shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Here Comes...El Son

2009-07-01 | Beatles Tribute
 コレクターと言う人種はあるアーティストに惚れ込むと正規に出ている盤だけでは満足出来なくなり、内容は変わらないのに同じ盤を各国盤で揃えたくなってしまうことが多い。そんなコレクター魂をビンビン刺激する存在が王者ビートルズである。私自身は本能の趣くままに猟盤してるだけなので由緒正しいコレクターからは程遠いが、そんな私でも海外オークションにハマッっていた一時期は有名なシェル・カヴァーやバルーン・カヴァーといった高額盤から怪しさ満点の「ヘルプ」インド盤に至るまで色々と目移りし、つい出来心で(笑)ブラジル盤「ハード・デイズ・ナイト」を買ったりしたものだ。まぁジャケットの文字もポルトガル語(OS REIS DO IE, IE, IE!)で珍しい感じだったので面白いといえば面白いのだが、そのまま底無し沼のような深みにハマッていくのが怖かったのでそれで打ち止めにした。私個人としてはビートルズの正規音源としては60'sパーロフォンのモノラル盤、いわゆる “黄パロ” がリファレンスなので、わざわざ変なミックスやマスタリングが施されている可能性のある各国盤を買いたいとは思わない。気持ち悪いくらいにエコーのかかったアメリカ盤なんか絶対にイヤだ!
 LPほど顕著ではないがCDでもこのような音質の違いは確実に存在する。特に私がビックリしたのは “ルディー・ヴァン・ゲルダー・リマスター” と銘打って東芝EMIが大々的に宣伝していたブルーノートの日本盤CDと、US盤の “The Rudy Van Gelder Edition” シリーズでは音の鮮度が全然違っていて、日本盤のあまりにヘタレな音に愕然としたものだ。要するに2,500円出して下らない解説の付いたスカみたいな音の日本盤を買うのか、1,200円で生々しい音のUS盤を買うのかということ。9月のビートルズ・リマスター盤の音質が全世界統一なのか気になるところだ。
 さて、話が大きく逸れてしまったが、そこで登場するのがこの盤である。「我愛被頭四」の文字がいやがおうにも目に飛び込んでくる。Panama Music というレーベルから出ているキューバ盤「Here Comes...El Son」の台湾盤CDだ。裏面には「24 bit 更完美聲音品質」とある。別に偏見があるわけじゃないが、中国、台湾と聞くとどうにも例の偽ディズニー遊園地(ミッキーマウスのパチモンを “耳の大きいネコ” と言い張ったのにはワロタ)とか、段ボール豚まん(結局偽モンやったけど...)とか、毒入りギョーザ(この事件どーなったんでしょーね?)とか、ネガティヴなイメージが強くて引いてしまう。これも元々は原盤を探していてたまたまeBayで台湾盤を見つけ、迷った挙句に安さに負けて買ったものだったが、届いた盤を聴いてみれば看板に偽りなしの抜群な音質で大ラッキーだった。
 内容は “Songs of the Beatles with a Cuban Twist” の謳い文句通りのビートルズ・アフロ・キューバン・カヴァー集で、アッケラカンとしたラテンのノリに日頃のストレスも吹っ飛んでしまう。イメージとしては夕暮れのビーチに面したレストラン、オープンテラスのテーブルで夜風に当たりながら、キューバのバンドの生演奏を楽しむ、といった感じなのだ。まず①「ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト」のマリアッチ風トランペットでイスから転げ落ちる。そこへこれでもかとばかりにパーカッションの波状攻撃が炸裂、こちらは早くも戦意喪失状態だ。②「ヘイ・ジュード」でも①同様、その脱力具合が絶妙で、後半の盛り上がりもラテンのノリだ。
 ⑤「ルーシー・イン・ザ・スカイ」もパーカッションが効いており、原曲の湛えていたサイケデリックな佇まいは雲散霧消、LSDよりもコロナビールがよく似合いそうなサウンドだ。パーカッションの乱れ打ちをバックに歌われる⑥「ハロー・グッバイ」はハリー・ベラフォンテも泣いて喜びそうなバナナ・ボート・ソングちっく(?)なサウンドが圧巻で、パーカッションと口ベースを主体にしたセミ・アカペラ・ナンバー⑦「ノーホエア・マン」と共にアフロ・キューバン・スピリットが炸裂するキラー・チューンだ。
 ⑨「エリナー・リグビー」... この曲までラテンにしてしまう強引なノリがめっちゃ楽しい。色んな楽器やコーラスの大量投下によって他ではちょっと味わえないユニークな「エリナー・リグビー」になっている。でもさすがに⑮「ビコーズ」はちょっとやり過ぎの感アリで、騒々しいヒップホップ・アカペラと静謐なこの曲はいくらなんでも合わないと思う。
 ラストの⑯「ゴールデン・スランバーズ~キャリー・ザット・ウエイト~ジ・エンド」、いわゆるアビー・ロード・メドレーは実によく出来ており、特に「ジ・エンド」のアレンジが最高だ。これはお世辞抜きで本当によく出来ている。
 全16曲約56分にわたって繰り広げられる濃密なアフロ・キューバン・カヴァーの数々... 心の広いビートルズ・ファンにオススメしたい、これからの暑い季節にピッタリの1枚だ。

Golden Slumbers / Carry That Weight / The End - Here Comes...El Son

Let It Be Hawaiian Style

2009-06-26 | Beatles Tribute
 ちょうど2年前の今頃だったと思うが、仕事の関係で神戸へ行く用事があった。私は大阪、京都、神戸方面へ出張した時は必ず地元のレコ屋を覗くことにしていて、この時もせっかく神戸まで出てきてそのまま帰るのはもったいないと思い、三宮~元町近辺のレコ屋を数軒廻ってみた。このあたりは昔はいくつかレコ屋があったのだが、震災後はLPを扱う店が激減し、今は生き残ったお店もほとんどがCD屋になっている。量・質共に別格の“ハックルベリー”を除けばあまり期待できないのが現状なのだが、この時はダークホースともいえるHMVで大収穫があった。実はあまりに暑かったのでちょっと涼みに(笑)HMVへ入っただけだったのだが、心地良い冷気に誘われてどんどん奥の方へ入っていくと試聴コーナーがあった。休憩がてらに涼みながら音楽を聴くのも悪くないと思い、すいている一角へと向かった。 “ワールド・ミュージック” のコーナーだ。何を聴こうかと見回すと1枚のCDが目にとまった。可愛らしいジャケットの左上隅の白地に赤でさりげなく “Let It Be Hawaiian Style” の文字が... (゜o゜) 何じゃこりゃ~と(←松田優作かよ!)急にテンションが上がった私は慌ててヘッドフォンをかぶった。おぉ、これはめっちゃエエやん!とすっかり気に入った私は大喜びでレジへと直行した。これで遠路はるばる神戸まで出てきた甲斐があったというものだ。
 この「レット・イット・ビー・ハワイアン・スタイル」はビートルズの名曲の数々をハワイのアーティスト達がウクレレを使ったり(ただしウクレレ一辺倒のサウンドではないのでウクレレ三昧を期待してると肩透かしを食います!)、ジャワイアン・アレンジ(ジャマイカ+ハワイアンのレゲエ風ビートを効かせたサウンド)で歌ったりしたアルバム。全15曲中6曲(①④⑧⑪⑫⑭)がこの企画のために新規に録音されたトラックで、残りはライセンスものという割合だ。何でも映画「フラガール」のヒットにあやかって夏に向けてビートルズのハワイアン・カヴァー・アルバムを、という安直な企画からスタートしたらしいが、聴く側にとってはありそうで無かった “ハワイアン・ビートルズ” という斬新な発想に興味津々だ。聞くところによるとタイトルに「ビートルズ」という名称を使用する場合は東芝EMIにお伺いを立てなければならないそうで、ソニーのこの盤では敢えて「ビートルズ」という表記をしなかったらしい。この業界も色々あるんやねぇ...(>_<) 内容の方はかなり充実していて、 “今のハワイで普通にラジオでかかっていてもおかしくない感じに仕上げたい” という当初の目標は十分にクリアしている。
 まずは何をさておき①「シー・ラヴズ・ユー」が圧倒的に素晴らしい。ハワイの超人気ガールズ・デュオ、ケアヒヴァイによるミディアム・スロー・テンポの絶妙なハーモニーが運んでくる甘酸っぱい薫りに胸がキュンとなる(≧▽≦) やっぱり一番出来の良い演奏を1曲目に持ってくるんやね。この1曲だけでも買ってよかったと思わせてくれるキラー・チューンだ。そしてそんな①と並んで気に入っているのが⑧「イエスタディ」で、サリーという新人アーティストの作品なのだが、原曲のメロディをストレートに歌って醸し出す素朴な味わいが実にエエ感じで、シンプル・イズ・ベストを地で行く名唱だと思う。とにかくこの2曲、脱力具合いが絶妙で、癒し効果は抜群だ。
 ②「ヒア・カムズ・ザ・サン」(リード・カポ・クー)は英語とハワイ語が交互に出てきて実に面白いし、③「ゲッティング・ベター」(ハワイアン・スタイル・バンド)は夏にピッタリのレイドバックしたサウンドが耳に心地良い。④「レディ・マドンナ」(イムア)はいわゆるバックヤード・スタイルのジャワイアンということで、ヤシの木の下でまったりと風に当たりながら聴きたいナンバーだ。ハワイのグラミーと呼ばれる“ナホク・アワード”最多受賞者ナレオの歌う⑤「ブラックバード」はユニークでありながらも原曲の良さを壊さない斬新なアレンジが面白い。これはかなり力入ってます(>_<) ショーン・イシモトの⑥「アイ・ウィル」はジェイク・シマブクロあたりを想わせる軽快なウクレレ・サウンドが楽しい。どこか歌い方の雰囲気がポールに似ていると感じるのは気のせいか?
 ケアリィ・レイシェルの⑦「イン・マイ・ライフ」は歌い上げる感じがちょっと胃にもたれる感じ。ウェイド・キャンバーンの⑨「ドント・レット・ミー・ダウン」やババBの⑩「サムシング」は③と同様の “ハワイアン・ビートルズ” そのものの常夏サウンド。マイラ・ギブソンの “ハワイアン・ダブ” ⑪「カム・トゥゲザー」は摩訶不思議な浮遊感覚がたまらない。これはかなりエエかも!ジョン・ヤマサトのライト&メロウなヴォーカルが爽やかな⑫「オール・マイ・ラヴィング」、ハワイアンなノリが新しいプカの⑬「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」と、夏の昼下がりにピッタリのナンバーが続く。
 ベン・ヴェガスの⑭「レット・イット・ビー」は原曲にかなり近いアレンジであまりハワイアン・スタイルという感じはしないが、これはこれでエエ感じの聴きごたえのあるナンバーに仕上がっている。ラストは「ウクレレ・ビートルズ」を彷彿とさせるようなイントロが印象的な⑮「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」。ロシェリー・ミドロという新人シンガーが歌っているのだが、ウクレレをバックに淡々と歌うこのトラックはハワイの夕暮れ時を想い起こさせる、ワイキキ・ビーチを車で流しながらゆったり気分で聴いたら絶対にハマるサウンドだ。
 ボッサ、ウクレレ、サルサ、ラテンetc 数ある夏向けビートルズ・カヴァー集の中で、この「レット・イット・ビー・ハワイアン・スタイル」は派手さはないものの、トップクラスの内容を誇る1枚だと思う。

シー・ラヴズ・ユー

Meet The Beatles / The Inmates

2009-06-23 | Beatles Tribute
 音楽ファン(もちろん私も含めて)というのは勝手にライバル関係を作り上げてどっちが良いとか喧々諤々の議論をしながら楽しむ傾向が多々あると思う。ゼッペリンvsパープル、マイコーvsプリンス、キャンディーズvsピンク・レディー、拓郎vs陽水と、挙げていけば枚挙に暇がない。こういう “作られたライバル関係” というのは、実際には志向している音楽的方向性etcが違うということが多いものだが、見た目には絵になる構図なのでメディアはここぞとばかり煽りまくる。そんな中、王者ビートルズのライバルは、ある時はビーチ・ボーイズだったり、又ある時はベンチャーズだったり(65年当時の日本だけですけど...)するのだが、同じイギリス出身のロック・バンドということでよく比較の対象にされてきたのがローリング・ストーンズである。
 まぁ両者ともに現役の頃ならいざ知らず、今となっては全く不毛な議論だとは思うが、ロックンロールをベースにフォーク、ブルース、カントリーといった様々なスタイルを貪欲に取り入れながら独自のポピュラー・ミュージックを創造していったビートルズの “拡散美” に対し、あくまでも自らのルーツであるリズム&ブルースに拘ったストーンズの “様式美” の違いと言っていいと思う。後はもう各人の好みの問題だと思うし、私はビートルズ原理主義者(笑)だが、ストーンズも好きでよく聴いている。
 そんな私にとって、もしもビートルズの楽曲をローリング・ストーンズがカヴァーしたら... というのは想像してみるだけでも楽しい妄想だったが、何とそれを現実にしてしまったバンドがいるのである。インメイツ... この盤を知るまでは名前すら聞いたことのないバンドだった。この「ミート・ザ・ビートルズ~ライブ・イン・パリ~」は87年のライブで全曲ビートルズのカヴァー、しかもヴォーカルはミック・ジャガーそっくりだし、バンドのサウンドも60年代中期のストーンズを彷彿とさせるシンプル&ストレートなロックンロールで、細かいことを気にせずにガンガン攻める骨太ガレージ・パンクだ。選曲がこれ又ユニークで、滅多にカヴァーされることのない①「リトル・チャイルド」や②「アイル・ゲット・ユー」なんかも演っている。ひょっとしてコイツら、かなりのビートルマニアなのかも...
 とにかくこのバンド、①のアタマから全開で突っ走る。 “リルチャアィル~♪” のイントネーションがモロにミックしているのが面白い。②も大胆なアレンジでインメイツ流に料理しており、そのステイタス・クォーみたいなグルーヴがたまらない。③「シーズ・ア・ウーマン」は割と原曲に忠実なアレンジながらリズム隊が大活躍で、縦横無尽に低音部を埋めるベースの躍動感には目を見張るものがあるし、レノン&マッカートニーの隠れ名曲④「ユー・キャント・ドゥー・ザット」でもドラムの叩き出す重いビートがめちゃくちゃ気持ちいい(^o^)丿 凄まじい勢いで突き進む⑤「デイ・トリッパー」でのノリノリの演奏も痛快だ。間髪をいれずに始まる⑥「バック・イン・ザ・USSR」、このあたりまで聴いてくるとストーンズ風とかはもうどうでもよくなってきて、ただただ最高のロックンロールを楽しむだけという感じになってくる。⑦「ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト」で少しクールダウンした後、⑧「アイ・ワナ・ビー・ユア・マン」をストーンズ・ヴァージョンでビシッとキメてくれる。これ、めちゃくちゃカッコイイ(≧▽≦) お次は何と⑨「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」だ。スタジオ・レコーディング・テクノロジーの塊のように思われている同アルバムのタイトル曲だが、私に言わせればライブ感溢れるロックンロール。それを見抜いた見事な選曲に脱帽だ。この曲以降5曲連続してポール作のロックンロールが並ぶが、⑩「バースデイ」の異様なまでの盛り上がりはライブならでは。⑪「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」の疾走感はもう圧巻と言う他ない。⑫「ゲット・バック」ではミック節が舌好調で、ある意味ミックよりもミックらしいかも...(笑) やりたい放題にガンガン弾きまくるラウドなギターもたまらない。⑬「アイム・ダウン」はご存知のように本家ビートルズのライブ・クロージング・ナンバーで、このインメイツのライブでも最後の大爆発といった感じでバンドが一体となって燃え上がる様がダイレクトに伝わってくる。ラストは⑭「ヘイ・ジュード」なのだが、ここまでハイスピード・ロックンロール1本でグイグイ押しておきながら、何で?と言いたくなる。ひょっとすると “ただ歌いたかっただけ” なのかもしれないが、私にはこの選曲だけが解せない。
 私の持っているCDは2002年に再発されたリマスター盤で、ボートラ3曲が新たに追加されたお徳用盤なのだが、特にエディ・コクランのカヴァー⑯「ジニー ジニー ジニー」が素晴らしい。⑰「テル・ミー・ホワッツ・ロング」のパワフルでスピード感溢れる演奏も特筆モノだ。購入時にはくれぐれも曲数をチェックしましょう。

The Inmates- Back to USSR

The Beatles Chill Out volumen 1

2009-06-13 | Beatles Tribute
 ちょうど2年前のこの時期に、私は仕事上のシガラミで、あろうことか文楽鑑賞につきあうハメになった。日本文化にも古典芸能にも全く何の興味も関心もない私は “そもそもブンラクって何なん?” 状態だったのだが、とにかく貴重な土曜日をつぶされ、わざわざ早起きして日本橋くんだりまでのこのこと出かけて行った。無意味な事に時間を取られるのはハッキリ言って不愉快である。傍から見て誰の目にも明らかに分かるほどの仏頂面で同僚と合流した私は、 “何でもエエからとにかく早よ終わってくれ!” と念じながら席に着き、やがて舞台が始まった。何じゃい、ただの人形劇やんけ、アホくさ... しかもセリフの日本語が古文すぎて全然わからんわ(>_<) クソ面白うもない... と思っていると数分で気を失ってしまった。もう爆睡である... (-_-)zzz やがて気がつくと周りの観客がみな私の方を見て笑っている。もうお分かりと思うが、私は首を直角に真上に向けた状態で大イビキをかいていたのだ。あぁ恥ずかしい... と思っていると隣に座っていた女性上司が「お疲れなんやねぇ(笑)」と私にトドメの一言。もう踏んだり蹴ったり気分の私は同僚たちとのランチも断り、会場を後にした。このままスゴスゴと奈良へ帰れるか!と思った私は久々のCDハンティングで憂さを晴らそうと考え、そこから一番近い千日前の大十へと向かった。
 ここはOSビルの一角にあるお店で2階の中古CD売り場には大量のCDが置かれているが、サウンドパックやディスクJJといった近辺のお店とは少し違う商品構成なので、時々とんでもないレア盤が眠っており、一瞬たりとも気を抜けない。この時も手ぶらで帰ってなるものかと気合十分で “カバー物” のコーナーを見ていたのだが、それはまるで私に見つけられるのを待っていたかのようにひっそりとそこにいた。それが「ザ・ビートルズ・チルアウト・ヴォリューム1」(緑盤)と「同ヴォリューム2」(赤盤)の2枚である。以前からネットでその存在は知っていたものの、eBayにもヤフオクにも出てこず、アマゾンでも “品切れでお取り扱いできません” 状態だった希少盤が1枚1,480円で私の手の中で “買ってぇ~♪” とアピールしているのだ。私は小躍りしながらレジへ直行した\(^o^)/
 chill outとは英語で “落ち着いて、リラックスして” という意味のスラングで、今では “クラブなどで激しく踊った後に昂った気持ちを落ち着かせるために聴くダウンテンポな音楽の総称” として用いられている言葉。つまりこれはお洒落で洗練されたヒーリング系ビートルズ・カヴァー・アルバムなのだ。ブランコ・ネグロ(白黒?)という名前のスペインのレーベルらしい。この妖しさがたまらんなぁ(≧▽≦)
 CDにはそれぞれ15曲ずつ入っており、わざとレコードのスクラッチ・ノイズを被せたりとか、曲の終りと次曲の頭を切れ目なく繋げるとか、中々凝った作りになっている。そのほとんどがチル・アウト、つまりスローなビートが支配するお洒落なサウンドをバックに癒し系女性ヴォーカルが囁くようにビートルズ・クラシックスを歌うという趣向で、私の好みにピッタリだ。そんな中で特徴的だったのが③「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」で、まるでポリスの1・2枚目のようなホワイト・レゲエ・サウンドにビックリ(゜o゜) 横溢する気だるさがたまらない④「ノルウェーの森」もクセになるし、ダリダみたいなヴォーカルがエエ感じの⑦「サムシング」や⑨「ヒア・カムズ・ザ・サン」も言うことなしだ。ユルユルな①「オール・マイ・ラヴィング」は凛としたピアノの音色がアクセントになっており、極上のチルアウト・サウンドになっている。囁き系女性ヴォーカルが続いた後いきなり炸裂するルイ・アームストロングみたいなダミ声の男性ヴォーカル⑥「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」には耳が潰れるかと思った(笑) ちょっと電子音楽に走り過ぎた感のある⑫「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」やベンチャーズの「ジョーカーズ・ワイルド」を想わせるシュールなモンド系カヴァー⑬「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」みたいなちょっと変わったサウンドも混じっているのでCD1枚約55分飽きずに一気呵成に聴けるのも嬉しい。
 とまあこんな具合に超掘り出し物を見つけて大収穫に終わったCDハンティングだったが、もしあの文楽鑑賞に駆り出されてなかったらこの2枚と巡り合えなかったかもしれないと考えると、CDやLPとの出会いなんてホンマに何が幸いするか分かりませんね(^o^)丿

The Beatles Chill Out - Norwegian wood

La France et Les Beatles

2009-06-01 | Beatles Tribute
 この1週間、すっかりフレンチ・フィーバーで盛り上がっているのだが、月も変わったということでここらでビシッと... いかないのが当ブログなんである。しかしいくら好きでも毎日同じものばかりは食べないように、ノーテンキにイエイエばっかり聴いているわけにもいかない。ということで思いついたのがこの「ラ・フランス・エ・レ・ビートルズ」(Fance & Beatles)である。
 このシリーズは60'sフレンチのリイシューで定評のあるフランスの Magic Records というレーベルがコンパイルした、フレンチ・アーティストによるビートルズ・カヴァー集で、Vol.1からVol.5まで出ている。1枚のCDにはそれぞれ20曲以上収録されていおり、歌手(グループ?)もシェイラ、ペトゥラ・クラーク、ジョニー・アリディを除けば顔も名前も知らない人たちばかりで、フレンチ・ポップス界には詳しくないのでよく分からないが、 “とりあえずビートルズをカヴァーして一発当ててやるべ” 的なノリの、チープでちょっと怪しげなカヴァーが結構多いように思う。だから他のカヴァー集のように “ビートルズ・カヴァーの名演” を期待して聴くと肩透かしを食うことになりかねない。例えるなら “フランス版「フロム・リヴァプール・トゥ・トーキョー」” といったところか。
 やはり何と言ってもフランス語の響き、ハッキリ言ってこいつがロックンロールに合わない。ビートルズやストーンズをまるごとカヴァーしたアルバムを出しているフランスきってのモンド・パロディ・バンド Bidchons(“ビドションズ”って読むのかな?)を聴いた時にも強く感じたことだが、語尾の子音を発音しないせいか、何か歯切れが悪くスカスカしていてロックンロールに一番大切な “ノリ” が損なわれているように思えるのだ。日本でいえば、ちょうど60年代のGSバンドがロックのメロディーに日本語の歌詞を乗せるのに苦労していたような、そんな感じである。だから本CD収録の、特に初期のロックンロール曲のカヴァーを聴く時は “東京ビートルズ” を聴くのと同じような(←あれほどヘンなのはないけど...)寛容な心、 “ビートルズ・カヴァーなら何でも許せちゃう” 的な広~い心が必要だ(笑)
 そんな中で気に入って聴いているのがリチャード・アンソニーの④「オール・マイ・ラヴィング」で、原曲の雰囲気を壊すことなく上手くフランス語に置き換えて歌っている。歌詞は何を言っているのか全く分からないので判断不能だが...(>_<)  Les Lionceaux(←読み方わからん!)の⑤「ドント・バザー・ミー」は何の変哲もないカヴァーだが、フランス語の違和感もなく、演奏も64年頃の平均的マージー・ビート・グループとしての水準はクリアしているように思う。ジャン・クロード・バートンの⑥「アイ・ワナ・ビー・ユア・マン」はヴォーカルがミック・ジャガーっぽい歌い方をしているし、バックのコーラスも含めてストーンズ・ヴァージョンのカヴァーと言っていいと思うが、これが結構クセになる演奏で、まさにB級グルメの味といった塩梅だ。レ・フィズの⑦「ユー・キャント・ドゥー・ザット」、私はこの曲が大好きなのだが、日本のGSバンドみたいなぎこちない演奏をバックに堂々と歌う女性ヴォーカルが潔い。スプリームズが「ア・ビット・オブ・リヴァプール」で歌ったヴァージョンに迫る傑作カヴァーだ。
 フランソワーズ・ファブリの⑪「シンク・フォー・ユアセルフ」、イントロのファズ・ベースといい、マラカスやタンバリンの使い方といい、そして何よりもジョージそっくりの歌い方といい、ビートルズ愛に溢れた楽しいカヴァーだ。ドミニクの⑫「ミッシェル」はフランス語部分の歌詞が少し変えられていて“ミーッシェル マー ベェ~ル♪” ではなく“ミーッシェル ミッシェル♪” となっているのが???だが、例の “I Love You 3連発” はちゃーんと “ジュテーム ジュテーム ジュテェ~ム♪” になっている。フランス人の歌うミッシェルも中々オツなものだ。ダニエル・デニンの⑭「アイム・ルッキング・スルー・ユー」は女性ポップ・ヴォーカルかくあるべし、と思わせる明朗快活な歌いっぷりが◎。⑮「エリナー・リグビー」はオリジナルに忠実に再現したオケをバックにエリック・セント・ローレンがポールになりきって歌っている。ダブル・トラックまでご丁寧に再現してるのにはワロタ(^o^)丿 ジェラード・セント・ポールの(21)「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー」、桑田師匠渾身のケッ作「アベー・ロード」のおかげでこの曲を聴くとどうしても舛添のオッサンの顔が浮かんでしまう(笑)のだが、このフランス語ヴァージョンを聴いて名曲はどんな言語で歌われてもやっぱり名曲やということを再認識した次第。CD1枚通してここまで聴いてくると、もう意味は分からなくても気分はすっかりおフランスだ(^.^)
 この「ラ・フランス・エ・レ・ビートルズ」シリーズはどちらかと言うと堅気のビートルズ・ファンよりも、酸いも甘いも噛み分けたベテランのビートルマニア向けの “面白ネタ” 探しの1枚だと思う。

Dominique - Michelle
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Lady Madonna / Leika & The Waiters

2009-05-19 | Beatles Tribute
 ビートルズを筆頭にお気に入りアーティスト達の面白いカヴァー・ヴァージョンを探し出してきて楽しむことは私のライフ・ワークの一つになっている。便利な世の中になったもので、今ではアマゾンやHMV、iTunesの曲目検索クリック一発で入手可能な音源がパソコン画面にすべて表示されるので、私のようなカヴァー・ソング・ハンターには大変ありがたいシステムだ。更にそれでも足らんとばかりにヤフオクで “○○ カヴァー” “○○ トリビュート” といった検索ワードを打ち込んで “現在価格” の安い順に並べ替えた(笑)ものをお気に入りに入れておいて毎週チェックしている。当然のことながら既に持っている盤やワケのわからん怪しい盤が殆どなのだが、時々 “これは!” と思わせるような掘り出し物に出会うことがある。レイカ & ザ・ウエイターズの「レディ・マドンナ」もそんな1枚だった。
 私はヤフオク検索時には “タイトルと画像” ではなく “画像” の表示設定にして画面に大量表示させて一気に見ていくのだが、目の覚めるような赤地バックにくわえタバコでギターを抱えたジャパニーズ・ゲイシャ・ガールのイラスト(オリジ盤はワンコのアップ写真)は私の目を引き付けるのに十分だった。 “ブルースをベースにしたアコースティックなサウンド” のビートルズ・カヴァー集というのも面白そうだし、600円という安値だったこともあり、即ビッドしてゲットした。
 レイカ & ザ・ウエイターズについて調べてみると、ロス在住の日系アメリカ人女性ヴォーカルを中心にしたハーモニカ、アコギ、ウッドベースの4人組バンドで、この「レディ・マドンナ」('92年)がデビューアルバムとのこと。まぁ百聞は一聴にしかずということで、とにかく聴いてみよう。
 まずはハーモニカが縦横無尽に響き渡るイントロに度肝を抜かれる①「デイ・トリッパー」、弾けるようなアコギのリズムに乗ってレイカの透明感溢れるヴォーカルが滑り込んでくる。ブルース、フォーク、カントリーといったアメリカン・ルーツ・ミュージックをベースにしたそのサウンドは、注意して聴かないとビートルズの曲だとは気付かないくらい換骨堕胎され、レイカ&ザ・ウエイターズの手法でバンド・アンサンブル化されている。今まで聴いたこのないような解釈だが、これはこれで中々面白い。②「レディ・マドンナ」はコンガのチャカポコ・リズムを隠し味に、ソウルフルなヴォーカルとファンキーなハーモニカがくんずほぐれつ疾走する。もうこの冒頭2曲で完全にレイカ&ザ・ウエイターズ流アコースティック・ブルースの世界だ。
 郷愁を感じさせるハーモニカのイントロがたまらない③「イン・マイ・ライフ」はそれまでの自由奔放な2曲に比べると原曲に近いアレンジながら、ドラムレス・アコースティック・ブルース・バンドならではの味わいが横溢している。④「ドゥー・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット」で、バンドが一体となって醸し出すドライヴ感が音楽を前へ前へと推し進めていく様はまさに圧巻といえるもので、私はこの躍動感に満ち溢れた演奏が大好きだ。
 ブルース魂全開の⑤「カム・トゥゲザー」、生音を活かした録音でライヴ感に溢れる⑥「グッドデイ・サンシャイン」、ウッド・ベースの深い響きがたまらない⑦「ジス・ボーイ」と続いて⑧「ホエン・アイム64」は何とアップテンポのブルー・グラスだ!1分2秒と1分52秒でみせるチェンジ・オブ・ペースの妙もお見事(^o^)丿 控え目なバッキングでレイカのヴォーカルを前面に押し出した⑨「イフ・アイ・フェル」に続く⑩「アイ・フィール・ファイン」はまるで年季の入った南部のブルース・バンドのような土の薫りが充満するコテコテのブルースで、1分31秒から炸裂するブルージーなハーモニカ・ソロが強烈だ。⑪「レヴォリューション~アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア~ラヴ・ミー・ドゥ~ユー・キャント・ドゥー・ザット~ドライヴ・マイ・カー」は①②と同じ路線のアメリカン・ルーツ・ミュージックのごった煮風な展開が面白い。⑫「キャント・バイ・ミー・ラヴ」はブルージーな中にモダン・ジャズのエッセンスが散りばめられたキラー・チューンで、イントロのベースといい、ツボを心得たギター・ワークといい、めちゃくちゃカッコイイ!どれか1曲と言われれば私はこの曲を彼らのベストに挙げたい。
 このアルバムには姉妹編として「レット・イット・ビー」(ジャケは青地にゲイシャ・ガールだが、赤ん坊の写真ヴァージョンのCDがオリジらしい)があり、そちらも期待を裏切らない同傾向の音が楽しめるので興味のある方は是非どーぞ。

レイカ&ザ・ウエイターズ

Gunter Noris' Beatles Album

2009-05-08 | Beatles Tribute
 レコード屋、特にジャズを扱うお店のご主人には個性的な人、いわゆる “名物オヤジ” と呼ばれる人が多い。私は奈良に住んでいるので主に大阪の店の話が中心になるが、数年前に惜しくも閉店した○ッグ・○ンクのO坂さんなんか最高に面白い人で、いつ行っても赤ら顔でバイトを叱り飛ばしておられて、客はみんな延々とその説教を聞かされながらエサ箱を漁ったものだった。ある時なんかレコードを売りに行くと「もっと売れそうな盤持ってきてくれんと困るんや... こんなんず~っと置いといても売れんかったら家賃ばっかりかかるやろ?」と愚痴を言われたりもした(笑) まさに大阪商人の鑑(?)と言っていいユニークな方で、こういった愛すべきオヤジさん達とのレコードを巡る駆け引きは今でも私のレコ修業時代の良い思い出だ。
 その一方でめちゃくちゃ真っ当な方もいらっしゃった。以前ご紹介したEASTの佐藤さんである。毎週のようにお店に通いつめるうちに親しくお声をかけて下さるようになり、私の好きそうな女性ヴォーカル盤が入ると「コレいいよ」とススメて下さったりもした。このお店は主にヨーロッパへ買い付けに行かれることが多く、他の店では(そしてネットでも)滅多にお目にかかれないような珍盤希少盤を数多く入手することが出来た。最初は女性ヴォーカルの話ばかりしていたのだが、ある時私がビートルズの大ファンだと言うと、「じゃあこんなんどう?」といって平積みされてたレコードの中から1枚の盤をサッと取り出してかけて下さった。曲は「レディー・マドンナ」。いきなりガンガンと叩きつけるようなピアノの連打だ!ウキウキするようなブラス群がメロディーを奏で、ドライヴ感溢れるピアノがオイシイ所を持っていく。コーフンした私が「それ下さいッ!」と言うと佐藤さんはニコニコしながら「このレコード、結構レアですよ。」と教えて下さった。
 アルバム・タイトルは「ギュンター・ノリス・ビートルズ・アルバム」。私はこのギュンター・ノリスというドイツ人ピアニストのことは全く知らなかったので色々調べてみると、ジャズっぽいフィーリングを持ったクラシック系のピアニストらしい。ロシアのプーチン大統領を若くしたような精悍な表情と鋭い目つきが只者ではない雰囲気を醸し出している。ドイツ原盤なのでジャケ解説のドイツ語は何のこっちゃだが、内袋に印刷されてるレコード群から考えると1969~70年頃のイシューだろう。
 演奏の方はサブタイトルに「ステレオ・ピアノ・フォー・ダンシング」とあるように、ストリングスやブラス、ギターといった様々な楽器をバックにレノン=マッカートニーの楽曲を明るくスインギーに演奏してみました、といった感じで、もうやりたい放題にガンガン弾きまくっている。他のクラシック系ピアニスト達がよくやるような “あぁ、お仕事してんのね” みたいな辛気臭いバラッド集とは全く違う、実に楽しいアルバムなのだ。
 収録曲は①「レディー・マドンナ」、②「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ」、③「バンガロウ・ビル」、④「オブラディ・オブラダ」、⑤「ペニー・レイン」、⑥「ヘイ・ジュード」、⑦「キャント・バイ・ミーラヴ」、⑧「バック・イン・ザ・USSR」、⑨「バースデイ」、⑩「ノーウェジアン・ウッド」、⑪「ホエン・アイム・64」、⑫「愛こそはすべて」の全12曲。私がこの盤を聴いて一番凄いと思ったのは各楽器のアレンジで、それぞれの曲の良さを引き出すようなファイン・チューニングというか、実に考え抜かれたアレンジがなされていること。しかも選曲がまたユニークで、普通のクラシックのピアニストなら絶対に選ばないような①⑦⑧⑨といったロック曲を平然と、そして楽しそうに弾きまくっているのだ。演奏している本人が楽しくてたまらないという、そんなアルバムがつまらないわけがない。とにかくこんなウキウキワクワクするようなピアノ・アルバムには滅多にお目にかかれないと思う。
 このアルバムは残念ながらCD化はされていないようだが、昔「ピアノ・ビートルズ」というタイトルで東芝から日本盤のLP(OP-8842)が出ていたようなので中古屋をこまめに回れば見つかるかもしれない。いつもとは違うちょっと変わったフォーマットでレノン=マッカートニーの名曲たちを楽しみたいというマニアックなビートルズ・ファンに超オススメの逸品だ。

ギュンターノリス
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アベーロード / 桑田佳祐の音楽寅さん

2009-05-05 | Beatles Tribute
 桑田佳祐の音楽寅さん、ご覧になりましたか?今回は「空耳アビーロード」ということでこの1週間ずぅ~っと楽しみにしてきたのだけれど、私の想像を遙かに超えて面白い、いや面白すぎる内容で、大いに笑わせていただきました(^o^)丿 まぁ桑田師匠が歌えば何でも空耳に聞こえそうなモンだが、まさか政治ネタでくるとは... しかも旬のネタが満載だ。それに地上波の30分番組で「アビーロード」全曲演奏なんて史上初の快挙ではないだろうか?敢えて痴デジを避け、地上波アナログで録画しといて大正解!コレは私のように桑田師匠を崇拝し、空耳アワーを心から愛するビートルズ・ファンには堪えられない永久保存版になりそうだ。

①「公明党BROTHER」 (Come Together)
 いきなり “首...相...首...相...” ときて “自由民主” やら “森喜朗” やらの政党名・固有名詞を連発、こんなんテレビで流してエエんかいな? “漢字なんか ふしゅう” と “みぞうゆう 言うのみ” ではコーヒー吹いた(>_<) やっぱり師匠は天才やわ!
②「さみしい....」 (Something)
 “さみしい... 反体制 志位使用済み”って共産党をおちょくってんのかな。でも最近の共産党ってニュースにもならんからインパクトは弱いか。
③「舛添居ず知らぬ間データ」 (Maxwell’s Silver Hammer)
 “天下るお偉いさん めっちゃいいね毎度さ 構図はザル法”ってちゃんと韻まで踏んでるとこが凄いよなぁ。“あらすじは税金大泥棒 保養施設の調子はどう?” ときて “改ざん 舛添居ず知らぬ間データ抹消だ!” “知ればあんな払わん” とまぁ言いたい放題。でもこれこそが国民の声なんちゃうの?
④「親だ~れ!?」 (Oh! Darling)
 “小泉一味” は分かるけど、“ウィッシュ一味” って誰?“遠い出雲のじいちゃん” って竹下のこと?政治に疎いので折角の風刺が愉しめない情けなさを感じてしまう。
⑤「僕当選さす票田」 (Octopus's Garden)
 さすがの師匠もコレは結構苦しかったのでは?50秒でサッサと終わらした感じ...(>_<)
⑥「iPhone中」 (I Want You)
 “iPhone中 iPhone中... 円相場” ってこれは面白すぎ!でも “市場 ヤベー!!” ってシャレにならんなぁ...
⑦「爪噛むおじさん」 (Here Comes The Sun)
 “いつもの奔放論理浮いた”は見事な空耳! “寝る大臣” と “飲む大臣” には大笑いした(^o^)丿 でも爪噛むおじさん、って誰?“あっ、そうかい”って歌ってたから麻生のことなんかな?政治に疎いと辛いです...(*_*)
⑧「民主党」 (Because)
 キタ━━━(゜∀゜)━━━!!! “違法?小沢 剛腕” “「偽装」でいいんですかい?一郎... 不満ない!?” “Ah... ゼネコン 金づる” “民主党の時代いつ来る 夢燻み暗い” コレってそのものズバリ歌ってるやん... あ~腹筋痛い!!! 自民党が選挙CMに使うかもね(笑)
⑨「油田は危機を招き」 (You Never Give Me Your Money)
 おぉ、ついに地球温暖化にまで話が及んだか... “憐れ二の舞「京都議定書」” “現に炎上はガザ地区” ってところが巧いなぁ...
⑩「国際危惧!!」 (Sun King)
 “日本に いつ拉致封印!?” “テポドン いつ発進!?” やっぱり北朝鮮ネタ来たか... もう何でもアリやなぁ... 桑田師匠最高!!!
⑪「民意無視して増した...!!」 (Mean Mr. Mustard)
 “全部税金だ 絶えず使途不明だ!!” “大臣なってヤバイ汁しゃぶろう!!” と本家ビートルズ直伝の風刺が冴え渡る師匠... “辞した幕僚長は書す 自衛だ防衛だ!!” に座布団3枚!
⑫「オレ審判!?」 (Polythene Pam)
 強引な裁判員制度の導入を皮肉ったシンプルな歌詞に大笑い... 「え!? 裁判員!? オレ審判!?」... 空耳の原点を思い出させてくれる傑作だと思う。桑田師匠、サザンの活動休止して毎日こんなネタ集めてたのかな(笑)
⑬「死刑にするも罰するも非道!?」 (She Came In Through The Bathroom Window)
 ここまでくると長年サザンで培った言語解体能力の賜物というべきか、言葉をサウンドとして捉えて自由自在に弄ぶ桑田師匠の才気煥発を見る思いがする。
⑭「公然知らんばい!!」 (Golden Slumbers)
 “居直る真意がわからない” が妙にメロディーとぴったり合ってて笑えるわ... でも政治家連中は笑えへんやろな。
⑮「借金が増え!!」 (Carry That Weight)
 “世は混乱 借金が増え 負債が増え 大問題” って最後までシニカルにやってくれます桑田師匠!それにしてもコレ、原曲を直訳しても「君はその重荷を背負っていくんだ」やから、全然シャレにならへんわ(>_<)
⑯「次年度」 (The End)
 世襲を皮肉った冒頭部もエエけど、何と言っても “阿倍、阿倍、阿倍、阿倍...” と連呼して “永遠 次年度 トラブッて 美しい国... 夢”でシメるシュールなオチが最高だ。最後は国会議事堂前の横断歩道を渡る天狗(小泉)ブルドッグ(阿倍)チンパンジー(福田)ひょっとこ(麻生)の4人を描いた永田町絵図のアップで幕... お、おもしろすぎる(^.^) それでタイトルが「アベーロード」とは、お見事!!!!!

桑田佳祐の音楽寅さん01


桑田佳祐の音楽寅さん02
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Free As A Bird - Women's Tribute To John Lennon -

2009-05-01 | Beatles Tribute
 CDはある一定期間を過ぎると生産中止、つまり “廃盤” になってしまう。これは私のような “音楽ジャンキー” にとっては由々しき問題である。ジャズを例に挙げると「サキコロ」や「クール・ストラッティン」、「ワルツ・フォー・デビィ」といった人気盤はやれ紙ジャケだの、やれ24ビットリマスターだの、やれボーナス・トラック1曲追加だのと、装丁を次々と変えて再発されるが、そんなモノ、普通のジャズ・ファンならとっくに持っているハズで、ファンが本当に聴いてみたい盤はず~っと未CD化のままか、たとえ運良く発売されても一旦廃盤になるともう二度と日の目を見ることはない。これはジャズに限ったことではなく、邦楽ポップスでも洋楽ロックでもマニアックな盤すべてに当てはまる厳しい現実である。今の私はいわゆる “王道” からちょっと逸れた “面白カヴァー盤” がメイン・ターゲットなので、ネットなどでたまたまその盤の存在を知って「聴いてみたいなぁ...」と思ってもどこにも売ってないとか、ヒドい時には試聴すらできないという事態に直面してしまう。そーなると最後はヤフオク頼みということになるのだが、プレミアがついて高い価格設定になっていたり、あるいは同嗜好のライバルとの入札競争で落札価格が高騰したりする。だからず~っと探していた廃盤を無競争でアホみたいな値段で手に入れた時は喜びもひとしおだ。
 3年ほど前、ネット検索していて出くわしたこの「フリ-・アズ・ア・バード~ウイメンズ・トリビュート・トゥ・ジョン・レノン」もそんな1枚で、96年に発売された後すぐに廃盤になったのだろうと思うが元々そんなに売れてるハズもなく、中古盤市場に中々出てこずヤキモキしていた。こういう時はヤフオクで網を張って獲物がかかるのを我慢強く待つしかない。私は “お気に入り” に “ヤフオク” フォルダを作ってそこに狙っている盤のページを登録しておいて3日に一度は一斉検索するようにしているのだが、この盤はその甲斐あって格安で手に入れることが出来た。
 これは「アンソロジー」収録の「フリー・アズ・ア・バード」にインスパイアされた日本コロムビアのディレクターが企画発案したもので、 “ジョン・レノンの卓越したメロディをクールなクラブ系お洒落感覚で聴くとこうなる” というサウンド・イメージが原点にあるとのこと。しかも “ジョンのメロディを女性の視点から自由な発想で楽しく聴きたい”ということで、無名ながら個性的な4人の女性ヴォーカリスト達がそれぞれユニークな解釈でジョンの名曲をカヴァーしている。
 アイルランド出身のイギリス人ミッシェル・フリンが歌う①「フリー・アズ・ア・バード」、④「ジェラス・ガイ」、⑧「スターティング・オーヴァー」はどれも彼女の囁くような癒し系ヴォーカルを上手く活かしたリラクセイション溢れるサウンドがエエ感じ。ただし⑧のバックで終始流れる波の音や滅多やたらと挿入される犬やオットセイ(?)の鳴き声は全くもって余計だ。無意味なだけでなく折角の名唱を台無しにしてしまう。こういうのをオーバープロデュースというのだ。
 カナダ人のローラ・リンが歌う②「イマジン」、⑤「ウーマン」だが、②はアレンジをこねくり回しすぎで、ジョンの大名曲をおかしなレゲエ崩れのリズムに乗せてその違和感をシンセの多用で誤魔化そうとしているのがミエミエのトホホなトラックになっている。一方⑤は原曲のテンポを上げてビートを強調し、軽快なポップスに仕上がっており、こっちは歌もアレンジも申し分なし。間奏で挿入される鳥の鳴き声や赤ん坊の笑い声がなかったらもっと良かったのにね(>_<)
 日本人シンガー、ヨーコJKの③「リアル・ラヴ」、⑥「カム・トゥゲザー」はどちらも彼女の日本人離れしたソウルフルなグルーヴ感が全開で、彼女のフォーキーな声質と相まって、コクがあるのにキレもあるという実に素晴しいカヴァーになっている(^o^)丿
 パリ在住15年の日本人シンガー、ヴィ・ヴィの⑦「ジュリア」はこのアルバム中一番オリジナルに近いアレンジで、夢見心地に誘うような彼女の脱力系ヴォーカルがたまらない。
 ジョンやポールの書いた曲をカヴァーするのに中途半端な小細工は要らない。心を込めてストレートにカヴァーするか、原曲の良さを活かした独自のアレンジで勝負するかのどちらかだ。このCDは良い意味でも悪い意味でもそのことを露呈しているように思う。

リアル・ラヴ

Bossa'n Beatles / Rita Lee

2009-04-08 | Beatles Tribute
 ボサノヴァは元々アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトといったブラジル音楽界の猛者たちが50年代後半に確立した音楽ジャンルで、クラシック・ギターを指でつま弾きながら呟くようなヴォーカルで抑制されたメロディーを歌うというスタイルが大きな特徴だった。しかし時が経ちそのグローバル化に比例するようにより洗練された聴きやすいサウンドへと変化するにつれて、誰もがそのメロディーを知っているような有名曲をゆる~いヴォーカルで歌った心地良い脱力系サウンドの総称として広義に解釈されるようになった。そういった新感覚ボッサは日本ではカフェなどで流れるお洒落感覚のBGM、いわゆるラウンジ・ミュージックとして定着しつつある。以前アルゼンチンのレーベルが仕掛けたストーンズ・ナンバーのボサ・ノヴァ・カヴァー集「ボッサン・ストーンズ」を取り上げたことがあったが、その後も「ボッサン・ローゼズ」や「ボッサン・マーレイ」といったいわゆる「ボッサン」シリーズが次々と作られ、そのどれもがヒット。一方本家ブラジルも負けじとボサ・ノヴァ界の巨匠ロベルト・メネスカル・ファミリーを中心とした“アルバトロス・ミュージック”レーベルが「ビートルズ・イン・ボッサ」や「カーペンターズ・イン・ボッサ」といったコンピレーション盤を続々発売、他にも大小様々なレーベルがまるでアホの一つ覚えのように既製の名曲の数々をボッサ化し、世はまさに“ボッサ・ウォーズ”の様相を呈してきた。そんな中、“単独アーティストによる” 一味も二味も違うビートルズ・ボッサ・カヴァー集としてリリースされたのがヒタ・リーの「ボッサン・ビートルズ」である。
 彼女は大のビートルズ・ファンで、パーカッシヴなボサ・ノヴァ、すなわちボッサン・ロールというスタイルを確立した“ブラジル・ロック界のクイーン”的なシンガーである。そんな彼女が念願叶って吹き込んだこの盤には彼女のビートルズ愛が溢れており、同じビートルズ・ファンとして彼女の悦びがダイレクトに伝わってくる。彼女はティーンエイジャーの頃から慈しんできたビートルズ曲のメロディーを崩すなどという勿体ないことはしない。リラクセイションに満ちたボサ・ノヴァのリズムをバックに珠玉のビートルズ曲を気持ち良さそうに歌うヒタ・リーの抑制されたヴォーカルには小賢しいアレンジなど必要ない。①「ア・ハード・デイズ・ナイト」はボサノヴァではなくまさにボッサン・ロールそのもののユルいロックアレンジが斬新だ。名刺代わりの1曲といったところか。②「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ」から本格的なボサ・ノヴァ・スタイルに突入、リンゴが歌った呑気な曲が信じられないくらい見事にボッサ化されている。囁くようなヴォーカルがたまらない③「イフ・アイ・フェル」、力の抜き具合が絶妙な④「オール・マイ・ラヴィング」、曲がニッコリ微笑んでいるような素敵なボッサ⑤「シー・ラヴズ・ユー」、パリのエスプリがそこはかとなく漂うフレンチ・ボッサ⑥「ミッシェル」、曲を慈しむように歌う姿勢に心打たれる⑦「イン・マイ・ライフ」、辛口バラッドを旨口ボッサに昇華させた⑧「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア」と、もう名曲名演のアメアラレである。アコーディオン入りでウキウキするようなボッサン・ロール⑨「抱きしめたい」、透明感溢れるヴォーカルが心に染み入ってくる⑩「ルーシー・イン・ザ・スカイ」、そして③⑦⑧のポルトガル語ヴァージョンが続き、ラストが⑭「キャント・バイ・ミー・ラヴ」でこれもポルトガル語で歌われている。“トゥド ポラァ~モ~ォ~♪”って、ポルトガル語で聴くビートルズも中々おつなものだ。
 だんだん暖かくなってきて陽射しが柔らかく感じられるこの時期、ヒタ・リーの素敵なボッサに浸りながら(←コレが言いたかった...笑)テラスで過ごすブリリアントな午後というのもエエんじゃないでしょうか?

Em minha vida (In my life - Beatles by Rita Lee)

Beatlegras 2

2009-03-19 | Beatles Tribute
 ブルーグラスというのはアメリカ南部でカントリー・ミュージックから派生した音楽の1ジャンルで、ギター、マンドリン、フィドル、ドブロ、バンジョー、ウッドベースといった楽器が主に使われるストリング・バンド・ミュージックのことである。文字通りブルーなグラス、つまり大草原が似合いそうな陽気で明るいアコースティック・サウンドで、ほぼ弦楽器オンリーでしかも楽器に通電しないのが大きな特徴だ。リズム・キーパーのドラムスがいないので、各楽器はその分自由なインプロヴィゼイション(アドリブ)が可能であり、ヴォーカルも含めて非常に高度なアンサンブルを聴かせてくれる。楽器の編成は大きく違うがそういった即興性の面から見ればジャズに相通ずるモノがあるだろう。たいていは高速で演奏され、バンジョーの速弾きなどがフィーチャーされることも多い。イメージとしては東京ディズニーランドのウエスタン・ランド(実際は西部の音楽じゃないけど...)で流れているような軽快な音楽と思えば分かりやすい。
 そんなブルーグラス・スタイルでビートルズの楽曲を演奏するバンドが現れた。人呼んで「ビートルグラス (Beatlegras)」。磐石のテクニックと豊かな音楽性を併せ持ったテキサス出身の3人組で、ビートルズの楽曲を見事なブルーグラス・アレンジで聴かせてくれる。一昨年の夏頃、iTunesの検索でこのバンドを偶然発見し、試聴してみるとこれが実にユニークなビートルズ・カヴァーだったので早速USアマゾンで購入した。この手のブルーグラス/カントリー・カヴァーとしては他に「ビートルズ・グラス」(こっちはgrassやけど紛らわしいっちゅーねん!)や「ピッキン・オン・ザ・ビートルズVol.1」「(同)Vol.2」などがあるが、それらはすべてインスト盤なので、ヴォーカル入りとなるとやはりこの「ビートルグラス」ということになるだろう。ブルーグラスにぴったりハマる「マザー・ネイチャーズ・サン」や「ブラックバード」、「イン・マイ・ライフ」も良かったが、何と言っても「バック・イン・ザ・USSR」のスリリングなプレイや「レディ・マドンナ」「ノーウェジアン・ウッド」の斬新な解釈が素晴らしかった。その後彼らのHPでセカンド・アルバムの存在を知り、出来るだけ安く買おうと色々調べたが今度は頼みの綱であるUSアマゾンでも何故か扱っておらず、仕方なしにHP経由の通販で購入したのだが、CD1枚で送料$12というアコギな商売で(スタンプは$2でした...)しかも送られてきたのはCD-R(゜o゜)、一瞬詐欺に遭ったのかと思った(この盤はCD-Rフォーマットでしか出回っていないらしいことが後になって判明)ぐらいだ。温厚な(?)私もこれにはさすがに腹が立ったが、肝心の中身の方はあのファースト・アルバムをも凌駕するカッコ良さで、ボッタクられた分も含めて十分お釣りが来る出来映えである。
 ややスローな曲が多かったファーストに比べ、ブルーグラスの魅力全開のアップ・テンポな演奏が目立つのが何よりも嬉しい。ビートルズに関係のないオリジナルが3曲入っているのが玉にキズだが、弾けるような①「プリーズ・プリーズ・ミー」、爽やかな②「グッド・デイ・サンシャイン」、軽快に突っ走る③「アナザー・ガール」、見事なコーラス・ワークが印象的な⑤「今日の誓い~アイル・ビー・バック」、曲の持つ哀愁をバッチリ表現した重厚なスイング感が絶品の⑥「エリナー・リグビー」、ブルーグラス特有のノリが曲想とピッタリ合った⑧「エイト・デイズ・ア・ウイーク」、カントリー色の濃かったオリジ・ヴァージョンを更に磨き上げたような⑨「ホワット・ゴーズ・オン」と、まさに一点の曇りもない。百聞は一聴にしかず、CD BABYのサイトで全曲試聴できるので興味のあるビートルズ・ファンはどうぞ(^o^)丿 久々に覗いてみたら待望のサード・アルバムが出ていたので早速注文した。早う来ぇへんかな...

beatlegras Hello Goodbye-Back in the U.S.S.R

Local Gentry / Bobbie Gentry

2009-02-24 | Beatles Tribute
 オムニバス盤というとどうしても「ただの寄せ集め」的なイメージが強く、ついつい軽視してしまいがちだが、時々とんでもない拾い物が入っていることがあり、決しておろそかにはできない。たまたま聴いたその1曲からあるアーティストを知り、自分の好みに合えば次はそのベスト盤なり口コミで人気の高いオリジナル盤なりに手を伸ばし、芋づる式に自分の音楽世界が広がっていく。こんな楽しいことはない。
 今から10年以上も前のことになるが、「ゴールデン・スランバーズⅡ」というビートルズ・カヴァー集を買った。東芝EMIが自社音源を切り売りするかのように定期的に曲目を少しずつ変えながら出しているオムニバス・ビートルズ・カヴァーCDの1枚だ。私はビートルズ関係はとりあえず何でも買うことにしているので、ウチの家には似たような内容の東芝音源オムニバス盤がゴロゴロすることになった(笑)
 しかしこの盤には他の盤には入っていない珠玉の1曲がひっそりと収められていた。それがボビー・ジェントリーの「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア」である。彼女のことは「ビリー・ジョーの唄」というヒット曲があるという事実を活字情報として知っていただけで歌を実際に聴いたのはこの時が初めてだった。アコギの弾き語り風のイントロで始まり、軽やかなテンポで彼女が歌いだすと0分32秒からブラッシュがスルスルと滑り込んできてビートを刻み、ヴァイブが彼女のヴォーカルに色づけしながらこのままいくのかと思えば1分00秒あたりで何処からともなくストリングスが飛来、テンポ・チェンジしてスローで切々と歌い上げると再び1分35秒あたりからウエス・モンゴメリーのような歌心溢れる軽快なアコギ・ソロに突入し、そのままフェイド・アウトしていくという疾風怒濤の展開で、まるでハミングでもしているかのような変幻自在の歌と演奏が楽しめる極上の2分25秒があっという間に過ぎていく。
 「これは一生モノだ!」と直感した私は彼女のディスコグラフィーを調べ上げ、この曲が「ローカル・ジェントリー」という彼女のサード・アルバムに入っていることを突き止めた。当時はまだCD化されていなかったのでそれからというもの、大阪・京都・神戸のレコード屋を探しまわり、ついに大阪梅田の「ミュージック・イン」でUS原盤をゲット、人気がないというか知名度が圧倒的に低いというか、この盤の存在は殆ど知られてなかったようで、1,800円というウソみたいな値段で入手できた。しかも嬉しいことにこのアルバムには「フール・オン・ザ・ヒル」と「エリナー・リグビー」のカヴァーまで入っていたのだ!
 帰って早速聴いてみるとそれらがまた期待以上の素晴らしい出来でもう笑いが止まらない。「フール...」はレイドバックした雰囲気横溢の素朴な味わい深いトラックで、日本語ヴァージョンがシングル化されていたのをご存知の方もおられるかもしれない。「エリナー...」は低く過激に走るベースの動き、哀愁舞い散るギターのフレーズ、縦横無尽にグルーヴを生み出すオルガンの響き、隠し味的に投入されるタンバリンの連打、といったバックのサウンドが彼女の抑制の効いたヴォーカルと音楽的・有機的・必然的に結びつき、一体となってめちゃくちゃカッコ良いヴァージョンに仕上がっているのだ(^o^)丿 それ以外の8曲も奇跡的に全曲素晴らしく、私にとってはビートルズ・カヴァー入りアルバムの最高峰として、「自分だけの名盤」の最右翼といえる1枚だ。
Bobbie Gentry - Fool On The Hill

John Pizzarelli Meets The Beatles

2009-02-10 | Beatles Tribute
 ビートルズ・カヴァーはボサノヴァ、ラテン、サルサ、ルンバ、タンゴ、ハワイアン、レゲエ、ヒップホップ、カントリー&ウエスタンから童謡(笑)に至るまで音楽界の様々なジャンルに及んでいるが、私的な感想として言わせてもらえばクラシックとジャズが不作である。クラシックに関しては元々興味がないのでハッキリ言ってどーでもいい。問題はジャズである。カウント・ベイシー、ゲイリー・マクファーランド、バド・シャンク、ラムゼイ・ルイス、ヘレン・メリル... どれもこれもイマイチな作品ばかりで、楽しく聴けるのはウェス・モンゴメリー、スタンリー・タレンタイン、そしてグラント・グリーンぐらいのものだ。失敗作に共通して言えるのは、ビートルズの楽曲を外ヅラ、つまりメロディーだけを取り上げて自分の土俵に引き込もうとしたことである。曲を単なる一素材として扱っており、そこにはビートルズに対する敬意や愛情が感じられない。これでは良い作品が出来るわけがない。
 ジョン・ピザレリはスイングすることを第一と考える正統派ジャズ・ギタリストで、同じくジャズ・ギタリストだった父の影響か古いスタンダード・ソングに精通しており、お手本はナット・キング・コールというから恐れ入る。しかしそんな彼も私と同じ「遅れてきたビートルズ世代」ということで、前作の「ナット・キング・コール集」に続いて出されたのがこの「ジョン・ピザレリ・ミーツ・ザ・ビートルズ」なのだ。彼はインタビューの中で「ビートルズの曲というのはメロディーだけ抜き出してもビートルズにはならないんだよ。バックのコーラスとかギター、ベース、ドラムスのフレーズまで総て含めて、それでやっとビートルズになるんだ。要するに一曲一曲が完璧で、鳴っている音の全部が揃わないとビートルズの曲にはならない、ということなんだね。」と言っている。さすがに本人がビートルズの大ファンというだけあって、若いのにすべて見抜いている。この盤が素晴らしいのは、どの曲も原曲の良さを壊すことなく見事なフォービート・アレンジでジャズ化されていることである。例えばスインギーな①「キャント・バイ・ミー・ラヴ」なんてイントロを聴いただけで思わず「エエなぁ... (≧▽≦)」と唸ってしまう。ギターとのユニゾンで聴かせる小粋なスキャットもたまらない。心が弾むような②「夢の人」なんか、ジャズを聴いたことのないビートルズ・ファンにも大ウケしそうなトラックだ。③「ヒア・カムズ・ザ・サン」のエスプリのきいた洒落た感覚はジャズならではのかっこ良さ。④「今日の誓い」も絶妙なブラス・アレンジを施され、バリバリのジャズになっており、キャッチーなビートルズとスインギーなジャズのの相乗効果がたまらない1曲だ。⑥「エリナー・リグビー」は本盤唯一のインスト・ナンバーだが、原曲の持つ哀愁を引き出しつつスイングさせるという離れ業を見事にやってのけている。まるでウェス・モンゴメリーが憑依したかのような歌心溢れるプレイは圧巻だ。⑧「ホエン・アイム64」ではほんわかした雰囲気を醸し出すクラリネットやアコーディオンをバックに軽やかにスイングしている。とにかくどの曲を聴いても「ハッピーに、軽やかに、粋にスイング」しているのが嬉しい。
 ロック/ポップス・ファンにとってジャズというジャンルは何だか敷居が高そうに思えるかもしれないが、私のリスニング体験から言うとジャズには大きく分けて2種類あるように思える。スインギーで楽しいリスナー・オリエンテッドなジャズと、プレイヤーの自己満足としか言いようのないワケの分からんジャズである。このピザレリのビートルズ・カヴァーは120%「楽しいジャズ」で、小難しいことなど一つもやっていない。歌心に溢れ、細心のアレンジが施されており、聴いていてグイグイ魅きこまれていく。これは私の知る限り最高のビートルズ・ジャズ・カヴァー集だと思う。

John Pizzarelli at Montreal Jazz. I've Just Seen a Face

ウクレレ・ビートルズ 2

2009-02-04 | Beatles Tribute
 昨日は「ウクレレ・ビートルズ」をボロクソにけなしてしまったが、今日はその続編「ウクレレ・ビートルズ 2」である。このシリーズは元々ウクレレ・フリーマガジンの「ローリング・ココナッツ」誌の企画で生まれたもので、 “ビートルズのカヴァーをウクレレで” というアイデアそのものは良かったが、いかんせん肝心の参加アーティストに問題があった。下らない演出に凝ること自体、リスナーだけでなくウクレレという楽器さえもバカにしているということに気付かない愚かな連中だ。
 しかしこの続編の参加メンバーを見てまず気付くのは、前作でそのようなアホバカ演奏を聞かせた連中がキレイサッパリ外され、マトモな演奏を聴かせる真のウクレレ・アーティストだけが参加しているということである。多分リスナーの苦情が多数寄せられたのだろうが、おかげで本作は実に聴き応えのあるものになっている。ビートルズの楽曲の素晴らしさは今更言うまでもない。ウクレレの素朴な音色と絶妙なスイング感も同様だ。だからしっかりしたテクニックと溢れんばかりの歌心でもってストレートに演奏すればいい、ただそれだけのことを今回参加した14組のアーティスト達はきっちりとやっているのである。
 まずはトップの①「ヘルプ」(今野英明とニューメキシコ)でいきなりガツーン!とやられる(>_<) ソンブレロをかぶったマリアッチの一団が目に浮かぶようなメヒコなサウンドにウクレレがベストマッチで、ビートルズ好きなアミーゴたちもグラシャス!と泣いて喜びそうな演奏だ。余計な音を足さないシンプルな演奏に耳が吸い付く②「抱きしめたい」(ハーブ・オオタJr)や③「イエスタデイ」(IWAO&吉川忠英)もごっつうエエ感じ。⑤「涙の乗車券」(ウクレレ・クラブ・ド・パリ)はハスキーな女性ヴォーカルが醸し出す哀愁が胸をしめ付ける(≧▽≦) ⑥「ペイパーバック・ライター」(ジェイムズ・ヒル)はウクレレの魅力全開の軽やかで可愛らしいヴァージョンに仕上がっているのが微笑ましい。
 定番化してきたリズムボックスとウクレレの組み合わせが実に楽しい雰囲気の⑧「エイト・デイズ・ア・ウイーク」(ベイビー&サイダー)には結構ハマッてしまった。リラクセイション感覚溢れる⑨「ヘイ・ジュード」(ラウラ feat.サクラ)は癒し効果抜群の女性ヴォーカルが◎。哀愁舞い散る⑩「エリナー・リグビー」(ダニエル・ホー)やどことなく懐かしい感じがする⑪「ペニー・レイン」(ローズ・アンリミテッド)もウクレレでしか出せない味わいがたまらない。
 そしてやはりというべきか、日本ウクレレ界の第一人者の歌心溢れるプレイに圧倒される⑫「シー・ラヴズ・ユー」(ペティー・ブーカ&キヨシ小林)は①と並ぶベスト・トラック。抜群のテクニックをそれと感じさせずに聴かせてしまうワザは凄いとしか言いようがない。まぁこれだけ内容が素晴らしいと「ビートルズ1」のベタなパロジャケにも愛着が湧いてくるというものだ。これはローリング・ココナッツ誌が捲土重来を期して前作の汚名返上に燃え、見事に名誉挽回に成功した起死回生の1枚だ。

ヘルプ!

ウクレレ・ビートルズ

2009-02-03 | Beatles Tribute
 昔はウクレレというとまず「夏」、「ハワイ」、「高木ブーのカミナリ様」というイメージしかなく正直言って軽く見ていたのだが、ライル・リッツという人のジャズ・ウクレレLPを聴いてその心地良いスイング感に開眼し、「アンソロジー」や「コンサート・フォー・ジョージ」のDVDを見てすっかり気に入ったお調子者の私はそれ以降ウクレレというと喜び勇んで買うようになった。
 そんなある時、ヤフオクでこの「ウクレレ・ビートルズ」を発見、「ヘルプ」のカラフルなパロジャケも気に入ったので速攻で落札した。1580円也。しかし好事魔多しで、このCDは全17曲中数曲の素晴らしいトラックを除けば残りはしょーもない演奏のオンパレードだった(>_<) 例えば①「キャント・バイ・ミー・ラヴ」(関口和之&IWAO)はいきなり「いらっしゃいませ、毎度ありがとうございます...」と自販機か何かの自動応答メッセージで始まり、その後あろうことかウクレレ演奏のバックでずーっとこのダサいSEが鳴り続けるのである。アホか!気が散ってまったく音楽に集中できない。プロデューサー、頭おかしいのとちゃいますか?コイツらはラストの⑰「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア」でも同じ様なダサい過剰演出でこのCDに泥を塗っている。あんまり不快なのでいつも飛ばして聴いていたが、今回ブログに書くにあたって久々に聴いてみて、やっぱりめちゃくちゃ鬱陶しかった(笑) もう二度と聴かない。
 ⑥「カム・トゥゲザー」(勝誠二)も別にウクレレで演る必要ないんちゃう?というようなワケのわからん演奏で聴いてるこっちの気持ちが萎えてくる。⑨「フール・オン・ザ・ヒル」(知久寿焼)に至ってはあろうことかウクレレを使って前衛まがいのキモチ悪い演奏に終始しているのだ。ポールの大名曲に対して何たる無礼!このCDは「ウクレレ・ビートルズ」なのだ。ビートルズの素晴らしい楽曲の数々をウクレレ独特の気持ちのいいサウンドでストレートに聞かせてナンボやないんか?勘違いもはなはだしい。それ以外にもただ何となくウクレレを使ってみましたというようなダラダラとした演奏が続き、ウクレレ好きのビートルズ・ファンを自認する私を言いようのない失望感が襲う。
 ハズレか...?しかしそんな私を救ってくれたのが、テンポを自在に変えながら歯切れの良いプレイを聞かせてくれる②「プリーズ・プリーズ・ミー」(バンバンバザール)、ウクレレとリコーダーという素朴な楽器の共演で実に心が和む③「夢の人」(栗コーダーカルテット)、4弦しかないウクレレという楽器で見事にビートルズの曲をスイングさせた⑦「オール・マイ・ラヴィング」(キヨシ小林&ウクレレ・スウィング・ギャング)、リズムボックスの単調なビートと軽快なウクレレの音色が不思議な調和をみせる⑭「ミッシェル」(ワタナベイビー)の4曲で、これらのトラックはめちゃくちゃ気に入っている。そのどれもがウクレレでビートルズの楽曲の魅力を上手く引き出していて、それまでのマイナス要素を帳消しにしてお釣りがくるぐらい素晴らしい演奏なのだ。上記のアホ連中とはアーティストとしての貫目が違うということだろう。まぁ1曲400円の4曲入りCDと考えれば腹も立たんか...(笑)

オールマイラヴィング