松江でたっぷり建築巡りを満喫した私たち、三朝温泉に着く頃には外はもう真っ暗になっていた。(外観写真は翌朝撮ったもの)
今回宿泊したのは登録有形文化財の宿、木屋旅館。
創業は明治元年。建物は明治時代から大正、昭和と建て増し、修復されつつ使われてきたもので、
向かって左が明治に造られた棟、真ん中が大正、右が昭和と、横に長い造りになっていて、
館内は複雑に入り組んだ階段で繋がれている。
来るまで気づかなかったのだけど、宮田珠己の「四次元温泉日記」にも取り上げられていたくらいの迷路旅館だった。
真ん中の大正時代の棟
右の昭和に建て増しされた棟
遅くに到着したのでまずは夕食を頂き、夜の温泉街を散歩、その後お風呂へ入る前に、
木屋旅館のラジウム温泉のスペシャリスト、ラジムリエの方から
こちらの宿にいくつかある温泉の効能や入り方など館内を案内して頂きながら説明を受けた。
三朝の湯は高濃度のラドン含有量を誇る世界屈指の放射能泉。
木屋旅館自慢の温泉は地下2mに湧く自墳源泉による掛け流し、
6本もの源泉を有しているそう。
こちらは自家湧き源泉温泉の楽泉の湯。
150年前の形のまま湯つぼからじわじわと湧きでているという。
温泉もさることながら、このマジョリカタイル貼りも圧巻!
源泉の真上にあるため、床も天然の床暖房になっていて、
お湯もとてもこのままじゃ入れないというくらい、熱い!
入る時にはホースで水を混ぜながら何度も掛け湯して入った。
ラジムリエいわく、病気を治すレベルな湯だとか。
そう言われると、体の中にラドンが溶け込んで細胞が活性化されていくかのような気分に。
一角には飲泉用の枕湯がある。
後で温泉につかりながらひしゃくですくって備え付けのコップで飲んでみるとほんのり塩味で飲みやすい湯だった。
こちらは家族湯の元湯。
大正時代から利用されてる手掘りの源泉の湯。
ここへは翌朝に一人で入りに来て、貸切贅沢気分を味わった。
他にも男湯の河瀬の湯、女湯の河鹿の湯も。
男湯はお客さんが入られてない時に見せていただけ、裸婦を描いたモザイクタイルの壁画も見れた。
更に地熱を利用したオンドルや温泉ミストサウナの穴ぐらの湯など・・
温泉は一晩ではとても試し切れないくらいの充実度。
江戸時代からの古い家具、調度品などがディスプレイされているロビー
休憩コーナーも
休憩コーナーに展示されていたのは、ヨーロッパの飲泉用のカップ。
取っ手の部分がストロー状になっていて、温泉水を吸って飲むようになっている。
客室は使用中のため、見ることはできなかったのだけど、食事時のお部屋として使われているという部屋を
見せて頂けた。
ドイツ製クリスタルガラスが使われた窓が素敵な大正モダンな部屋。
三朝温泉では毎年5月の連休に国の無形文化財に指定されている大綱引きが行われるそう。
藤葛で編まれた綱を東西に分かれて引きあうお祭りで、地元の人たちと観光客も一体となり、綱を作るところから始まるとか。
ちょうどこの旅館の角部屋となってるこのお部屋は本通りで行われる綱引きの絶景スポットになっている。
湯脈に沿って建てられてる木屋旅館はカーブを描いていて出っ張りがあるため、
大綱引きの際には建物が壊れないかと毎度ひやひやさせられるそうだ。
昭和に建築された棟では、小石や切り株が埋め込まれた床に舟底天井の廊下など凝った造りも見られた。
他にもちょうど空いていた宴会ができる二間続きの大広間も見せていただけたりと、
ラジムリエさんには至れり尽くせりの案内に、私たちの矢継ぎ早の質問にも対処して頂け、
私たちは翌朝まで木屋旅館をガッツリ満喫することができたのだった。