蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

航路を守れ

2021年11月13日 | 本の感想
航路を守れ(ジョン・C・ボーグル 幻戯書房)

1974年に運用会社バンガードを設立し、翌年設定したインデックスファンドを中心にして同社を世界有数の規模にまで育て上げた著者の回顧録。
何事も平均に回帰する、といいうのが著者の信念で、すばらしい運用成績を残しているファンドも長期的には市場平均のパフォーマンスに落ちてくる(逆も真)、という意味。それならば、最初から平均(インデックス)に連動するよう銘柄選択をして後はできるだけ運用や販売費用を減らせばファンドのパフォーマンスはよくなるはず、というのが著者の哲学のようである。

インデックスファンドの父として有名な著者は、業界との摩擦を恐れない、逆にいうとちょっと圭角のある人物と聞いていたが、本書を読むと、そのとおりのプライドが高そうな人だなあ、と思えた。まあ、そういう人でないと革命的な事績を残すことは難しい、ということだろう。

かつて日本の投信の多くは、数年で償還を迎えることが多かった。恐らく銀行の定期預金の対抗商品として2年くらいの満期期間みたいなものがあったほうがわかりやすかったからだろうが、販売会社の手数料稼ぎの手段としてもその方が都合がよい、という面が強かった(次々に乗り換えさせるため)のではないかと思う。
アメリカでは(日本風にいうと)会社型の商品が多くて、一旦設定されれば半永久的に継続されることが前提になっているようだ。
設立して数年くらいの成績不振でファンドを見限ることはなく、運用会社の変更など様々な努力を経て成長させていこうとしていることが本書を読むとよくわかった。

本書にも何人か登場するが、かつて(1990年代まで?)は「マネーマスター」などと呼ばれる著名なファンドマネージャがたくさんいた。
リンチ、バフェット、ネフ、テンプルトンなどなど。
しかし、2000年代になるとこうした運用業界の巨人としての個人名はあまり聞かなくなったような気がする。インデックスファンドやETFの隆盛ということもあるが、情報が瞬時かつ広範にゆきわたる環境が整ってきたせいで市場が効率化してきたためかもしれない。
もし、そうだとすると1970年代にすでにそうした未来を予見していた著者の先見性はやはり常人離れしていた、というべきだろう。

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