shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

White Album (Disc 1) / The Beatles

2009-09-28 | The Beatles
 一昔前までは「サージェント・ペパーズ」が過大評価とも思えるぐらい絶賛の嵐だったのに対し、この「ホワイト・アルバム」は “統一性がなく散漫な印象を与えるアルバム” というイマイチな評価が大勢を占めていた。今なら “何を眠たいこと言うてんねん!” と一笑に付すことが出来るが、まだ右も左も分からなかった初心者の頃はそういった妄言を鵜呑みにしてこのアルバムを購入リストの下の方に入れていた。ところがたまたまラジオのビートルズ特集で耳にした「バック・イン・ザ・USSR」や「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」の素晴らしさに完全KOされ、 “これって「ペパーズ」よりエエやん!” と慌ててレコード屋に走ったのを覚えている。
 で、実際にアルバム2枚全27曲を通して聴いてみると、確かに統一性なんかクソくらえという感じの不揃いな作品集だしその内の何曲かは ??? なのだが、その一方でめちゃくちゃ気に入ったナンバーも多く、どちらかというとシングル盤志向で曲を “単品聴き” する傾向のある私にとっては「ペパーズ」よりも遙かに面白いアルバムで、 “コンセプトを持たない” というコンセプトがすっかり気に入ってしまった。しかもバラバラでありながらも(たとえメンバーが単独で録音した楽曲であっても...)出来上がったものはちゃーんとビートルズの薫りがしたし、それらを “ここしかない!” という絶妙な配置でA~D面に振り分けることによって各面それぞれに大きな流れを作る、というビートルズ・マジックも健在だった。
 まずA面ではいきなり①「バック・イン・ザ・USSR」でガツン!とやられる。チャック・ベリーの「バック・イン・ザ・USA」をビーチ・ボーイズ風コーラスでパロッたビートルズの音楽的センスが素晴らしい!!! 曲中何度もフェード・イン&アウトを繰り返すジェット音のSE、本家BB5も顔負けのコーラス・ハーモニー、ドライヴ感溢れるプレイで煽りまくるピアノとギター、リンゴとはまた違った味わいのポールのバラケたドラミング、そしてお約束とも言えるハンド・クラッピング... その徹底的に練り上げられ作り込まれたアレンジのすべてがただでさえ素晴らしいこの曲にターボ・ブーストをかけたような疾走感を与え、後期ビートルズの中でも屈指のロックンロール・ナンバーに仕上がっている。
 ジョンがインドで書いたという内省的なバラッド②「ディア・プルーデンス」に続く③「グラス・オニオン」はリンゴがグループ復帰記念とばかりにビシッとキメるイントロのスネア2連発がめちゃくちゃカッコ良い!その絶妙なニュアンス・味わいはちょうど「フリー・アズ・ア・バード」のリンゴの一打で時計の針が一気に逆戻りし、あたりの空気が60's色に染まってしまう、あの感覚そのものだ。又、自分たち自身をパロディーの対象にしたシュールな歌詞も面白い。 “ストルベリー・フィールズ” “ウォルラス” “レディ・マドンナ” “フィクシング・ア・ホール”といった過去の名曲たちのタイトルがガンガン登場する中で、「フール・オン・ザ・ヒル」という言葉のバックで鳴り響くリコーダーには参りましたという他ない。このように細部にまで凝りまくるところがビートルズの魅力の一つだろう。
 ④「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」はキャッチーという言葉を絵に描いたようなカリプソ・ナンバーで、弾むようなイントロのピアノからズンチャッ ズンチャッというリズムを刻みながらデズモンドとモリーの楽しいストーリーを綴っていく。それにしてもノリノリのロックンロールあり美しいバラッドあり楽しいカリプソありと、まったくポールの天衣無縫ぶりには頭が下がる思いだ。⑤「ワイルド・ハニー・パイ」は以前タモリの空耳アワーで“大仁田... 大仁田~♪” っていうのを見て以来どうしてもそのイメージが拭えない(>_<) 空耳ってホンマにオモロイですね(^.^) ⑥「コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロウ・ビル」は曲としては割と好きなのだが、ヨーコが歌うたった1行のヴァースがすべてを台無しにしている。私はジョンのソロ「ライヴ・ピース・イン・トロント’69」で “メェェェ~” としか聞こえない奇声を発し続けるヨーコを聴いて以来どうしても彼女に対しては生理的に拒否反応を覚えてしまうのだ。そもそもマトモな音楽が出来ない輩がムチャクチャやってるだけにしか聞こえない前衛音楽にかぶれたヨーコがビートルズのアルバムに参加すること自体が言語道断であり、鬱陶しいことこの上ない。ヨーコは東京ボンバーズだけで十分だ(笑)
 ⑦「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウイープス」はジョージの傑作と言えるドラマチックなナンバーで、ジョージのヴォーカルもクラプトンのギターも徹底して “泣き” まくるという凄まじさ。このアルバムのジョージにはシタール曲が1つもないのが嬉しい。⑧「ハピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」はいかにもこの時期のジョンらしい曲で、何も考えずに書いた旋律を繋ぎ合せて出来たような感じがする。曲としてはそこそこだが、ジョンのヴォーカルの吸引力は相変わらず見事だ。
 B面はマッカートニー・サイドと言ってもいいぐらいポールが突出している。特にエレガントな①「マーサ・マイ・ディア」、シンプル・イズ・ベストな③「ブラックバード」、絶世の隠れ名曲⑧「アイ・ウィル」の3曲で水晶のような輝きを持った美しいメロディーをストレートに歌うポールは “20世紀最高のメロディー・メイカー” の名に相応しい素晴らしさだ。個人的にはポール・マッカートニーという音楽家のエッセンスを1分45秒にギュギュッと凝縮したような⑧が白眉だと思う。⑤「ロッキー・ラックーン」はポールお得意の物語風の歌詞をユーモラスな語り口調で歌っており、中間部のホンキー・トンク・ピアノも絶妙な味わいを醸し出していて面白い。⑦「ホワイ・ドント・ウィー・ドゥー・イット・イン・ザ・ロード」を聴いていると彼の1st ソロ・アルバム「マッカートニー」が頭に浮かぶ。いかにも即興で作ったようなシンプルな歌詞とメロディーで、初心者の頃は “何じゃこりゃ?” と思ったが、何度も聴くうちにその面白さが分かってきた。ラフで荒削りながらその核にあるのはあくまでポップ、まさにダイアモンドの原石と呼ぶに相応しい1曲だ。
 そんなポールに対し、ジョンの2曲②「アイム・ソー・タイアード」は⑨「ジュリア」は今一つインパクトに欠けるように思う。②は「アイム・オンリー・スリーピング」の続編的な雰囲気を湛えたナンバーで、曲そのものよりも彼のヴォーカルで聞かせてしまうという感じがする。⑨はいかにもジョンなバラッドながら、 “オーシャン・チャイルド” で気分は一気に萎えてしまう。何と言われようが嫌なものは嫌なのだ。ジョージの④「ピッギーズ」は上流階級を痛烈に皮肉ったシニカルな歌詞がバロック調のメロディーに乗せて歌われる面白い佳曲。ハープシコードの音色がこれまた曲想にピッタリ合っており、実にエエ味を出している。⑥「ドント・パス・ミー・バイ」はリンゴが歌うC&W風味のポルカで、いかにも彼らしいハッピー・ソングに仕上がっている。この曲をストレートなロックンロールにアレンジしてカヴァーしたジョージア・サテライツのヴァージョンもオススメだ。(つづく)

The Beatles - Back In The USSR

この記事についてブログを書く
« Yellow Submarine / The Beatles | トップ | White Album (Disc 2) / The ... »