shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ビートルズ・ルーツ特集⑤Chuck Berry-2

2015-10-12 | Oldies (50's & 60's)
①Rock And Roll Music [Chess 1671]
 ビートルズの凄さの一端はカヴァーでオリジナルを軽く超えてしまうところにある。オリジナル・アーティストが魂を宿した曲を換骨奪胎して曲の髄を引き出す能力はまさに神ワザで、その結果、カヴァー曲でもまるでビートルズのオリジナル曲であるかのような錯覚を抱かせるのだ。「ツイスト・アンド・シャウト」しかり、「プリーズ・ミスター・ポストマン」しかり、「ロング・トール・サリー」しかりだが、この「ロックンロール・ミュージック」という曲も私にとってはビートルズのインパクトが強すぎて、後になってオリジナルのチャック・ベリーを聴いた時はそのあまりに軽い歌い方に拍子抜けしてしまった。
 しかし歌詞の意味を考えながら何度も聴くうちに、こういうノーテンキなヴァージョンもアリやなぁと思うようになった。これはモダンジャズやタンゴ、マンボといった古い音楽を俎上に上げながら新しい音楽であるロックンロールを称えるいわば “ロックンロール賛歌” なのであり、シンプルでタイトなリズム・セクションをバックにチャック・ベリーの軽妙洒脱なヴォーカルを楽しむというのが本来の聴き方なのだろう。
 アナログ盤の話をすると、前回取り上げた2枚のシングル盤のレーベル・デザインはチェスの駒を描いた “チェス・ピース・レーベル” だったが、1957年リリースのこのレコードからはごく普通の “ブルー/シルバー・レーベル” になってしまったのが少し残念。この2ヶ月ほどで10枚近く買ったチャック・ベリーのシングル盤の中で最も簡単に手に入れることが出来たのがこのレコードで、アメリカのレコ屋からのシングル盤一括購入でゲット。NMで$7.00(約850円)なら御の字だろう。
Chuck Berry - Rock And Roll Music


 ということでオリジナルのチャック・ベリーも悪くはないのだが、ジョン・レノンのスピード感溢れるハイ・テンションなヴォーカルを聴いてしまうとどうしてもユル~く聞こえてしまう。例えるならビートルズのヴァージョンが鈴鹿のS字を軽快に駆け抜けていくF1カーのイメージなのに対し、チャック・ベリーのオリジナル・ヴァージョンは公道をのんびりとクルージングするクラシックカーという感じ。それもこれもジョン・レノンの緊張感漲るヴォーカルの成せるワザなのだが、車にも音楽にもスリルとスピードを求める私にとって、この「ロックンロール・ミュージック」はたとえ天地が逆になろうとも “ビートルズの曲” なのだ。
 ビートルズのヴァージョンはヴォーカルだけでなく演奏面も圧倒的に素晴らしい。ジョージ・マーティンがガンガン弾きまくるピアノが疾走感を更にアップさせ、トップ・シンバルを乱打するリンゴの爆裂ドラミングが跳ねるようなビートを生み出しており、イントロの “ジャジャジャジャ♪” からエンディングの “ジャジャジャン♪” まで一気呵成に駆け抜けるこの快感... まさにこれ以上は考えられない怒涛のロックンロールが炸裂する。私は13才の時にこの曲を聴いてビートルズに生涯の音楽を感じたのだが、その時に買った日本盤シングルは今でも私の宝物だ。とにかくこんな凄い演奏をたったのワン・テイクで完成させたビートルズ恐るべしである。「ヘイ・ジュード」や「レット・イット・ビー」にその座を奪われるまで、このレコードが日本におけるビートルズのシングル盤売り上げ1位だったというのも大いに頷けるスーパー・ウルトラ・キラー・チューンだ。これ以上の名演があったら教えを乞いたい。
The Beatles - Rock And Roll Music - Lyrics


②Sweet Little Sixteen [Chess 1683]
 この曲を初めて聴いたのはビートルズのスター・クラブでのライヴ盤だった。若き日のビートルズの爆発的なエネルギーが充満しているレコードで、オフィシャル・リリースされていない曲がいっぱい聴けることもあって、音の悪さも気にせずに何度も何度も聴き込んだものだった。そんな超の付く愛聴盤「スター・クラブ・ライヴ」の中でも1・2を争うお気に入り曲がこの「スウィート・リトル・シックスティーン」だった。
 大好きなチャック・ベリーのカヴァーということで俄然張り切る(?)ジョン・レノンのヤクザなヴォーカルの何とカッコ良いことよ... ジョージのドライヴ感満点のギターもたまらんたまらん(≧▽≦)  BBCライヴの方が音も良いし演奏もカチッとまとまっているように思えるが、私的にはビートルズの野放図でワイルドな魅力が全開の、このスター・クラブ・ライヴが最高なのだ。
Sweet Little Sixteen/ The Beatles Live At The Star Club


 お客さんを前にしてガンガン飛ばしまくるビートルズのライヴ・ヴァージョンに比べ、チャック・ベリーのオリジナルはミディアム・テンポで、このイケイケなノリこそがロックンロールの原点なのだということを再確認させてくれるような、黒人独特のグルーヴを感じさせるカッコ良いヴァージョンだ。
 それと、ビートルズの高速ヴァージョンを聴いた時には気付かなかったが、チャック・ベリーのオリジナルを聴いて “このメロディー、どっかで聴いたことあるなぁ... あっ、コレって「サーフィンUSA」やん!” と直感し、その時初めて「サーフィンUSA」の元ネタがチャック・ベリーだったことに気が付いたのだった。それにしてもビートルズ、ストーンズ、ビーチ・ボーイズという60年代3大バンドに多大な影響を与えるなんて、チャック・ベリーってホンマに偉大ですなぁ... (≧▽≦)
 この曲は歌詞も私のお気に入りで、「ボストン」「ピッツバーグ P.A.」「テキサス」「フリスコ・ベイ」「セントルイス」「ニュー・オーリンズ」といった地名がメロディーと一体となって耳にポンポン飛び込んでくるところがめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 サビの部分では思わず “アブシブシ ブロンヘァードゥー サーフィンUSA~♪” って口ずさみたくなるけれど...(笑) このレコードもアメリカのレコ屋からのシングル盤一括購入で、VG++盤を$3.75(約470円)で手に入れた。
Chuck Berry - Sweet Little Sixteen (1958)

The Beach Boys - Surfin' USA