shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Last Concert / Modern Jazz Quartet

2010-02-17 | Jazz
 ジャズにしてもロックにしても、アーティストの音楽性というのはまずそのルーツに根差した確固たるサウンドがあり、それを橋頭保にして様々なエッセンスを取り込んでいくというパターンが多いのだが、ごく稀なケースとして、相反する二面性を同時に保持しているユニークなアーティストがいる。私にとってそんなアンビバレントなグループの筆頭に挙げられるのがモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)である。
 MJQ はどんなジャズ入門用ガイド本にも載っていると言ってもいいぐらいの人気コンボで、ジャズ初心者の頃の私もご多分にもれず、推薦盤として紹介されていた「ジャンゴ」や「コンコルド」を買いこんだ。その抑制の効いたクールなサウンドは唯一無比なもので、特に哀愁舞い散る「ジャンゴ」やメロディアスにスイングする「ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ」なんかはめちゃくちゃ気に入って聴いていた。しかしその一方でピアニスト、ジョン・ルイスの導入したクラシック的な要素には本能的に違和感を覚え、全く聴く気にならないトラックもいくつかあった。
 ポジティヴ思考の私は “まぁ全曲楽しめへんでも何曲か当たりがあればそれでエエわ(^.^)” と自分に言い聞かせ、第2第3の「ジャンゴ」や「ソフトリー」を求めてやはりジャズ本で推薦されていた「フォンテッサ」と「たそがれのベニス」を買ってきた。しかし聴いてみてビックリ、どちらもスイングのスの字もない、とてもジャズとは思えないような眠たいサウンドで、私は “コレのどこがジャズやねん!” と怒りのあまり盤をブチ割りたくなった。今から考えれば音楽評論家の提灯記事を信じた私がアホだったのだが、結局割らずに(笑)中古屋へ即、売り飛ばしたが、あの非ジャズ的な響きを持ったクラシックもどきのサウンドがトラウマになって、その後しばらく MJQ を聴かなくなった。
 そんな私の眼を開かせてくれたのが彼らの解散コンサートの模様を録音したライヴ盤「ザ・ラスト・コンサート」だった。ライヴだからか、あるいは “MJQ としてはこれが最後” という特別な想いからか、スタジオ録音盤では端正な演奏が売り物だった彼らが実に熱いプレイを展開しているのだ。これには本当に驚いた。ヴァイブのミルト・ジャクソンはグループを離れたソロ作品の数々でファンキー&ブルージーなプレイを聴かせてくれていたので元々大好きだったが、鼻持ちならないクラシックかぶれ野郎と思っていたジョン・ルイスまでもが火の出るようなアドリブを連発している。ベースのパーシー・ヒース(←私的には最も過小評価されているジャズ・ベーシストだと思う...)とドラムスのコニー・ケイのリズム・セクションは文句ナシにスイングする第1級のリズム・セクションだ。そんな4人が一丸となって繰り広げるハイ・テンションな演奏が圧巻で、私はこの盤を聴いて “MJQ はライヴに限る!” と確信した。
 Disc-1 では兎にも角にも①「ソフトリー...」に尽きる。この曲はこれまでも何度も繰り返し演奏され、レコード化されてきてそのどれもが名演なのたが、ここで聴ける「ソフトリー...」はそれらの存在が霞んでしまうぐらいの素晴らしさ。いや、世に存在する全ての「ソフトリー...」の中で断トツの私的№1がこのヴァージョンだ。⑥「ブルース・イン・A・マイナー」は起承転結のハッキリしたドラマティックな構成を誇る8分近い大作ながら、そのスインギーなプレイの波状攻撃で一気呵成に聴かせてしまう。ただ、ライナーにジョン・ルイス作って書いてあるけど、どう聴いてもテーマになってるメロディーは「朝日のあたる家」そっくりだ。まぁ別にどっちでもエエねんけど...笑
 チャーリー・パーカーの⑦「コンファメーション」ではグループが一丸となって疾走するようなホットでファンキーなプレイが楽しめるし、⑫「イングランズ・キャロル」もめちゃくちゃスイングしていて、コレがあの眠たい「フォンテッサ」を作ったコンボかと耳を疑いたくなるぐらい素晴らしい。アドリブ・フレーズとかも含めた全体の雰囲気は①「ソフトリー」の弟分みたいな感じの曲だ。
 Disc-2 では⑨「ジャンゴ」でスタジオ録音ヴァージョンとは全く違うアドリヴを聴かせるミルトの凄さに改めて驚愕。無尽蔵と思えるかのように汲めども尽きぬアドリヴ・フレーズの連続は圧巻の一言だ。⑩「バグズ・グルーヴ」で渾身のベース・ソロを披露するパーシー・ヒースのプレイにも耳が吸いつくが、私が何よりも好きなのはテーマのメロディーに合わせてオーディエンスが手拍子するところ。 S&G の「バイ・バイ・ラヴ」でも感じたことだが、これこそライヴの醍醐味ではないか!何度も繰り返すが MJQ はライヴで最高に輝くジャズ・コンボなのだ。

↓再結成後の1982年ライヴ。ラスト・コンサート・ヴァージョンよりテンションが低いのはしゃあないか...(>_<)
"Softly as in a Morning Sunrise"Modern Jazz Quartet in London.

この記事についてブログを書く
« ブルー・プレリュード / モニ... | トップ | Living In The USA / Linda R... »