義父アツシが死んだので、爺ネタとはご無沙汰の昨今。
そこで時事ネタ…オリンピック騒動のことでも書いてみようと思ったけど
アホらしくて食指が動かない。
人のゼニでやりたい放題をしてきた人々の習性といえば
威風堂々、意気揚々でお出ましの後は
お粗末をはたらいたあげく、責任のなすり合い…
毎度似たり寄ったりの三段階方式。
盗作騒ぎのロゴマークは、好きでしたよ。
漆器を連想させる黒、赤、金、銀の組み合わせが日本らしくて。
東京オリンピックと聞くと、私はつい
51年前に行われた前回のものを思い出す。
これに近所のお姉さんが出た。
選手ではない。
とあるスポーツをやっていた関係で、閉会式にお呼びがかかったのだ。
小さな田舎町の駅前商店街は、大騒ぎ。
当日はお姉さんの家に近所の人が集まり、茶菓がふるまわれた。
4才の私もそこに混ざり、一同、固唾を飲んで白黒テレビを見守る。
火を囲み、白い服を着て踊る大勢の女性の中の一人だというが
どれが誰だかわからない。
それでもみんなで喜んだ、楽しい一夜であった。
一方、私の母チーコもひそかに興奮していた。
友達が選手として出場したからだ。
競技種目は、近所のお姉さんと同じ。
おとなしいチーコは、閉会式への招集で盛り上がっているところへ
「友達が本戦に出ます」とは言えなかった。
家族にもかん口令が敷かれ、家のテレビでこっそり応援した。
入賞はならず、残念がったものだ。
オリンピックに出場したチーコの友達は今も存命だが
チーコも、美しかった近所のお姉さんも、すでに亡い。
東京オリンピックと聞くと、当時の熱い空気を思い出す私である。
次の東京オリンピックに、知り合いは出るだろうか。
フリンピックならうちに一人、まあまあの選手がいるんだけどなあ。
メダルは無理でも、開催国優待ワクにより
出場ぐらいはできるのではなかろうか。
さて2020年の東京オリンピックといえば
昨年の初めに一本の電話がかかった。
義母ヨシコがたまたま留守だったので、私が出た。
「◯杉建設と印刷された緑色の封筒が、そちらに届いていませんか?」
東京からかけているという電話の主は、そうたずねた。
「来ていません」
「本当ですか?」
「本当です」
「その封筒ですが、発送ミスで違うお宅に郵送されたのです。
そのため今、全力を上げて封筒の回収にあたっています。
大変重要な書類が入っているので
届いたら開封せずに、すぐお電話いただけますでしょうか?」
若い男は標準語でそう言い、私はわかりましたと答えた。
「では、こちらの電話番号を言いますからメモしてください。
03の…」
男は電話番号を言った。
「メモしていただけましたでしょうか?」
「はい」
「ではメモを見て復唱してください」
「嫌です」
メモしていない。
よって復唱はできないのであった。
「復唱してみてくださいよ」
「お断りします」
「なんでっ?」
「封筒に◯杉建設って書いてあるんでしょ?
名前が印刷されてたら、普通は電話番号も書いてあるじゃないですか」
「いえ、うちは回収を請け負った別の会社なので
電話番号は違うんですよ」
「いいや、◯杉建設にかけます、かけたい」
「それじゃ困るんですよ」
「◯杉建設は自分の失敗を別の会社に丸投げして
迷惑をかけた人から電話があっても知らん顔するんですか?
そういう会社ですか?」
「そうじゃなくてですね…頼むから復唱してくださいよ」
「嫌です」
「…じゃあ、2~3日経ってから、またお電話しますね?
大切な書類ですから、くれぐれも開封しないでくださいね?」
「わかりました」
封筒は翌日届いた。
開けるなと言われれば、開けるに決まっておろうが。
中味は、東京オリンピックで発生する工事に投資しませんか?
という内容のパンフレットだった。
よくある写真入りのペラペラしたもので、大変重要な書類とは思えない。
一口20万円、何口でもOK。
今参加すると2020年、オリンピックが始まる頃にはザックザク
と言いたいらしい。
大切な書類が誤送されてしまったので、届いたら電話してくれと頼めば
たいていの人はこころよく了解する。
電話番号をメモさせて復唱までさせるのは
相手がユルいかどうかを見極めるためだ。
ユルいお人好しは、通話料無料の電話番号すら用意されてない現実に気づかず
封筒が届いたら電話をかけてやるだろう。
そこで「別の人に送ったものだけど
本当に儲かるから、あなただけに投資の権利をあげる」
とでもささやく予定。
電話番号をメモしろと言われたあたりから、私の興味は「何の詐欺か」だった。
わかったので満足し、封筒を捨てる。
そもそも一万歩ぐらい譲って誤送が事実だとしたところで
こんな凡ミスを犯すようなバカ会社が
人からゼニを集めようなんて厚かましいんじゃ。
集めたゼニも誤送されて、どこかへ行ってしまうに違いない。
問題のサギオからは、その後、何度か電話があったようだ。
何も知らないヨシコが応対しては「封筒はまだ来ない」と言い
その都度、電話番号を復唱させられていたが
肝心の封筒が届かないので、そのままになった。
発送ミスという大前提があるので、サギオとしては
「届かないんだったら、もう一回送ります」とは口が裂けても言えないらしい。
そして現在、東京オリンピックは、ヨシコの大きなテーマとなっている。
オリンピック関連のニュースを見るたびに、彼女はつぶやく。
「2020年まで、生きていられるかしら」
ぜって~生きてるよ…私は心の中でつぶやく。
「いや、弱気じゃいけないわね!楽しみにしなきゃ!」
毎回、そう決意するのもお決まりのコース。
微笑んでうなづきつつ、詐欺よりこっちの方が怖い私である。
そこで時事ネタ…オリンピック騒動のことでも書いてみようと思ったけど
アホらしくて食指が動かない。
人のゼニでやりたい放題をしてきた人々の習性といえば
威風堂々、意気揚々でお出ましの後は
お粗末をはたらいたあげく、責任のなすり合い…
毎度似たり寄ったりの三段階方式。
盗作騒ぎのロゴマークは、好きでしたよ。
漆器を連想させる黒、赤、金、銀の組み合わせが日本らしくて。
東京オリンピックと聞くと、私はつい
51年前に行われた前回のものを思い出す。
これに近所のお姉さんが出た。
選手ではない。
とあるスポーツをやっていた関係で、閉会式にお呼びがかかったのだ。
小さな田舎町の駅前商店街は、大騒ぎ。
当日はお姉さんの家に近所の人が集まり、茶菓がふるまわれた。
4才の私もそこに混ざり、一同、固唾を飲んで白黒テレビを見守る。
火を囲み、白い服を着て踊る大勢の女性の中の一人だというが
どれが誰だかわからない。
それでもみんなで喜んだ、楽しい一夜であった。
一方、私の母チーコもひそかに興奮していた。
友達が選手として出場したからだ。
競技種目は、近所のお姉さんと同じ。
おとなしいチーコは、閉会式への招集で盛り上がっているところへ
「友達が本戦に出ます」とは言えなかった。
家族にもかん口令が敷かれ、家のテレビでこっそり応援した。
入賞はならず、残念がったものだ。
オリンピックに出場したチーコの友達は今も存命だが
チーコも、美しかった近所のお姉さんも、すでに亡い。
東京オリンピックと聞くと、当時の熱い空気を思い出す私である。
次の東京オリンピックに、知り合いは出るだろうか。
フリンピックならうちに一人、まあまあの選手がいるんだけどなあ。
メダルは無理でも、開催国優待ワクにより
出場ぐらいはできるのではなかろうか。
さて2020年の東京オリンピックといえば
昨年の初めに一本の電話がかかった。
義母ヨシコがたまたま留守だったので、私が出た。
「◯杉建設と印刷された緑色の封筒が、そちらに届いていませんか?」
東京からかけているという電話の主は、そうたずねた。
「来ていません」
「本当ですか?」
「本当です」
「その封筒ですが、発送ミスで違うお宅に郵送されたのです。
そのため今、全力を上げて封筒の回収にあたっています。
大変重要な書類が入っているので
届いたら開封せずに、すぐお電話いただけますでしょうか?」
若い男は標準語でそう言い、私はわかりましたと答えた。
「では、こちらの電話番号を言いますからメモしてください。
03の…」
男は電話番号を言った。
「メモしていただけましたでしょうか?」
「はい」
「ではメモを見て復唱してください」
「嫌です」
メモしていない。
よって復唱はできないのであった。
「復唱してみてくださいよ」
「お断りします」
「なんでっ?」
「封筒に◯杉建設って書いてあるんでしょ?
名前が印刷されてたら、普通は電話番号も書いてあるじゃないですか」
「いえ、うちは回収を請け負った別の会社なので
電話番号は違うんですよ」
「いいや、◯杉建設にかけます、かけたい」
「それじゃ困るんですよ」
「◯杉建設は自分の失敗を別の会社に丸投げして
迷惑をかけた人から電話があっても知らん顔するんですか?
そういう会社ですか?」
「そうじゃなくてですね…頼むから復唱してくださいよ」
「嫌です」
「…じゃあ、2~3日経ってから、またお電話しますね?
大切な書類ですから、くれぐれも開封しないでくださいね?」
「わかりました」
封筒は翌日届いた。
開けるなと言われれば、開けるに決まっておろうが。
中味は、東京オリンピックで発生する工事に投資しませんか?
という内容のパンフレットだった。
よくある写真入りのペラペラしたもので、大変重要な書類とは思えない。
一口20万円、何口でもOK。
今参加すると2020年、オリンピックが始まる頃にはザックザク
と言いたいらしい。
大切な書類が誤送されてしまったので、届いたら電話してくれと頼めば
たいていの人はこころよく了解する。
電話番号をメモさせて復唱までさせるのは
相手がユルいかどうかを見極めるためだ。
ユルいお人好しは、通話料無料の電話番号すら用意されてない現実に気づかず
封筒が届いたら電話をかけてやるだろう。
そこで「別の人に送ったものだけど
本当に儲かるから、あなただけに投資の権利をあげる」
とでもささやく予定。
電話番号をメモしろと言われたあたりから、私の興味は「何の詐欺か」だった。
わかったので満足し、封筒を捨てる。
そもそも一万歩ぐらい譲って誤送が事実だとしたところで
こんな凡ミスを犯すようなバカ会社が
人からゼニを集めようなんて厚かましいんじゃ。
集めたゼニも誤送されて、どこかへ行ってしまうに違いない。
問題のサギオからは、その後、何度か電話があったようだ。
何も知らないヨシコが応対しては「封筒はまだ来ない」と言い
その都度、電話番号を復唱させられていたが
肝心の封筒が届かないので、そのままになった。
発送ミスという大前提があるので、サギオとしては
「届かないんだったら、もう一回送ります」とは口が裂けても言えないらしい。
そして現在、東京オリンピックは、ヨシコの大きなテーマとなっている。
オリンピック関連のニュースを見るたびに、彼女はつぶやく。
「2020年まで、生きていられるかしら」
ぜって~生きてるよ…私は心の中でつぶやく。
「いや、弱気じゃいけないわね!楽しみにしなきゃ!」
毎回、そう決意するのもお決まりのコース。
微笑んでうなづきつつ、詐欺よりこっちの方が怖い私である。