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shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

マイ・ロマンス / ペギー・リー

2010-01-31 | Standard Songs
 私の愛読しているブログに shoppgirl 姐さんの ☆★My Willful Diary★☆ がある。何気ない日々の出来事を綴った日記風のブログで、毎回姐さんお気に入りの “この1曲” を紹介されているのだが、そのセンス抜群の選曲と絶妙な “なりきり意訳” 、それにウィットに富んだ文章が楽しみで毎日チェックしている。
 先週そこでジェームズ・テイラーの「マイ・ロマンス」が紹介されていた。おぉ、我が愛聴曲が取り上げられとるやないか!しかもめっちゃ分かりやすい意訳付きで...(^.^) 根が単純で影響を受けやすい私は早速自分のブログでもこの曲を取り上げることにした。
 アメリカを代表する作曲家リチャード・ロジャースがミュージカル用に作ったこの曲は、元々はロマンチックな歌詞を切々と歌い上げるスローなナンバーで、ドリス・デイを始めリー・ワイリーやジョニ・ジェイムズといった古き良きアメリカを象徴する女性シンガーの名唱を生んできた。姐さんが紹介されていたジェームズ・テイラーのヴァージョンも胸に沁み入る歌声と粋な口笛がたまらない、まさに名曲は名演を呼ぶの好例だろう。姐さん、エエのを紹介して下さりありがとうございました(^o^)丿
 私は基本的にアップテンポでスインギーなジャズが好きなので、スロー・バラッドの愛聴曲というのは非常に少ない。だから最初のうちはこの曲に特に魅かれることもなかったのだが、ジャズ・ピアノ屈指の名盤「ワルツ・フォー・デビィ」のB面1曲目に収められていたスインギーなヴァージョンを聴いた瞬間にこの曲にすっかりハマッてしまった。それ以来、私は “スイングする「マイ・ロマンス」” を探し求めて現在に至っている。ということで今日はスインギーな「マイ・ロマンス」5連発です;

①Peggy Lee
 「フィーヴァー」の名唱で有名なペギー・リー 1961年のライヴ盤「ベイズン・ストリート・イースト」の中でこの曲は「One Kiss ~ My Romance ~ The Vagabond King Waltz」というメドレーの1曲として歌われていたが、私は今までこれほどスイングする「マイ・ロマンス」を聴いたことがない。更に凄いのはスイングしながらも随所でペギー・リー節を連発するところで、特に “soft guitar” の soft の発声なんかもう見事という他ない。出来ればメドレーの一部としてではなくフル・ヴァージョンで聴いてみたかった。
ペギー・リー


②Bill Evans
 エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビィ」と言えばほとんどの人がA面1曲目の「マイ・フーリッシュ・ハート」と2曲目のタイトル曲にしか言及しないのは一体どういうワケだろう?みんなB面聴いてへんのかな?それに口を開けばアホの一つ覚えみたいにエヴァンスとラファロのインタープレイのことしか言わへんけれど、私はポール・モチアンの絶妙なブラッシュ・ワークこそがこのアルバムを際立たせている陰の立役者だと思う。とにかくこの「マイ・ロマンス」、私にとってはエヴァンスの、そしてピアノ・トリオ・ジャズの金字塔と言える演奏だ。
マイ・ロマンス


③Lem Winchester
 ヴァイブ奏者レム・ウインチェスターの知る人ぞ知る “隠れ名盤” 「ウィズ・フィーリング」のラストにひっそりと収められていたこの「マイ・ロマンス」を発見した時は本当に嬉しかった。軽快なヴァイブの音色が耳に心地良いが、この演奏をスイングさせているのは名人ロイ・ヘインズの変幻自在のブラッシュ・ワークだ。ブラッシュ良ければすべて良し、の典型といえる名演ではないだろうか?
レム・ウインチェスター


④Charly Antolini
 スイングするフォービート・ジャズにかけてはヨーロッパ随一といわれる名ドラマー、チャーリー・アントリーニは60年代からスイング一筋の頑固一徹オヤジである。そんな彼が1990年にリリースした「クッキン」でこの曲を豪快に料理、歌心溢れるテナーはディック・モリッシーだ。
チャーリー・アントリーニ


⑤平賀マリカ
 マリカ姐さんは私が大好きなジャズ・ヴォーカリスト。彼女が選曲するスタンダード・ナンバーは私の好みとコワイぐらいに一致しており、アルバム全曲が愛聴曲で埋め尽くされているのが嬉しい(^.^) そんな彼女の 4th アルバム「モア・ロマンス」に入っていたこの曲、しっとりした歌い出しから気持ち良さそうにスイングし始め、フェイクを交えて活き活きとこの名曲を歌い切るあたり、正統派ジャズ・シンガーの面目躍如である。
平賀マリカ
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星に願いを / リンダ・ロンシュタット

2009-12-28 | Standard Songs
 私がまだ若かった頃、ディズニー・ソングというとどうしても “お子様向け” というイメージがあって全く眼中になかった。しかし30才を過ぎてジャズを聴き始めると、驚いたことに様々なジャズ・ミュージシャンがディズニー・ソングを取り上げていた。大人の音楽ジャズでディズニー??? 最初はワケが分からなかったが、実際に色々聴いてみるとこれがめっちゃエエ感じなのだ。私が “子供向け” とバカにしていた楽曲は逆に言えば子供でも分かるくらい素直でキャッチーなメロディーを持っており、それがジャズというフォーマットで演奏されることによって見事な “大人の音楽” になっていた。私は先入観で音楽を聴く愚かさを反省し、それ以来 “どんなジャンルでもとにかく実際に自分の耳で聴いてみて判断する” ようになった。今ではディズニーの曲は大好き(←単純!)なのだが、そんな中でも特に私が気に入っているのがこの「星に願いを」である。先月の G3 でディズニー特集をやった時に久々にこの曲をじっくり聴いてそのメロディーの素晴らしさを再認識した次第。ということで今日は「星に願いを」愛聴ヴァージョン5連発です:

①Linda Ronstadt
 私がこの曲にハマるきっかけになったのがリンロン姐さんの “スタンダード三部作” の最後を飾る「フォー・センチメンタル・リーズンズ」の冒頭に収められていたこのヴァージョン。超有名スタンダード・ナンバーを見事に自分のカラーに染め上げてしまうリンロン姐さんの安定した歌いっぷりが一番の聴き所。「ブルー・バイユー」や「ラヴ・ミー・テンダー」と同様、歌詞の一言一言が心に響いてくるヴォーカルの吸引力は圧巻だ。
When You Wish Upon a Star - Linda Ronstadt


②Hilary Duff
 これは先月の G3 でヒラリー・ダフ・マニア(笑)の plinco さんに教えていただいた。1年ほど前にソフトバンクのテレビCMで頻繁に流れていたということだが、全く知らなかった(>_<) この曲はスロー・バラッドで歌われることが多いのだが、このヒラリーちゃんのヴァージョンは意表を突いたノリノリのポップなナンバーになっており、めちゃくちゃ楽しい(^o^)丿 これは絶対に欲しいっ!と思って調べてみると残念なことにCDにはなっていないらしい。何で??? CD化を激しく希望したい1曲だ。
Hilary Duff-When you wish upon a star


③Dave Brubeck
 ジャズのディズニー集アルバムといえば私の場合は真っ先にデイヴ・ブルーベックの「デイヴ・ディグズ・ディズニー」が思い浮かぶ。普段はハードボイルドなブロック・コードの波状攻撃でガンガン弾きまくるブルーベックがしらじらしくも(笑)リリカルな演奏に終始しているところがいい。ポール・デズモンドのアルトの典雅な音色といい、ジョー・モレロの瀟洒なブラッシュの味わいといい、絵に描いたような名曲名演とはこういうのを言うのだろう。
When You Wish Upon A Star


④Dion and the Belmonts
 ディオンって誰?という人でもあの “トンデヘレヘレ♪” の掛け声で有名な「浮気なスー」はどこかで一度は聴いたことがあるかもしれない。そんな彼がベルモンツを従え、白人ドゥーワップ・グループの最高峰としてスタンダード・ナンバーに取り組んだのが「ウイッシュ・アポン・ア・スター」。オールディーズ・ファンなら涙ちょちょぎれそうな、古き良きアメリカが蘇る名唱が堪能できるヴァージョンだ。
DION & BELMONTS = WHEN YOU WISH UPON A STAR ( GREAT VERSION )


⑤Gary Scott
 アドリブがスベッただのインプロヴィゼイションがコロンだだのと、ブヒバヒ吹きまくるだけがジャズではない。ストレートにメロディーを唄い上げて聴く者を感動させる、というのも一流の証だろう。スタン・ゲッツが憑依したかのようなゲイリー・スコットのこのプレイ、夜空を見上げながら聴きたくなるようなロマンチックなムードが横溢しており、この曲の隠れ名演といっていい素晴らしい出来映えだ。
星に願いを
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リカード・ボサノヴァ / 平賀マリカ

2009-08-31 | Standard Songs
 早いもので8月も今日で終わり、昼間はまだまだクソ暑いけど夜になると結構涼しくて過ごしやすい(^.^)  “夏はラテン!” という単純な思いつきから始めたラテン系スタンダード聴き比べシリーズも「ティコ・ティコ」、「ベサメ・ムーチョ」ときて今回トリを務めるのは超愛聴曲「リカード・ボサノヴァ」(別名「ザ・ギフト」)である。元々大好きな曲だったのだが、最近買った平賀マリカのボサノヴァ集に入っていたヴァージョンがめちゃくちゃ気に入り、リカード熱が再燃したというわけなのだ。
 作者はブラジルのルイス・アントニオとジャルマ・フェレイラで、1959年に作られたということになっている。本であれネットであれ、どこで調べてもそういうことになっている。しかしジャズ・トロンボーンのエディ・バートが1955年に出したサヴォイ盤「アンコール」の中の「カンヴァセイション」という曲がまさに「リカード・ボサノヴァ」そのものなのだ。時系列でいうとこっちの方が4年も早い。一体これはどーなってんねん?まったくの謎である。どっちがいつパクッたのか、ネット上を色々探してみたがこの件に関する情報は皆無だった。真相をご存知の方はお教え下さい m(__)m
 この曲はヴォーカルならテレビのタバコCM で流れたイーディ・ゴーメ・ヴァージョン、インストならジャズ喫茶で一世を風靡したハンク・モブレイ・ヴァージョンがそれぞれ決定版だが、それ以外にもバーニー・ケッセルやズート・シムズ、バルネ・ウィランetc インスト・ジャズでは名演が目白押し。まぁ今回は素直に(笑)定番2つと問題のオリジ(?)版、それに超愛聴隠れ名演2つでいってみます:

①Eddie Bert
 「カンヴァセイション」というタイトルの通り、エディ・バートのよく歌うトロンボーンとJ.R. モンテローズの熱いテナーが楽器で “会話” するかのようなやりとりが強烈にジャズを感じさせてくれる。4分34秒から始まるハンク・ジョーンズの流麗なピアノ・ソロはまさに名人芸だ!
エディー・バート


②Eydie Gorme
 以前にも取り上げたゴーメだが、彼女抜きの「リカード」大会はシューマッハのいないフェラーリみたいなモンなので堂々の再登場(^.^) その一点の曇りもない見事な歌唱はこの曲の魅力を120%引き出しており、たとえ誰がオリジナルであろうとも私は “リカード = ゴーメの曲” だと思っている。これ以上の名唱があったら教えてほしいものだ。
Eydie Gorme The Gift!(Recado Bossa Nova)


③Hank Mobley
 ジャズがメロディーの大切さを忘れて下らない自己満足音楽へと堕し、衰退の一途をたどっていた60年代半ば、ジャズ黄金時代を支えたハンク・モブレイが盟友リー・モーガンをゲストに迎えて放った大ヒットがコレ。ロックやボサ・ノヴァといった当時の新しいリズムを巧みに取り入れながら、血沸き肉踊る痛快ハードバップでストレートに料理したこの演奏が当時のジャズ喫茶族に大いにウケたのも当然だと思う。
Recado Bossa Nova-Hank Mobley


④Gypsy Vagabonz
 これも去年一度紹介済みなのだが大好きな演奏なので気にせず紹介。刹那的な快楽を求める宴のような曲想と、かきむしるようなマカフェリ・ギターのサウンドがビンビン合っており、そこへ退廃的なムードを醸し出すヘタウマ・ヴォーカルが絶妙に絡んでいく快感を何と表現しよう?何度でも聴きたくなる妖しげな魅力が横溢のキラーチューンだ。カフェ・マヌーシュのライブでも演奏されて大盛り上がりだったこの曲、新たなマヌーシュ・スタンダードといえるかもしれない。
The GIFT '08/12/07/GYPSY VAGAVONZ


⑤平賀マリカ
 森川七月に次いで最近気に入ってる日本人ジャズ・ヴォーカリストがこの平賀マリカ。インストとは違ってこういう新しい人がどんどん出てくるからジャズ・ヴォーカルはやめられない(^.^) 彼女の魅力はしっかりした歌唱力と原曲の旋律を大切にしながら素直に表現するそのヴォーカル・スタイルにあり、ここでもその本領を存分に発揮、巧みなフレージングを交えながら快適にスイングする彼女の歌声が耳に心地良く響き、ギル・ゴールドスタインの緊張感漲るアコーディオン・ソロと共にこのラテンの名曲に新たな魅力を与えている。
リカードボサノヴァ

ティコ・ティコ / グラント・グリーン

2009-08-21 | Standard Songs
 昔からジャズとラテン音楽は切っても切れないほど密接な関係で、「ベサメ・ムーチョ」、「フレネシー」、「タブー」etc は今や立派なスタンダード・ナンバーだし、ペギー・リーやドリス・デイ、ジュリー・ロンドンのようにラテン曲を集めたアルバムを出すシンガーも多かった。そんなラテン系スタンダード・ナンバーの中で私が一番好きなのがこの「ティコ・ティコ」である。G3 の定例会で私がこの曲を出すと plinco さんも 901 さんも “出たぁ!ホンマにその曲好きやなぁ...(^o^)丿” と大笑いされる。この曲は実に妖しく美しい旋律を持っており、それが私の好みにピッタリ合ってしまったと言うしかない。元々は軽快なサンバっぽい曲調で、ラテン音楽の王様ザビア・クガート楽団やハモンド・オルガンの女王エセル・スミスの演奏でヒットしたが、私はどちらかというと、バリバリのラテン・バンドによる演奏よりも他ジャンルのアーティストがそれぞれの持ち味を活かしてカヴァーしたヴァージョンが好きだ。そもそも私がこの曲にハマるきっかけになったのはジャズ・ギタリスト、グラント・グリーンのヴァージョンで、コードワークやオクターブ奏法などをほとんど使わずに R&B 的なフレージングを随所に交えてただひたすら淡々と弾きまくるシングル・トーンがこの曲の持つ妖しい魅力を増幅させていて、それ以来すっかり “ティコ・ティコ・マニア” になってしまった。今日はそんな私のオススメ・ティコ・ティコを5連発:

①Andrews Sisters
 以前「素敵なあなた」でも取り上げたアンドリュース・シスターズは私の大のお気に入り。1930年代後半から40年代前半にかけてミリオン・ヒットが15枚というのも凄いが、その後のシスターズ系コーラス・グループは大なり小なり彼女らの影響を受けており、そういう意味でももっと評価されてしかるべき偉大な存在だと思う。その力強い三声一体のハーモニーは今の耳で聴いても実に新鮮だ。
Tico Tico - Andrews Sisters


②Paula Green
 1930年代後半から1940年代にかけてはバンド・シンガー百花繚乱の時代だったが、このポーラ・グリーンもそんな一人。これは1945年にピーター・アキスターの指揮の下、ちょうどその前年に公開されたミュージカル映画「世紀の女王」の挿入歌だったこの曲を彼女が自らの楽団をバックに吹き込んだもので、時おりフェイクを交えながら見事なヴォーカルを聴かせてくれる。
ポーラ・グリーン


③Grant Green
 ゴスペルを演ろうが、普通のスタンダードを演ろうが、ラテンを演ろうが知ったこっちゃない、俺にはこれしかないんや、とばかりにひたすら単音ピッキングで攻めまくる “偉大なるワン・パターン・ギタリスト”、グラント・グリーン。彼の持ち味である R&B 的ねちっこさと軽快なラテンのリズムが絶妙なマッチングをみせている。この曲にはそこはかとなく哀愁が漂っており、グリーンのシングル・トーンがシンプルなだけに、余計に胸に迫るものがあるように思う。この「コーヒー・ルンバ」みたいな味わいがたまらんなぁ...(≧▽≦)
Grant Green - Tico Tico


④Rosenberg Trio
 ジプシー・スウィング・ジャズの第一人者、ローゼンバーグ・トリオが小気味良いリズムに乗って疾走するこの超高速ヴァージョン、発想の原点はストーケロが影響を受けたフラメンコ・ギターの神様パコ・デ・ルシアによる超絶カヴァーだろう。アップ・テンポの曲を得意とするローゼンバーグ・トリオならではのカッコイイ演奏で、駆け抜けるようなスピード感といい、うねるようなグルーヴ感といい、すべてが圧巻だ。
ローゼンバーグトリオ


⑤Frank & Joe Show
 若手ジプシー・ギタリストのホープ的存在であるフランク・ヴィニョーラと変幻自在のドラミングでエディ・ヒギンズ・トリオの根底を支えるジョー・アショーネが組んだ “フランク & ジョー・ショー” はポップス、ロック、ジャズ、ラテンからクラシックまで、様々なジャンルの名曲をひたすら楽しくスインギーに演奏するユニットで、ここでも二人は持てるテクニックのすべてを駆使してこのラテンの名曲に新たな生命を吹き込んでいる。
フランク & ジョー

恋人よ我に帰れ / ミルドレッド・ベイリー

2009-07-31 | Standard Songs
 スタンダード・ソングというのは、1920年代から1950年ぐらいまでのいわゆるティン・パン・アレー・ソングや、ブロードウェイ・ミュージカル、映画音楽といった、 “古き良きアメリカン・ポピュラー・ソング” のことで、ガーシュウィンやコール・ポーター、ジェローム・カーン、アーヴィング・バーリンといった作曲家たちが書いた名曲の数々を様々なシンガーやミュージシャンによってそれぞれ独自の解釈で歌われ、演奏されてきた。つまりテンポ設定ひとつとっても急速調でいくのか、ミディアムでスイングするのか、バラッドで攻めるかによって同じ曲であっても聞いた印象がガラリと変わってくるし、ビッグ・バンドをバックにガンガン歌うかスモール・コンボを従えてジャジーに歌うか、ちょっと肩の力を抜いてボサノヴァ風に歌うかetc、アレンジによっても違いが生じやすい。だからスタンダード・ソングを聴く一番の楽しみは何と言っても “聴き比べ” にあると言える。
 そんなスタンダード・ソングの中で私の超お気に入りの一つが「ラヴァー・カムバック・トゥ・ミー(恋人よ我に帰れ)」、通称ラバカンである。YouTubeにはスタン・ゲッツやベン・ウェブスターといったインスト・ヴァージョンの目ぼしいヤツがアップされてないので、ここでは主にヴォーカルものを取り上げてみた。

①Mildred Bailey
 この曲の古典的名唱といえばミルドレッド・ベイリーだ。ラバカンは彼女の代表曲の一つで、私が知る限りでもデッカ、サヴォイ、そしてコロムビアと様々なレーベルで録音しておりそれぞれ甲乙付け難い素晴らしさなのだが、ここにアップされてるのはその中でも最も有名な1938年のコロムビア・レコーディングのもの。肩の力の抜けた自然な唱法で歌詞に秘められた女の情感を見事に表現しきっているのは凄いとしか言いようがない。3分6秒からの “Oh lover, oh lover” の独特の節回しもたまらない(≧▽≦)
恋人よ我に帰れ ~ミルドレット・ベイリー


②Nat King Cole
 ビッグ・バンドをバックにアップテンポでスイングするという、その後のスタンダードな流れを作った名アレンジはビリー・メイによるもので、そのアレンジの素晴らしさを倍増させるようなスインギーな歌声を聴かせているのが最高の男性ジャズ・シンガー、ナット・キング・コールという、これはもう絵に描いたような名演だ。彼をお手本と仰いでいた美空ひばりは「ひばりジャズを歌う」でも「ジャズ&スタンダード」でもこの曲をこれとほぼ同じアレンジで取り上げ、彼女なりのオマージュを捧げている。
Lover Come Back To Me - Nat King Cole


③Patti Page
 パティ・ペイジといえば「テネシー・ワルツ」でキマリ、みたいなイメージがあるが、実際の彼女はジャズでもポップスでも歌いこなせるバリバリの実力派シンガー。このラバカンはノリノリのビッグ・バンド・アレンジでスインギーに歌っている。リズムへの乗り方なんかもう堂々たるものだ。2分6秒から入ってくる手拍子も時代を感じさせて実にエエ感じ。70年代以降の音楽が忘れてしまった単純な楽しさが横溢しているアレンジだ。
LOVER COME BACK TO ME ~ Patti Page


④ザ・ピーナッツ
 日本が誇るスーパー・デュオ、ザ・ピーナッツがあのエド・サリヴァン・ショーに出演(1966年9月)した時の貴重な映像。こんなお宝映像まで見れるなんて、ホンマにYouTube さまさまですね(^.^) 宮川先生入魂の新アレンジ(他のアレンジはすべて却下されたらしい...)で得意の超高速シャバダバ・スキャットを披露する彼女らの堂々とした姿が実にカッコイイ(^o^)丿 
恋人よ我に帰れ


⑤美空ひばり
 1979年放送のTBS系音楽番組「サウンド・イン・S」の映像で世良譲のピアノをバックに歌い始める美空ひばり... いやはや凄い組み合わせだ。歌の途中から入ってくるしばたはつみ、その心意気は買うが、勇気と無謀とは違う。ひばりと並んで歌うというのは自殺行為に等しい。余裕の自然体で黒人顔負けのスイングを披露するひばりに対し、くずしたりリキんだりワメいたりしながら何とかして偽の感動を作ろうとしているように聞こえるその歌声は、引き立て役にすらなっていない。次元が違うとはこのことだ。
Standard medley

ディア・オールド・ストックホルム / スタン・ゲッツ

2009-07-20 | Standard Songs
 民謡と言うと日本人にとっては「佐渡おけさ」や「ソーラン節」、「おてもやん」といったイメージが先行してしまい誤解を招きかねないが、あれはあくまでも日本の民謡であり、英語でいえば Folk Song、つまり民衆の間で昔から親しまれてきた歌のことを指している。だから外国の民謡と言うのは当然日本のものとは全く違う、そのお国柄を反映したものになる。
 私はジャンルを問わず、哀愁を感じさせてくれるマイナー調の曲が大好きで、このブログでもこれまで「悲しき天使」や「パルナスの歌」(笑)、「素敵なあなた」といった哀愁舞い散るロシア民謡やユダヤ民謡を取り上げてきた。しかしもう一つ、ロシア、ユダヤと並ぶ世界三大民謡(←ウソです!)であるスウェーデンを忘れてはいけない。そんなスウェーデン民謡の中でもダントツに好きな曲がこの「ディア・オールド・ストックホルム」(原題は “Ack Varmeland, Du Skona”)。この曲は51年にテナー・サックスのスタン・ゲッツが取り上げて以来ジャズ・スタンダードとして定着、数々の名演を生み出してきた屈指の名曲で、私の “この曲は全部集めたる!” 癖の第1号となった記念すべきスタンダード・ナンバーなのだ。

①Stan Getz
 “ディア・オールド・ストックホルムの2大名演” といえば、聴く者の魂を震わせる「バド・パウエル・イン・パリ」と、哀愁舞い散るゲッツのこのヴァージョン。零れ落ちるようなピアノのイントロからもう名演の薫りが立ち込めている。テーマとアドリブの境界を全く感じさせずに伸びやかで美しいフレーズを紡ぎ出していくゲッツの歌心溢れるプレイが最高だ。
Dear Old Stocholm


②Miles Davis
 スタン・ゲッツがジャズ界に紹介したこのスウェーデン民謡をカッコ良いモダン・ジャズに仕立て上げたのが当時最高のジャズ・コンボの一つだったマイルス・デイビス・クインテット。特に前半のフィリー・ジョーのブラッシュ・ソロはカッコ良すぎてもう鳥肌モノ。KYなコルトレーンを自らの引き立て役として活用したマイルスの繊細なソロが絶品だ。
Miles Davis - Dear Old Stockholm


③Donald Byrd
 ②が世に出て以降、この曲を演奏するジャズメンは大なり小なりアレンジ面でマイルス・ヴァージョンの影響を受けているように思うのだが、ドナルド・バードのこのパリ・オリンピアでのライブもその傾向が強い。特にダグ・ワトキンスの力強いベース・ソロが聴き所。ボビー・ジャスパーが奏でるテナーの音色は低音の魅力が横溢だ。
Donald Byrd - Dear Old Stockholm (Short Version)


④西条孝之助
 スタン・ゲッツをリスペクトする西条孝之助の2004年赤坂bフラットでのライブ。プレイの端々にゲッツからのダイレクトな影響を感じさせるフレーズが多発するが、そこが逆にこの人の良いところ。ゲッツの初演から半世紀を過ぎ、遠く離れたこの日本で淡々と “ストックホルム” を演奏する西条の心に去来するものは何なのだろう?
Dear Old Stockholm@西条孝之助


⑤Monica Zetterlund
 スウェーデンを代表する№1美人歌手モニカ・ゼタールンドがスウェーデン語でスウェーデン民謡のこの曲を歌うという、もうこれ以上は考えられない “究極のストックホルム”。 彼女の歌唱からは言葉の壁を越えて伝わってくるモノがありゾクゾクさせられる。この曲のヴォーカル・ヴァージョンは非常にレアで、私はモニカしか知らない。
Monica Zetterlund - Ack Varmeland, Du Skorna
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素敵なあなた / アンドリュース・シスターズ

2009-07-13 | Standard Songs
 独特の哀愁を帯びたジューイッシュ(ユダヤ系)・メロディーにはどこか昭和歌謡の旋律と相通じるものがあり、ロシア民謡なんかと同様に我々日本人の心に深~く染み入ってくる。そんなユダヤ系スタンダード・ソングの中でも私がダントツに好きなのがこの Bei Mir Bist Bu Schon (素敵なあなた)である。
 遙か昔、テレビの深夜番組で世良譲トリオがこの曲を演奏していたのを聴いてその旋律が頭から離れなくなり気になっていたところ、偶然映画のワンシーンで③を見て “ヴォーカルもエエなぁ...” ということになり、本格的にこの曲の入ってるCDを探し始めたのが事の始まりだった。決定版は何と言ってもアンドリュース・シスターズだろうが、めちゃくちゃエエ曲なのにあまり歌ってる人がいないというのはやはり歌詞が英語じゃないからだろうか?今ではインスト・歌入りを問わず、この曲が入っていれば見境なく買ってしまう超愛聴曲だ。

①Benny Goodman
 正直言ってリーダーのベニー・グッドマンはどうでもいい。ヒステリックに吹き荒れるクラリネットはどうも苦手だ。ここで聴くべきは何と言ってもバンド・シンガー、マーサ・ティルトンの温かみ溢れる癒し系ヴォーカル。ノイズの向こうから聞こえてくるその歌声はノスタルジックなムード満点だ。
Bei mir bist du schrn, Benny Goodman, live 16/1/1938


②Andrews Sisters
 やはり「素敵なあなた」と言えばアンドリュース・シスターズ。彼女らは代名詞と言っていいこの曲を何度もレコーディングしているが、やはりこのオリジナル・ヴァージョンがベスト。当時としては大変モダンな感覚を持ったヴォーカル・グループであったことがよく分かる素晴らしいハーモニーだ。
Bei Mir Bist Du Schon-The Andrew Sisters


③桃井かおり
 薬師丸ひろ子主演映画「メインテーマ」でジャズ・シンガーに扮した桃井かおりが歌っていたヴァージョン。内容の薄い(というかワケの分からない)この映画の中で唯一圧倒的な存在感を示していたのが彼女がジャズのスタンダード・ナンバーを歌うシーンで、中でも雰囲気抜群のこの曲は出色の出来だった。
素敵なあなた 桃井かおり Bei mir bist du schrn


④Puppini Sisters
 これぞ21世紀に蘇ったアンドリュース・シスターズ!プッピーニ・シスターズの一糸乱れぬ3部のハーモニーはもうお見事という他ない。間奏で聞かれるマヌーシュ・ライクなギター・ソロは絶品だし、さりげないヴィブラフォンも効いている。何よりも演奏全体が思いっ切りスイングしているのがいい。この曲の隠れ名演と言えるだろう。
The Puppini Sisters - Bei mir bist du schon


⑤Cat Lee & Co.
 マヌーシュ・スウィングの新譜で久々に感銘を受けたのがこのフィンランドのヘルシンキから現れた4人組キャット・リー & Co.である。とにかくザクザクかきむしるようなギターを中心としたスイングこそがマヌーシュの生命線!それをこの演奏は如実に物語っており、心にビンビン響いてくる。
Bei Mir bist Du Shoen by Cat Lee & Co