクラリネットは鑑賞の邪魔だが、ジャンゴのプレイに集中して聴いてみると、私が愛聴しているコンテンポラリー・マヌーシュ・ギタリスト達のプレイで聴かれる超絶テクニックが出るわ出るわのわんこそば状態なのだ。ちょうどズート・シムズやスタン・ゲッツのファンがそのルーツとでも言うべきレスター・ヤングを聴いて驚倒するようなものだろう。
 とにかく「マイナー・スウィング」や「黒い瞳」のような王道マヌーシュ・スタンダードから「デュース・アンビエンス」や「秋の唄」といった知る人ぞ知るジプシー・ジャズの隠れ名曲、そして「アフター・ユーヴ・ゴーン」や「アイ・ガット・リズム」のようなバリバリのジャズ・スタンダード・ナンバーに至るまで、まさに鬼神のようなプレイで縦横無尽にスイングするのだからこれはもう参りましたと平伏すしかない。
 そういうワケでジャンゴに関してはそのCDボックスをひたすら聴きまくってきたのだが、前回書いたように今年に入ってからひょんなきっかけで彼の10インチ盤を集中的に買い漁ることに... 今日はそんな中から特に気に入っている盤を何枚か取り上げようと思う。

①Django Reinhardt (Pathé 33 ST 1012)
 ジャンゴで一番好きなレコード・ジャケットがコレ。ステージで演奏するジャンゴのモノクロ写真とタイトル文字の赤色のコントラストが最高だ。しかもこの盤はジャンゴの代表曲の一つである「黒い瞳」(Dec, 1940)が入っていて選曲も良いし、ジプシー魂が炸裂する熱い演奏も申し分ない。ジャンゴでどれか1枚と言われれば迷わずコレだ。尚、雄鶏マークがユニークなこのパテというレーベルはフランスのEMI系列にあたるらしい。
Les yeux noirs django reinhardt


②Django Reinhardt et Stephane Grappelly (Decca 123 998)
 ジャンゴのレコードを片っ端から買い漁って分かったのは、彼の名演はラ・ヴォワ・デュ・ソン・メートル(蓄音機とニッパー犬、つまりフランスのRCAビクター)とデッカの2つのレーベルに集中しているということ。この“赤デッカ”盤には有名なスタンダード・ナンバーが多く収録されていて、中でも「ゼム・ゼア・アイズ」(Jun, 1938)の圧倒的なスイング感には言葉を失う。コレを聴いて身体が揺れなければジプシー・ジャズのスイングとは無縁ということだろう。
Django Reinhardt - Them There Eyes - Paris, 14.06.1938


③Django Reinhardt et Stephane Grappelly (Decca 124 015)
 1930年代のジャンゴにハズレ無しだが、上記の“赤デッカ”盤と対を成すこの“黄デッカ”盤も1938~1939年のホット・クラブ・クインテットのセッションから収録されているので悪かろうはずがない。特にジャンゴの超絶技巧が堪能できる「トゥエルフス・イヤー」(Mar, 1939)のカッコ良さは筆舌に尽くし難い。
Django Reinhardt - Twelfth year


④Swing From Paris (Decca LFA 1139)
 友人の901さんが “めちゃくちゃスイングしてるで!” とススメて下さったのがこのレコード。仏デッカ盤は滅多に市場に出てこないようだが、私は運良くオーストラリア・デッカの盤を見つけれたので即購入。「スウィート・ジョージア・ブラウン」(Jan, 1938)の2分28秒あたりでジャンゴがグラッペリに“One more, Steph, one more!” と声をかけるところがたまらなく好きだ。
Django Reinhardt - Sweet Georgia Brown


⑤Les Premiers Enregistrements de Django Reinhardt (Pacific LDP-A 1317 Std)
 レコード・レーベルで “パシフィック” といえばアメリカの “パシフィック・ジャズ” を思い浮かべるが、このレコードはウエスト・コースト・ジャズとは何の関係も無いフランスの “パシフィック” レーベル。1935年の4つのセッション音源から取られており、初期のホット・クラブ・クインテットの演奏が愉しめる。「アイヴ・ハド・マイ・モーメンツ」(Sep, 1935)の1分06秒あたりから一転してテンポ・アップし、一気呵成に駆け抜ける怒涛の展開がたまらんたまらん... (≧▽≦)
Django Reinhardt - I've Had My Moments - Paris, 02.09.1935


⑥Django's Guitar (Angel ANG 60011)
 1955年にアメリカのエンジェルというレーベルからリリースされたこのレコードは大人し目の演奏が大半を占めているし、ビニールの質がイマイチでサーフェス・ノイズが多いしで、決して愛聴している盤ではないのだが、「アイル・シー・ユー・イン・マイ・ドリームス」(Jun, 1939)の歌心溢れるプレイだけは別格中の別格だ。リズム・ギターとベースを従えたトリオでメロディーを紡いでいく様はまさに天衣無縫という言葉がぴったり。 “歌うギター” とはこのことだ。
I'll See You In My Dreams By Django Reinhardt

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