shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Jazz and '70s

2009-05-31 | Cover Songs
 2週間ほど前、「ジャズ・アンド・80s パート2」というCDを取り上げたが、その時点で “USカリフォルニアから直送中” だった姉妹盤「ジャズ・アンド・70s」が届いた。本当はもっと早くに届いていたのだが、例の「チック・ハビット」に端を発した “フレンチ・ポップス・パワープッシュ” による “イエイエ強調週間” によって紹介が遅れてしまった(>_<)
 この「ジャズ・アンド・70s」のようなコンピレイション・タイプのカヴァーCDは選曲が命と言ってよく、何の特徴もない定番曲オンパレードでは面白味に欠けるし、かといって奇をてらいすぎて不自然極まりない奇天烈カヴァー大会になってしまっては元も子もない。それでいてアルバムのコンセプトに沿った歌と演奏でなければいけないのだから中々大変だ。そういう意味でもこの「ジャズ・アンド・70s」はこの手の盤に求められる様々な基準を軽くクリアしていると思う。
 収録曲で真っ先に目を引いたのがクールトレーン・カルテットによるディープ・パープルのカヴァー④「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だ。パープルをジャズに??? 期待半分不安半分でプレイボタンを押すと、スピーカーから流れてきたのはハードロックのハの字も感じさせない、実に粋でオシャレな女性ジャズ・ヴォーカルだった。あの有名すぎるほど有名なイントロのギター・リフがアンニュイな歌声で “ディンダンダン ディンダンディア~♪” とヴォーカライズされ、まるでケニー・バレルの「ミッドナイト・ブルー」を彷彿とさせるようなブルージーなジャズが展開されていく。瀟洒なブラッシュ・プレイも雰囲気抜群だ。ハッキリ言ってこの1曲だけでもCD代の3倍の価値がある。
 ステラ・スターライト・トリオによるピンク・フロイドのカヴァー①「タイム」にも驚かされた。イントロの時計の音で有名な、あの名盤「狂気」収録のヘヴィーなプログレ・ナンバーが、もうあり得ないっ!!!と思えるような洗練されたフォービート・ジャズと化しているのだ。ピンフロの余程の大ファンでない限り、何の予備知識もなしに聴かされれば “かっこええジャズやなぁ... (≧▽≦)” としか思わないだろう。 “コンコード・レーベルから出たギター入り女性ヴォーカルの新譜です!” で十分通用するのではないか?この曲もブラッシュが大活躍で、変幻自在のプレイでジャジーな雰囲気を大いに盛り上げている。
 イヴ・セント・ジョーンズが歌う⑥「ロンドン行き最終列車」ではELOのオリジナル・ヴァージョンの持つ煌びやかなポップ性を抑えて曲の髄を抽出し、浮かび上がってきた素朴なメロディーをしっとりした女性ヴォーカルが淡々と歌い綴っていく。これはアナケリーによるピーター・フランプトン(懐かしいっ!!!)のカヴァー⑧「ショウ・ミー・ザ・ウェイ」や48thセント・コレクティヴによるスーパートランプ(超懐かしいっ!!!)のカヴァー⑪「ブレックファスト・イン・アメリカ」にも言えることで、70sを飾った名曲たちが換骨堕胎され、ノスタルジーではなく “今の音” として屹立しているのだ。もう見事としか言いようがない。
 ヌ・メン4ソウルによるキャロル・キングのカヴァー⑩「君の友達」にもビックリ(゜o゜) 何と山下達郎もぶっ飛ぶヒップなアカペラ・ナンバーになっているのだ。これをジャズと呼ぶかどうかはさておき、その斬新な発想には舌を巻く。ここまでくるとオリジナルとは全くの別物と考えた方がいいかもしれない。賛否両論分かれそうなナンバーだが、そのオンザストリートコーナーなノリは一聴の価値アリだ。
 カレン・ソウザによるCCRのカヴァー⑤「雨を見たかい」のアーシーなグルーヴもジャズというよりはジャジーなブルースといった感じで、ロック・ファンにもすんなり受け入れられそうな逸品だ。ロッド・スチュワートの “金髪美人にヒョウ柄タイツ” 時代の大ヒット②「ダ・ヤ・シンク・アイム・セクシー」はあの軽いディスコ曲がこんなスクエアなジャズに変わるのかと感心するくらい良く出来ている。テンポを落として曲の重心を下げ、落ち着いたジャズ・ヴォーカルを聴かせてくれるのはカサンドラ・ベックだ。ジャズスティックスがそんな彼女をフィーチャーして仕上げたフリートウッド・マックのカヴァー⑦「ドント・ストップ」なんか完全にストレートアヘッドなジャズと化しているし、ザ・ブライアン・J・ホワイト・カルテットによるゼッペリンのカヴァー⑫「天国への階段」も数ある “階段カヴァー” 曲を集めた「ステアウェイズ・トゥ・ヘヴン」に収録されていてもおかしくないような落ち着いた男性ジャズ・ヴォーカル・ナンバーになっており、間奏部のギター・ソロなんかはもう完全にジャズのノリだ。
 「ジャズ・アンド・80s」「同パート2」「同70s」と、このシリーズは決して私の期待を裏切らない。勝手知ったるロック/ポップスの愛聴曲がジャズというフォーマットで新たな生命を吹き込まれていく様はスリリングですらある。これで同シリーズで持っていないのは90sだけになってしまった。原曲を1つも知らないのでそういう面での面白味は皆無に等しいが、まぁカヴァー集としてではなく、未知の新曲が12曲も入ったオシャレなジャズ・ヴォーカル・コンピCDと考えればいいのかもしれない。

Smoke On The Water_Jazz and '70s

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