shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Mon ChouChou / ZaZa avec Cafe Manouche

2009-01-13 | Gypsy Swing
 シャンソン歌手ZaZa さんのカフェ・マヌーシュとの共演第2弾となるアルバムが届いた。タイトルは「モン・シュシュ」、フランス語で「私のお気に入り」という意味だそうだ。「エディット・ピアフ、ゲンスブール、ペギーリー、デューク・エリントン、そして笠置シヅ子と、日米仏の名曲がマヌーシュ・スウィングに楽しくおしゃれに変身」というのがこのアルバムのコンセプト。まず何と言っても④「買い物ブギ」が最高に面白い。戦後間もない頃に岸和田あたりの商店街を割烹着を着て歩いていたようなこの曲を、バックのクラリネット、ギター、ヴァイオリンが寄ってたかって強引に21世紀のパリのシャンゼリゼ通りへ連れ出したかのような、時間と国籍とジャンルの意味を空洞化した何でもアリの精神が素晴らしい!パリのエスプリを運んでくるピアノ・ソロと顎が落ちそうなリズム・ギター・カッティングも絶品で、和製ブギにフレンチ・ワインをたっぷりふりかけマカフェリ粉をつけてマヌーシュ油でカラッと揚げて「和製ブギのマヌーシュ丼シャンソン風、一丁上がり!」みたいな手際の良さだ。ZaZaさんもこの曲のみCDブックレット見開き2ページを割いてフランス語の歌詞と日本語訳を載せている。いきなり例の有名フレーズ「オッサン、オッサン...」が「ムッスュー、ムッスュー...」で、買い物リストの品目は「バター、生クリーム、ジャム、カマンベール、タルト・フランベ、ブイヤベース」だ(笑) 続く「ケチャップ、シルヴプレ!」でイスから転げ落ち、「ボンジュー、ムッスュー、コマンサヴァ!」で腹筋が崩壊する(^o^)丿 ぜひフランス人の感想を聞いてみたいと思わせる、抱腹絶倒の5分40秒だ。⑥「小さな花」はザ・ピーナッツのデビュー曲として有名だが、オリジナルのシドニー・ベシェが乗り移ったかのようなクラリネットがマカフェリ・ギターと絡む瞬間がたまらない。岡本敦郎の⑩「リラの花咲く頃」は原曲の湛えていた詩情を殺さずにフレンチの要素を巧みに取り入れ、懐かしのラジオ歌謡をマヌーシュ・スウィングと融合させたアレンジ・センスがお見事だ。昭和歌謡モノ以外ではロジャース&ハート作の大スタンダード・ソング⑨「マイ・ロマンス」が出色の出来。スローで始まり1分28秒からアップ・テンポに転じて一気呵成にたたみかけるような展開は ZaZa & カフェ・マヌーシュの得意技だ。同じくマヌーシュ・スウィング全開の⑪「ベルヴィルランデヴー」の疾走感も言葉にできないほど素晴らしい。やはり「カフェ・マヌーシュにハズレなし」なのだ。
 映画「僕のスイング」公開以降しばらく活況を呈していたマヌーシュ・スウィング界だが、最近新譜のリリース・ペースが鈍ってきている。いつまでも「黒い瞳」に「マイナー・スウィング」といったワン・パターンの選曲では煮詰まって当然だ。せっかくこんなに素晴らしい定型演奏フォームがあるのだから、ジャンゴ・ナンバーに固執せずにまだ誰も手をつけていないようなスタンダード・ソングからトラデショナル・フォーク、ディズニー、アニソン、昭和歌謡に至るまで題材を広く取り、可能な限り片っ端からマヌーシュ化していってほしいものだ。マヌーシュ・スウィングの未来は一にも二にもその選曲センスにかかっている。そのことをこのアルバムが如実に示しているように思えてならない。

ザザ

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