shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ティコ・ティコ / グラント・グリーン

2009-08-21 | Standard Songs
 昔からジャズとラテン音楽は切っても切れないほど密接な関係で、「ベサメ・ムーチョ」、「フレネシー」、「タブー」etc は今や立派なスタンダード・ナンバーだし、ペギー・リーやドリス・デイ、ジュリー・ロンドンのようにラテン曲を集めたアルバムを出すシンガーも多かった。そんなラテン系スタンダード・ナンバーの中で私が一番好きなのがこの「ティコ・ティコ」である。G3 の定例会で私がこの曲を出すと plinco さんも 901 さんも “出たぁ!ホンマにその曲好きやなぁ...(^o^)丿” と大笑いされる。この曲は実に妖しく美しい旋律を持っており、それが私の好みにピッタリ合ってしまったと言うしかない。元々は軽快なサンバっぽい曲調で、ラテン音楽の王様ザビア・クガート楽団やハモンド・オルガンの女王エセル・スミスの演奏でヒットしたが、私はどちらかというと、バリバリのラテン・バンドによる演奏よりも他ジャンルのアーティストがそれぞれの持ち味を活かしてカヴァーしたヴァージョンが好きだ。そもそも私がこの曲にハマるきっかけになったのはジャズ・ギタリスト、グラント・グリーンのヴァージョンで、コードワークやオクターブ奏法などをほとんど使わずに R&B 的なフレージングを随所に交えてただひたすら淡々と弾きまくるシングル・トーンがこの曲の持つ妖しい魅力を増幅させていて、それ以来すっかり “ティコ・ティコ・マニア” になってしまった。今日はそんな私のオススメ・ティコ・ティコを5連発:

①Andrews Sisters
 以前「素敵なあなた」でも取り上げたアンドリュース・シスターズは私の大のお気に入り。1930年代後半から40年代前半にかけてミリオン・ヒットが15枚というのも凄いが、その後のシスターズ系コーラス・グループは大なり小なり彼女らの影響を受けており、そういう意味でももっと評価されてしかるべき偉大な存在だと思う。その力強い三声一体のハーモニーは今の耳で聴いても実に新鮮だ。
Tico Tico - Andrews Sisters


②Paula Green
 1930年代後半から1940年代にかけてはバンド・シンガー百花繚乱の時代だったが、このポーラ・グリーンもそんな一人。これは1945年にピーター・アキスターの指揮の下、ちょうどその前年に公開されたミュージカル映画「世紀の女王」の挿入歌だったこの曲を彼女が自らの楽団をバックに吹き込んだもので、時おりフェイクを交えながら見事なヴォーカルを聴かせてくれる。
ポーラ・グリーン


③Grant Green
 ゴスペルを演ろうが、普通のスタンダードを演ろうが、ラテンを演ろうが知ったこっちゃない、俺にはこれしかないんや、とばかりにひたすら単音ピッキングで攻めまくる “偉大なるワン・パターン・ギタリスト”、グラント・グリーン。彼の持ち味である R&B 的ねちっこさと軽快なラテンのリズムが絶妙なマッチングをみせている。この曲にはそこはかとなく哀愁が漂っており、グリーンのシングル・トーンがシンプルなだけに、余計に胸に迫るものがあるように思う。この「コーヒー・ルンバ」みたいな味わいがたまらんなぁ...(≧▽≦)
Grant Green - Tico Tico


④Rosenberg Trio
 ジプシー・スウィング・ジャズの第一人者、ローゼンバーグ・トリオが小気味良いリズムに乗って疾走するこの超高速ヴァージョン、発想の原点はストーケロが影響を受けたフラメンコ・ギターの神様パコ・デ・ルシアによる超絶カヴァーだろう。アップ・テンポの曲を得意とするローゼンバーグ・トリオならではのカッコイイ演奏で、駆け抜けるようなスピード感といい、うねるようなグルーヴ感といい、すべてが圧巻だ。
ローゼンバーグトリオ


⑤Frank & Joe Show
 若手ジプシー・ギタリストのホープ的存在であるフランク・ヴィニョーラと変幻自在のドラミングでエディ・ヒギンズ・トリオの根底を支えるジョー・アショーネが組んだ “フランク & ジョー・ショー” はポップス、ロック、ジャズ、ラテンからクラシックまで、様々なジャンルの名曲をひたすら楽しくスインギーに演奏するユニットで、ここでも二人は持てるテクニックのすべてを駆使してこのラテンの名曲に新たな生命を吹き込んでいる。
フランク & ジョー

この記事についてブログを書く
« ナゴリユキ / Kat McDowell | トップ | Boots / Nancy Sinatra »