shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「ヘイ・ジュード」各国盤LP聴き比べ③

2016-09-28 | The Beatles
 アルバム「ヘイ・ジュード」の聴き比べもいよいよ最終回。今回の2枚も前回同様にコスパの高いレコードだ。ヨーロッパやオセアニアの盤は結構優秀なので、UK盤が高くて買えないような場合はこのような各国盤の中から高音質なものを見つけて買うというのも大いにアリだな、との思いを強くした。

⑦ドイツ盤(1C 062-04 348)
 「ヘイ・ジュード」蒐集で一番ややこしかったのが、リカットを頻繁に行うことで有名なドイツ盤だ。 “マトリクス枝番”(A-1, A-2, A-2X) と “レーベル面の著作権管理団体名表記”(BIEM, GEMA) と “B面のリンゴの断面の色”(グレー, ホワイト)という3つの要素の組み合わせで数種類のヴァリエーションが存在し、何となくBIEM表記盤が1stプレスっぽいのだがいまいちよく分からない。そこでネットで調べてみたところ、海外のビートルズ・アナログ・レコード・コレクターがこの件に関して議論しているサイトを発見、自分以外にもこんなしょーもないこと(笑)で熱くなってる人達が地球の裏側にいるとわかって何だか嬉しくなってしまう。
 彼らによると、BIEM表記の盤が圧倒的に少ないから1stプレスだと考えるのは誤りで、プレス時期はBIEM表記かGEMA表記かではなくあくまでもマトリクスで判断すべきとのこと。要するにマト枝番A-1こそが正真正銘の1stプレスだというのだ。なるほどねぇ...(・o・)  簡単にまとめると、1970年発売の1stプレスはマトA-1で版権表記はBIEM/GEMAの両方が存在し、B面リンゴはグレイ・アップル。ドイツ独自のマスターを使用しており、何と「ペイパーバック・ライター」だけがモノラル・ヴァージョンだという。ホンマかいな (゜o゜) この1stプレス盤は発売から1年も経たないうちにUSマスターを使ってリカットされたため、かなり稀少のようだ。1971~72年頃に売られていたのがマトA-2の2ndプレス盤で、版権表記はBIEM/GEMAの両方が存在し、B面リンゴはグレイ・アップル。eBayで "German 1st Press" と謳っている盤のほとんどがコレだ。そして1973年に再びリカットされたのがマトA-2Xの3rdプレス盤で、版権表記はGEMAのみとなり B面リンゴはホワイト・アップル、ということらしい。大いに勉強になりました(^.^)
 私はどうせ買うなら1stプレスと心に決め、eBay やMusicStack、そしてDiscogs といった海外オークション/マーケットプレイス・サイトに「ヘイ・ジュード」のドイツ盤を出品しているセラーに片っ端からメールしてマトリクス枝番を確認したところ、運良く1枚だけ該当盤を見つけることができたのだが、セラーはこれが稀少な1stプレスだとは全く知らなかったようで、たったの€7.00で買うことが出来た(^.^)
 盤が届いて真っ先にチェックしたのは当然「ペイパーバック・ライター」で、確かに例の気持ち悪いエコー(笑)がかかったモノラル・ミックスだった。このレコードは “ステレオ” が売りだったので、これのせいですぐにリカットしたのかもしれないが、とにかく珍盤には違いない。音質は “さすがは世界に冠たるドイツ!” と唸ってしまうハイ・クオリティーなサウンドで、個々の楽器の “音” 云々ではなくトータルで “音楽” を楽しめるような音作りがなされている、とでも言えばいいのか。何故かB面では少しヴォーカルのサ行がきつくなるように聞こえるのが玉にキズだが、それ以外は何の不満も無く音楽に浸りきることが出来る逸品だ。

⑧オーストラリア盤(PCSO-7560)
 前出の「アナログ・ミステリー・ツアー」ではNZ盤だけでなく同じUKマザーのオーストラリア盤も高評価されていたのだが、それを見て “NZ盤とOZ盤って音が違うんやろか?” という素朴な疑問を抱いた私は早速ネットで検索し、DiscogsでNMの盤を 20AUDでゲット。レコード№もPCSO-7560とオーストラリア独自の番号だし、ビニール自体もNZ盤とは違って普通の厚さしかない(140g)。聴いてみた感想としては、“普通に良い音なんやけど、NZ盤にはちょっと負けるかな...” という感じ。全帯域にわたって大きな欠点の見つからない、80点主義の優等生的な音作りなのだが、NZ盤のようにリスナーが “参りましたぁ...m(__)m” と平伏すような圧倒的な音ではない。でもこれ1枚だけ聴いてたら特に不満は出ぇへんやろなぁと思える素直な音作りだ。

 今回の「ヘイ・ジュード」LPバトルロイヤルの感想は、トップのUK盤をインストに強いデンマーク盤とヴォーカルに強いNZ盤が2番手争いをしながら激しく追い上げ、更に音楽性で勝負するドイツ盤とオールラウンダーのオーストラリア盤が第3グループを形成してそれに続くという、まるでF1コンストラクターズ争いのような構図だった。聴き比べってホンマに面白いですな...(^.^)