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見えてきたジャンボタニシ対策

2021-08-20 04:21:37 | 「ちいさな田んぼのイネづくり」

 水牛の世話を始めて2ヶ月になる。もうしばらく飼うことに成りそうだ。しばらく生き物を飼っているといなくなれば寂しいことになりそうである。草がある間はここに置いておきたいと言うことだったが、3反の草地だから、1頭には充分あるのではないか。

 水牛は体中に泥を付けている。小さな泥あび場を作ってやったのだ。水をそこに運んでやる。寝転んでいる所に、水を浴びせてやると、何とも嬉しそうに、身体を反転させ、足をバタバタさせて、まるで猫がじゃれているようにしている。表情は無いが、喜んでいるとしか思えない。

 ところが残念なことにこの水たまりに、尿をしたり糞をしたりしてしまう。それを身体にくっつけるから、不衛生極まりない。しかし、どうもそれが好きらしくてどうしようも無い。こっちがその汚さに慣れるほか無い。糞尿泥を身体に付けていれば、虫に刺されないのかもしれない。

 汚いと行っても草食動物の糞尿だから、人間のような汚さは無い。人間ほどきたいないものは無いのかもしれない。牛の糞は燃料にしたり、壁にしたりするようだから、汚いと思うことを止めさえすればいいわけだ。水牛が好きでやっていることだから、そんなものだと思うほか無い。

 石垣島で伝統的農業の水牛を使う田んぼで取り組んだ。まず一番の課題は、ジャンボタニシ対策であった。現在田植え3週間目は過ぎたのであるが、ほぼジャンボタニシ対策は見えてきた。ジャンボタニシは草取りをしてくれる、利用できる生き物だ。排除から、共生を考えるべきだ。習性を知れば怖いことは少しも無い。

 ジャンボタニシと共存する田んぼでのイネ作りの方法を上げれば、大苗栽培をすることである。5,5葉期の二分ケツ苗である。大型機械農業でもすでに大苗栽培技術は確立している。稲葉農法では有機農業で完成した技術となり、10ヘクタールを超える農家が出現している。

 農協の苗生産は大型苗に変えてゆくべきだ。そうすれば、除草剤も不用になり、ジャンボタニシの殺虫剤も使わないですむ。安心、安全な農業に一歩前進である。ともかく草が生えない。ジャンボタニシは草の小さな発芽を嘗めるように歩いている。

 石垣島のジャンボタニシの量は半端ではない。小田原と比べれば、10倍も居るかと思えるほどだ。亜熱帯の気候がジャンボタニシの生息数を倍増させているのだろう。帰化生物の強さなのだろう。これから日本全体でジャンボタニシの生息数が増えるに違いが無い。

 ジャンボタニシを排除するのでは無く、共生できる技術があると言うことを探らなければ、農薬の使用量が増えるばかりである。ジャンボタニシがいる田んぼの雑草知らずのイネ作りが存在することを知ってもらいたい。

 いくつかの耕作方法で考えていることがある。一般には田植え前にジャンボタニシを完全に居なくなるように薬殺している。そして、ジャンボタニシは水が無いと移動が出来ない。そのために石垣島では田植えから2週間ほど淺水にしている。これは水鳥の対策でもある。

 しかし、田植え直後田んぼがひび割れるほど、水を落としていることは稲の生育には余り良くない。それでも徹底した薬殺が出来なかった田んぼではそれなりにジャンボタニシの食害は起きている。殺虫剤を徹底して使うので無ければ、ジャンボタニシは残る。苗が小さければ、ジャンボタニシは水たまり部分のイネを食べてしまう。

 次の対策は畦際を深くする。田んぼ一枚を一周するように溝を掘る。田植え後は全体をヒタヒタ水にして溝には充分水があるようにすると、ジャンボタニシはこの溝に集まる。集まったジャンボタニシを拾えば良い。この溝にジャンボタニシを集める罠を仕掛けるのもさらに良い。

 ジャンボタニシは夜イネを食べていると言われるが、観察の結果では夜は何をしているのか分からないが、朝は居ない。10時頃出てきて、又居なくなる。そして5時頃又活動を始めるようだ。ジャンボタニシを拾って取り除くにはこの時間が一番効率が良い。

 どれほどジャンボタニシを拾ったところで、居なくは成らない。薬殺した田んぼでもどこかで再生していると思われる。いつでも現われて雑草の芽を食べ尽くす。田植え2週間を過ぎたならば、浅水は終わりにして深水にしてゆく。

 深水にしたほうが、がっちりした株になる。10センチ以上の水深を目指す。深水ががっちりした株にする。深水は分ゲツが採れないと言うが、水圧や日陰になるために分ゲツが抑えられると言うことは無い。7葉期の大きさになれば、深水でももうジャンボタニシは草取りに活躍するだけである。

 すると、出てくる分けつを食べてしまうのではないかという不安を抱くだろう。ところが種から出てくる柔らかな芽とは違い、分けつは余りかじられる様子は無い。確かに株にとりついているタニシは時に見かける。しかし、株を押し倒されないかぎり、イネは大丈夫に見える。もう少し観察はしてみたいところではある。

 3週間が過ぎて8葉期になれば、むしろジャンボタニシの利用である。雑草対策のためにジャンボタニシを適度に拾い管理してゆけば良いだろう。適正な量というものがあるのだろう。雑草が全くないという状態はイネには良い効果がある。
 
 一本植えで栽培して、比較の為に一部を2本植えにした。確かに2本植えは倒されないために、ジャンボタニシは余り食べることが出来なかった。また、風の強い石垣島では2本植えで無いと、風に押し倒されると言うことが起こる。

 2本植えにするには十分な量の苗を作る必要がある。これは少し負担になるが、補植の手間が減ると言うことには成るので、石垣島では種籾採取部分だけを1本植えにして、あとは2本植えにすると言うことが良いかもしれない。

 今年は5,5葉期の苗と言っても台風で苗が泥に埋め込まれてしまい、生育がもう一つ弱かった。本当にしっかりした苗が作れれば、1本植えでも大丈夫かもしれない。種籾採取部分だけ1本植えにしてみて、次回は観察を継続してゆきたい。

 一期作の苗であれば、1月6日に種籾の海水選を行う。そして穴あきビニールでの苗作りを行う。穴あきビニールであれば、中にタニシが入れない。風も防げる。石垣島の1月が丁度小田原の4月の気候である。サトジマンを作ることが案外に良いのかもしれない。小田原の田んぼが気になるところである。

 石垣島に向いた、種籾がみつから無いようなら、サトジマンの種籾を使おうかと思っている。夏の間の夜の気温の高さが、一番イネに悪影響を与えているのだろう。これに耐えうる品種を探す必要がある。

 ジャンボタニシ対策は3つである。1、大苗の2本植え。2,田んぼ畦際の溝。3,田植えから2週間の淺水管理。これで草取りがいらなくなるのだから、農薬不使用の田んぼが実現すると言うことになる。


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1 コメント

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Unknown (yaeko)
2021-08-20 19:37:23
こんにちは
いつも読んでいるブログ
奈良県にお住まいの方なのか?彼女の住んでいる地域ではジャンボタニシを使った稲づくりに取り組みはじめたようです。広まってくれることを願っています
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