shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ジプシー・ジャズで聴くビートルズ特集

2017-08-06 | Beatles Tribute
 この1年ほどビートルズの各国盤蒐集で忙しくて他ジャンルの音楽はあまり聴いていなかったが、最近になってそちらの方も一段落したので、この前の休みの日に “オール・マヌーシュ” と題して久しぶりに朝から晩までローゼンバーグ・トリオやビレリ・ラグレーンといったジプシー・ジャズ三昧をやってみた。う~ん... 久々に聴くあのザクザク刻むリズム・ギターの音はめっちゃ気持ちエエなぁ... (≧▽≦)  私が好んで聴くジャズは50年代のものがほとんどで最近の新譜には全く食指が動かないが、ジャンゴ・ラインハルト以来の古き良き伝統を頑なに守り続けるジプシー・ジャズに限っては新譜や新人をこれからもどんどん聴いていきたいと思っている。
 そんな “オール・マヌーシュ” をやった翌日のこと、リズム・ギターのザクザク音が脳内リフレイン状態の私はふと、“ビートルズをジプシー・ジャズ・スタイルでカヴァー、って今まで聴いたことがないけど、やっぱり無いんやろか?” と考えた。そこで仕事が超ヒマなのをこれ幸いと YouTubeで検索してみるといくつかヒットしたのだ。もちろん “何じゃいコレは???” というトホホなカヴァーもあったが、逆に“おぉコレは中々エエやん(^o^)丿” と快哉を叫びたくなるような秀逸カヴァーにもいくつか巡り逢えたのだ。そういうワケで、今回は “ジプシー・ジャズで聴くビートルズ” の特集だ。

①Honey Pie(その1) 
 まず驚かされたのがフレッド・アステアへのオマージュ的なポールの作品「ハニー・パイ」の異常なまでの人気ぶりである。選曲がもっと色んな曲にバラけるのかと思っていたら猫も杓子も「ハニー・パイ」なのだ。私のようなド素人には知る由もないが、この曲の中に潜む何かがマヌーシュ達を惹きつけるのかもしれない。
 そんな“マヌーシュ版”「ハニー・パイ」の中で気に入ったのがスウィング・ドゥ・ジタンというイスラエルのジプシー・ジャズ・トリオによるカヴァーだ。ギリギリと軋むような音を立てるアコベとザッザッと正確にリズムを刻むギターの絶妙な絡みぐあいが私の嗜好のスイートスポットを直撃。最後までこのまま行くのかなぁと思わせておいて2分48秒あたりでテンポを上げるアレンジもマヌーシュならではだ。この曲が入ったCD「Muza」をeBayで$9で見つけた時は嬉しかった。
Honey Pie


②Honey Pie(その2)
 上記のスウィング・ドゥ・ジタンと甲乙付け難い名演がエイドリアン・ホロヴァティの「ハニー・パイ」だ。ジプシー・ジャズが盛んな街、シカゴでブイブイいわしているアメリカン・マヌーシュ・シーン(?)の重鎮ギタリストだけあって、まさに王道を行くマヌーシュ・アレンジでポールの名曲を料理している。凄いのは独り二重奏でこれだけの作品に仕上げていることで、ノリ良し、センス良し、テクニック良しと、三拍子揃った名演になっている。
"Honey Pie" Beatles gypsy jazz guitar


③Girl
 ジプシー・ジャズの魅力の一つに曲の途中で一気にギアを上げるチェンジ・オブ・ペースの妙があるが、まるで絵に描いたようにそれを具現化した演奏がこの「ガール」だ。0分42秒からまるで鎖を解き放たれた犬のように猛然とスイングを開始、2分台に入って更なる緩急をつけ、トドメは2分38秒からの歌心溢れるギター・ソロ... 何の違和感も感じさせずに中期ビートルズ屈指の名曲をマヌーシュ化しているところが凄い。ジプシー・ジャズでは珍しいコーラスワークのアレンジも秀逸だ。
The Beatles - Girl (gypsy jazz version)


④Lady Madonna
 ブラディ・ウインテルステインがビレリ・ラグレーンの右腕として活躍している叔父のホノと組んだクインテットによるビートルズ・カヴァー。名手ホノのリズム・ギターに乗って気持ちよさそうにスイングするブラディの歌心溢れるソロが素晴らしい。マヌーシュ・バンドならではのヴァイオリンをも含めた、色んな楽器の音が混然一体となって大きなグルーヴを生み出しているところがめっちゃエエ感じ。アットホームな雰囲気の中ででワイワイやりながら音楽を楽しんでいる、といった按配の寛ぎに溢れた演奏だ。
Brady & Hono Winterstein Quintet - Lady Madonna (Gypsy Jazz)