shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Gunter Noris' Beatles Album

2009-05-08 | Beatles Tribute
 レコード屋、特にジャズを扱うお店のご主人には個性的な人、いわゆる “名物オヤジ” と呼ばれる人が多い。私は奈良に住んでいるので主に大阪の店の話が中心になるが、数年前に惜しくも閉店した○ッグ・○ンクのO坂さんなんか最高に面白い人で、いつ行っても赤ら顔でバイトを叱り飛ばしておられて、客はみんな延々とその説教を聞かされながらエサ箱を漁ったものだった。ある時なんかレコードを売りに行くと「もっと売れそうな盤持ってきてくれんと困るんや... こんなんず~っと置いといても売れんかったら家賃ばっかりかかるやろ?」と愚痴を言われたりもした(笑) まさに大阪商人の鑑(?)と言っていいユニークな方で、こういった愛すべきオヤジさん達とのレコードを巡る駆け引きは今でも私のレコ修業時代の良い思い出だ。
 その一方でめちゃくちゃ真っ当な方もいらっしゃった。以前ご紹介したEASTの佐藤さんである。毎週のようにお店に通いつめるうちに親しくお声をかけて下さるようになり、私の好きそうな女性ヴォーカル盤が入ると「コレいいよ」とススメて下さったりもした。このお店は主にヨーロッパへ買い付けに行かれることが多く、他の店では(そしてネットでも)滅多にお目にかかれないような珍盤希少盤を数多く入手することが出来た。最初は女性ヴォーカルの話ばかりしていたのだが、ある時私がビートルズの大ファンだと言うと、「じゃあこんなんどう?」といって平積みされてたレコードの中から1枚の盤をサッと取り出してかけて下さった。曲は「レディー・マドンナ」。いきなりガンガンと叩きつけるようなピアノの連打だ!ウキウキするようなブラス群がメロディーを奏で、ドライヴ感溢れるピアノがオイシイ所を持っていく。コーフンした私が「それ下さいッ!」と言うと佐藤さんはニコニコしながら「このレコード、結構レアですよ。」と教えて下さった。
 アルバム・タイトルは「ギュンター・ノリス・ビートルズ・アルバム」。私はこのギュンター・ノリスというドイツ人ピアニストのことは全く知らなかったので色々調べてみると、ジャズっぽいフィーリングを持ったクラシック系のピアニストらしい。ロシアのプーチン大統領を若くしたような精悍な表情と鋭い目つきが只者ではない雰囲気を醸し出している。ドイツ原盤なのでジャケ解説のドイツ語は何のこっちゃだが、内袋に印刷されてるレコード群から考えると1969~70年頃のイシューだろう。
 演奏の方はサブタイトルに「ステレオ・ピアノ・フォー・ダンシング」とあるように、ストリングスやブラス、ギターといった様々な楽器をバックにレノン=マッカートニーの楽曲を明るくスインギーに演奏してみました、といった感じで、もうやりたい放題にガンガン弾きまくっている。他のクラシック系ピアニスト達がよくやるような “あぁ、お仕事してんのね” みたいな辛気臭いバラッド集とは全く違う、実に楽しいアルバムなのだ。
 収録曲は①「レディー・マドンナ」、②「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ」、③「バンガロウ・ビル」、④「オブラディ・オブラダ」、⑤「ペニー・レイン」、⑥「ヘイ・ジュード」、⑦「キャント・バイ・ミーラヴ」、⑧「バック・イン・ザ・USSR」、⑨「バースデイ」、⑩「ノーウェジアン・ウッド」、⑪「ホエン・アイム・64」、⑫「愛こそはすべて」の全12曲。私がこの盤を聴いて一番凄いと思ったのは各楽器のアレンジで、それぞれの曲の良さを引き出すようなファイン・チューニングというか、実に考え抜かれたアレンジがなされていること。しかも選曲がまたユニークで、普通のクラシックのピアニストなら絶対に選ばないような①⑦⑧⑨といったロック曲を平然と、そして楽しそうに弾きまくっているのだ。演奏している本人が楽しくてたまらないという、そんなアルバムがつまらないわけがない。とにかくこんなウキウキワクワクするようなピアノ・アルバムには滅多にお目にかかれないと思う。
 このアルバムは残念ながらCD化はされていないようだが、昔「ピアノ・ビートルズ」というタイトルで東芝から日本盤のLP(OP-8842)が出ていたようなので中古屋をこまめに回れば見つかるかもしれない。いつもとは違うちょっと変わったフォーマットでレノン=マッカートニーの名曲たちを楽しみたいというマニアックなビートルズ・ファンに超オススメの逸品だ。

ギュンターノリス

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2 コメント

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大阪のレコード屋さん (シュミット)
2009-05-08 23:31:35
今晩は、シュミットです。
最近ホント、大阪のレコード屋さんに行ってなくて、というか行くレコード屋さんがなくってさびしいですね。○ッグ○ンクさんがなつかしいです。僕はわりと愛想よくしてもらいました。いまどきあれだけ堂々とバイトに文句を言うひとはめずらしかったですね。店内で聞いた商売道の話しもわりとまっとうで、オモロイオッサンでした。
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ご存知でしたか! (shiotch7)
2009-05-09 01:46:13
シュミットさん、こんばんは♪
ビッ○・ピン○のオッチャン、懐かしいですねぇ... 又会いたいです。そのうちナイトスクープに依頼でも出そーかな(笑)
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