蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

モノレールねこ

2009年08月23日 | 本の感想
モノレールねこ(加納朋子 文春文庫)

日常の謎系のミステリ短編集。

「マイ・フーリシュ・アンクル」は、
父・母・祖父母が海外旅行中に事故で亡くなってしまった女子中学生の話。
この中学生は(祖母の具合が悪くなってから家族で)父の実家で暮らしていたが、そこには長年居候状態の父の年の離れた弟がいた。この弟は就学も就職もしていないいわゆるニート状態なのだが、家事も一切できず、ヘマばかりしている。
しかし、やがてこの弟がなぜロクデナシ状態になっていたのかが判明する。この謎解きが(リアリティはないけれど)意外感があり(かつ、伏線も十分にあったのに気がつかなかったので)面白かった。

「セイムタイム・ネクストイヤー」は、
5歳の娘を亡くして人生に絶望した母親が、娘の誕生日にあるホテルに泊まる。
するとそこに娘の亡霊が現れる。母親は来年も同じ日にホテルを予約し、そしてその日にはちょうど1年分年をとった亡霊が母親を迎えてくれる。
何年か同じことが続いた。母親は気づいていた。亡霊は娘によく似た子供を(夫に頼まれて)ホテルが差し向けていることを・・・
とここまでは(浅田次郎風の)何てことない筋なのだが、ある年、ホテル側は、“亡霊”が現れるのは今年で最後になると言う。
それはなぜか?という種明かしが、一ひねりしてあって、これも「作者にしてやられた」って感じだった

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