shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

More Get Back Session / The Beatles

2017-08-01 | The Beatles
 私のリスニングルームはごく普通の六畳間で、LP約1,800枚、シングル約1,200枚、そしてCD約1,500枚を並べた棚を天井近くまで積み上げた、それこそまるでレコ屋みたいな部屋の中で暮らしている。阪神淡路大震災の時はCDがドバーッと落ちてきてかなりヤバかったが、LPが増えた今となっては大きな揺れが来たら確実にレコードの下敷きになるだろう。そういえばレコスケ漫画で、寝てる時に地震でレコ棚が倒れてきた時に大好きなジョージのレコードで死ねるようにと「オール・シングス・マスト・パス」が頭に当たる位置に置くというお話があって(←レコスケの “危うくローラーズで死ぬところだったよ” には大笑いwww)、“頭に落ちてきて怪我するんやったら「ホワイト・アルバム」がエエかな...” などと考えていた私はあれを読んでレコスケに強く共感を覚えたのだが、いずれにせよ無精者の私にとって膨大な数のレコードの整理・収納ほどやっかいなことはない。
 この部屋に置いてあるのは自分がよく聴くレコードやCDで、あまり聴かない盤は容赦なく隣室行きになる。例えるならプロ野球の1軍と2軍みたいなものだ。私は月平均で大体20枚ぐらいのペースでレコードを買っているので、定期的にこの1軍と2軍の入れ替えを行っているが、特にこの1年間でビートルズの各国盤が激増したせいもあって配置換えの必要に迫られ、テプラで新たに国別のラベルを作り直して本格的にレコード棚の整理を行った。
 アーティストやジャンル別のラベルを貼って整理してある1軍の棚に比べ、隣室にある2軍の棚は整理が全然出来ておらず、どこに何があるのかサッパリ分からない。そんな、ミルト・バックナーとブームタウン・ラッツと石野真子が一緒くたに並んでいるというあまりにもカオスな状態の中で偶然目に留まったのが中学時代に買ったブートレッグLPたちで、ジャケットが “俺を聴いてくれ!” “いや、私を聴いて下さい!”と訴えかけてくるのである。忘れかけていたレコードを聴き直して新たな発見をするというのはこれまでに何度も経験しているので、私は久しぶりにブートのレコードでも聴いてみるか... と考え、「ゲット・バック・セッション」を1軍に連れ帰ることにした。
 このレコードは私が初めて買ったブートレッグで(←当時は「海賊盤」って呼んでた...)、DVDやブルーレイどころかビデオデッキすらまだ持っておらず、年に2~3回開かれていたフィルム・コンサートでしか「レット・イット・ビー」の映画を観れなかった私は、ガチのサウンドトラック盤として選曲・音質共に最高だったこのレコード(←「シネローグ」という完全収録版もあったが音質が悪くてとてもじゃないが聴く気になれない...)をそれこそ針が擦り切れるほど聴きまくったものだった。ブートに関しては便利なCD一辺倒になっていたこともあって、この「ゲット・バック・セッション」も2軍暮らしで不遇をかこっていたのだが、久々に1軍即スタメンという感じ(?)で早速聴いてみることにした。
 A①の「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー」からA②「ベサメ・ムーチョ」、そしてドライヴ感溢れるA③「トゥー・オブ・アス」へと続く流れ... う~ん、この音といい、この曲順といい、ホンマに懐かしいわぁ...(^.^)  もちろんリマスターされたTMOQ盤「レット・イット・ビー・ザ・ムービー」の洗練されたサウンドに慣れた耳には古臭い音に聞こえるが、そのラウドで武骨なモノラル・サウンドには高音質なリマスター音源には無いレトロな味わいがあって、70年代ブートのレコードも結構やるやん!という感じ。それこそあの時代にフィルム・コンサートで聴いた懐かしい音そのものだ。
 そんなゴツゴツしたサウンドで聴くA④「ワン・アフター・909」やA⑤「シェイク・ラトル・アンド・ロール」、A⑥「ゲット・バック」といったロックンロール・ナンバーの迫力はこの盤でしか味わえないものだし、B①「ピアノ・ブギー」(←ジャケットには「ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイング・オン」と表記されているがどこをどう聴いても違うやろ...)の強烈無比なノリには思わず身体が揺れてしまう。B④「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」(←ジャケットには「ディグ・ア・ポニー」とあるがもちろん誤り)でのポールのシャウトもモノラルならではのギュッと凝縮された音の塊がスピーカーから飛び出してくる感じが実に気持ちイイ(^.^)
 B⑤「ポール・ラップス」はポールがジョンにライヴの必要性を説いているシーンを丸ごと収録したもので、買った当時は “何で音楽入れんと喋りなんか入れとんねん...” と不思議に思ったものだが、何度も聴くうちにポールが訥々とジョンに語りかけるそのリヴァプール訛りのイントネーションが耳に残るようになり、いつの間にか愛聴トラックになってしまった(笑) 本編映画ではこの喋りの後に「トゥー・オブ・アス」に続くのだが、私的にはアルバートホールがスベッたとかストラヴィンスキーがコロんだとかの話の後にこのレコードの曲順通りのB⑥「レット・イット・ビー」が流れるのが一番しっくりきてしまう。困ったものだ(笑)
 ということで両面併せてもわずか25分30秒というこのレコード、私の思い入れが大きいのかもしれないが、客観的に見ても映画「レット・イット・ビー」の“ベスト・オブ・ザ・ベスト”的な選曲とその秀逸な曲配置で、今でも十分傾聴に値する1枚ではないかと思う。こいつはずっと1軍に置いとこ。
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【おまけ】B⑤「ポール・ラップス」を怒涛のワーディング。これで大体あってると思うけど、ポールの “you know” 乱発(約2分弱の間に何と17回も!)に、何とかジョンの共感を得ようとするポールの気持ちが見て取れた。
'Cause, you know, whenever we talk about it, we have certain rules... like George was saying. "What do you want to do?"... and he says, "No films," you know. But it's wrong, though. It's very wrong, though, because you don't know. He says... what he means is, "No Help! or Hard Day's Night," you know, and I agree, you know. But like, no films... 'cause this is a film... and he now doesn't mind this, you know. But it's like... it's that kind of thing... like no TV shows, no audience. But, I mean, see, it's like when we came back from Hamburg and did Leicester Du Montfort Hall, or wherever it was, Coventry, you know... we played the ballroom, and we had the worst first night then, and we were all nervous, and it was terrible. Then we played another the next night, and we got a little bit better... the next night... hmm... and then the next. It was just too much, and we got into the playing because we got over the hang-up of the audience, and it was just like there was no one there, but it was a ner... a new sort of thing, and there was some fella in the front watching how you were playing, you know. And you just... we were just right into it. And those would have been... if we could have recorded those things, you know, they would have been the greatest, 'cause it is... it's like Mal was saying, he said, "It's the bounce thing," you know. And we're good at that, you know, once we get over the nervousness. But it's like, it's the hurdle of that nervousness is there now. So that... you know, we're... we can't get over it now, unless... well, you know, unless we really sort of, like, go to the Albert Hall and get in a black bag, you know. See, and then the only other alternative to that is to say, well, we don't... we will never do it to an audience again, you know. But if we... if we intend to... to keep any kind of contact on that scene... Yeah I do understand George's just saying, "There's no point," you know, 'cause it's like it is... it is like we're Stravinsky, and it's in the music, you know. And he doesn't sort of get up and play his Joanna for them any more, you know.
【対訳:Let It Be J Edition より】
だって俺たちは何か決める時は合議制っていうのが原則だからさ。だからジョージに訊いたんだよ。「お前はどうしたいんだい?」ってさ。そしたら「映画は絶対にイヤだ」ってさ。でもそれは大間違いだと思わないかい?だってやってみなきゃわからないだろ?彼は「HELP やHARD DAY'S NIGHTはウンザリだ」って思っているんだよ。それは俺だって同じ意見さ。だからって映画そのものを全否定されてもね。実際今だって撮影してるじゃん。でもジョージは全然気にしてないだろ?多分こういうことだと思うんだ...「テレビには出ない!客の前にも出たくない!」でもさ、俺たちハンブルグから戻った時にレスターでライヴやっただろ?レイセスターデモントフォートホールでさ。あとコベントリーとか色々さ。でっかいダンスホールのギグでアガっちゃって、初日のライヴは最悪の出来だったよな。それで次の日にまたライヴがあってさ。ちょっとはマシになった。その次またその次ってやっていくうちにどんどん良くなっていっただろ?しまいにゃ最高のライヴが出来るようになった。観客のプレッシャーを乗り越えたんだ。観客にビビらなくなったのさ。そして俺たちのプレイを真剣に聴いてくれるファンが増えてきた時だって、そういうファンを満足させるくらいの技量を身につけたんだ。当時のそういう状況をだよ... もしあの時ちゃんと記録しておいたらビートルズの最高傑作になっただろうな。だってマルも言ってたんだぜ...「あの頃のライヴは最高にハジけてた!」ってさ。そうさ、俺たちは確かに最高だった。ステージでビビらなくなった俺たちにはもう怖いモンなんてなかったんだ。でも一方でさ... “ビビりのハードル”の高さはあの頃よりも上がっていると思うよ。だからさ... 今の俺たちに“人前での演奏にビビるな”って言われても無理だってことは分かってるさ。でも、だからってさ、アルバートホールのステージに立って客にこう言えるかい?「僕たち人前が苦手なんでメンバーそれぞれ黒い袋に入って演奏しま~す」ってさ。な?あとはもう宣言するしかないだろ?「もう絶対にコンサートはやりません!」ってさ。だけど、もし何らかの接点をファンと持ち続けたいと思うならさ... 何かをしなくちゃ。俺はね、「ライヴなんて意味ねぇぜ」っていうジョージの意見も理解してるつもりさ。それは例えばストラヴィンスキーみたいに活動するのも一つの方法だっていう意味でね。作曲や音楽の制作に専念してさ... ステージに復帰してジョアンナを観客の前で演奏することは二度とないっていうスタンスさ。